活きる [2004年 ベスト20]
「活きる」(1994年・中国) 監督:チャン・イーモウ
「初恋のきた道」「あの子を探して」の監督が94年に制作し、永らく日本未公開だった作品。
1940年代から60年代にかけて動乱の中国で生き抜いてきたひとつの家族の物語で、テーマは単純。「どんなに辛くても、生きていればきっといいことがある」。
この単純なテーマを劇的にするため登場人物の設定はきちんと練り込まれていて、またフィクションならではの突飛なエピソードではなく必然性を感じる「悲劇のエピソード」のみが実にバランスよく、そしてタイミングよく配置されています。
さらに、この作品で一番すごいと思わせるのは父親役のグォ・ヨウの演技。
波乱万丈の人生を歩んだ者の顔に刻まれる「年輪」を見事に全身で表現をしていて、後半の20分は圧巻。
コン・リーも悪くない。設定年齢が高くなるほどに当初持っていた芯の強さが薄れて行き、ただの年老いた女になっていく。その演じ分け方は見事です。
僕がチャン・イーモウを好きな理由は「必要以上の波風を立てない」作品を撮る人であること。そして家族の団欒といった何気ないシーンを実に温かく撮れるところ。この2点は本当に素晴らしいと思います。
カメラマン出身だけにカット割りも巧い。音楽のあて方も巧い。子供の演技指導も巧い。とにかく、過去に見てきたチャン・イーモウ作品の中で僕はこれがベストワン。文句なし(ホントはちょっとあり)の傑作です。
余談ですが、50年代の娘役を演じたチャン・ルーが驚くほど可愛らしい。この映画が公開されて10年。この子はその後どうしているのか、とても気になりました(笑)。
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