ウィスキー [2006年 レビュー]
「ウィスキー」(2004年・ウルグアイ/アルゼンチン/ドイツ/スペイン)
「コーヒー&シガレッツ」もいいタイトルだと思ったけれど、このタイトルもストレートでいい。
しかしこのウィスキー、蓋を開けてみると僕の想像とはまったく違う風味をしていた。
「ウィスキー」とは日本で言う「はい、チーズ」と同じ。ウルグアイで写真を撮るときの掛け声だったのだ。
ウルグアイで小さな靴下工場を経営する初老の男ハコボは、亡き母のお墓の建立式のためにブラジルで暮らす弟エルマンを故郷に呼び寄せる。その直前ハコボは工場で働く実直な中年女性マルタに「弟が帰ってくる2、3日の間だけ妻の役を演じてくれないか」と依頼。マルタは何を聞くでもなく快諾し、やがて陰気な兄と羽振りのいい弟、そして妻を装う従業員という奇妙な関係の生活が始まる。
「ウィスキー」は2004年東京国際映画祭のグランプリと主演女優賞を獲得し、同年のカンヌ国際映画祭のオリジナル視点賞と国際批評家連盟賞を受賞しています。
だからと言って「面白い!」と太鼓判をおせるわけではありません。この映画を観てまず思ったのは、「映画祭」と呼ばれるイベントにはやっぱり“映画の見方を知っている通な人たち”が集まるんだなってことです。
カンヌと東京で人気を集めた理由に、①映画誕生以来60本しか製作されていないウルグアイで撮られた作品であること、②低予算で作られた反ハリウッド的な作品であること。この2つは評価のベースにあると思います。誰もそう言っていないけど確実にある。
つまり、この「ウィスキー」は「温かい目で観て上げないと高い評価はしにくい」作品だと僕は思うんです。
なぜなら、観ると分かりますが物語としては完全に投げっぱなし、結末は観客の解釈に委ねた構造になっています。
結果、観客の良心がこの作品を「傑作」にも「駄作」にもするわけで、どうしようか悩んでいる審査員のもとへ映画祭のスタッフがやってきて、「イヤ実はね、この娘はウルグアイの出身で金のかからないウブな娘なんですよ」なんて耳元で囁いたら、「よーし、じゃあオマエで決まり!」ってことになるでしょう(笑)。こうして作品のプロフィールが好結果をもたらしたわけです。
映画通を自負するなら見る価値があります。
登場人物3人3様の視点でドラマを楽しめるし、人生の機微も充分に味わえます。
少なくとも僕はこう思いました。
「視野が拡がるとと可能性も大きくなる。ただしそれが幸福とは限らない」
映画のあと。
ウィスキー片手に誰かとこんな話をするのもいいかも知れません。
ゆる~い感じが良かったですね(時々意識が飛びそうになりましたが ^^ゞ)
ハコボとマルタの微妙な関係が面白かったです。
一歩を踏み出すほど強い気持ちはなくて、何も変わらないまま過ぎていく。
でも、変わってなさそうで、実は何かが変わっているのかも知れませんね。
後からじわじわと来る作品でした。
by Naka (2006-02-03 01:26)
「一歩踏み出すほど強い気持ちはなくて、何も変わらないまま過ぎていく」
いい客観描写ですね。本当にそんな感じがしました。
あとからじわじわ来ますよね~これって。 nice!ありがとうございます。
by ken (2006-02-03 14:29)