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たそがれ清兵衛 [2004年 ベスト20]

たそがれ清兵衛」(2002年・日本) 監督:山田洋次

 まず、「どうしてこの作品がアカデミー賞を逃したか?」。
 多分、最近僕が中国映画を何本か観て思ったこととまったく同じことがアカデミー会員の気持ちの中にあったと思う。それは「ニッポンって国は相変わらず判らない国だな」ってこと。
 僕がたまに思っていたのもそれで、「中国って理解しにくい国だなあ」と思った瞬間から、その作品には入り込めなくなるんだよね。
 
「たそがれ清兵衛」の場合は、日本人の「わびさび」を理解しないとサッパリ感情移入できない映画で、そこに日本人の「美徳」がいくつも隠れているんだけど、そもそも外国人向けに作った映画じゃないから、当然外国人には理解しがたい。日本人の僕たちが西部劇の世界を100%理解できないのと同じことなんです。
 当然、「果し合い」(上司の命令によって他人と剣を合わせる)における「しきたり」も、おそらく理解には及ばないだろう。
 アカデミー外国語映画賞に求められる要素は「普遍的なテーマ」か「ドキュメント性」または「史実的」なものという傾向が強い。「たそがれ清兵衛」はナレーターを配した演出法をとり、完全な「物語」としてしまったところも、賞を逃した一因かと思う。
 ただし、日本人向けの日本映画としては秀逸。
 時代劇を初めて撮ったとは思えない演出に何度か驚き(廃屋での果し合いのとあるシーンは息を呑む素晴らしさだ)真田広之の役作りにも感嘆する。
 また、果し合いに向かう清兵衛が朋江(宮沢りえ)に想いを打ち明けるシーンでは山田洋次監督の演出に驚く。誰もがその表情を見たいと思う芝居を、2人の背中だけで見せるのだ。ここにこそ「わびさび」の全てがある。しかも宮沢りえの背中の芝居が抜群にいい。

 「ラストサムライ」を観たときに、小雪を見るトム・クルーズの目線が許せなかった。
 清兵衛は朋江の顔をまともに見られずにいた。時代劇はやはりその国の監督が撮るべきだ、と思いを新たにしました。
たそがれ清兵衛

たそがれ清兵衛

  • 出版社/メーカー: 松竹
  • 発売日: 2005/04/28
  • メディア: DVD

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コメント 2

aranjues

1年半も前の記事にコメントしてすいません。全く同感ですもので思わずniceです。山田洋次監督恐るべしだと思いました、この作品を見て。
by aranjues (2006-07-30 12:47) 

ken

古い記事にコメントありがとうございます。大歓迎!(笑)。
コレいい映画ですよね~。若かりし頃の山田洋次監督作品もいいですが
最近の作品も素晴らしいと思いました。
nice!ありがとうございます。
by ken (2006-07-30 20:13) 

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