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アメリカ,家族のいる風景 [2006年 ベスト20]

アメリカ,家族のいる風景」(2005年・ドイツ/アメリカ) 監督:ヴィム・ベンダース 脚本:サム・シェパード

 「パリ、テキサス」のコンビが20年ぶりに組んだと聞けば、もうそれだけで観る価値アリ。
 ところがこの作品、ジム・ジャームッシュの「ブロークン・フラワーズ」と設定がまったく同じなんです。もちろんどちらかがそれを真似たワケじゃなく、ただの偶然なんだろうけど。
 どちらも観ていない方のために説明すると、「人生も半ばを過ぎた独身男がある日『アンタの子供を産んだ女がいる』と聞かされて、その女と子供に逢いに行く」と言うお話です。どっちも(笑)。
 だからって僕は「なんだよ、ネタかぶってんじゃんかよ」とは思いませんでした。だって世の中にはこんな身勝手な男がゴマンといるし、僕自身“もしかしたらそうなっていたかもしれない”中年の独身男だし、そして何よりジャームッシュもヴェンダースも屈指の映像作家だからです。
 というわけで、ここはひとつオトナの目線で楽しみましょう。

 しかし、この邦題だけはいただけませんね。
 原題は「Don't Come Knocking」。これでいいじゃないですか。
 訳すと「やってくるな」ってことになりますが、これを登場人物の誰の言葉に置き換えるかは観た人の自由。映画を観終わったあとでタイトルの意味を考えるのも、映画オタクっぽい楽しみ方で僕は好きです(笑)。
 本編。
 ヴェンダースはこの映画を「人生で愛するものに気づくのが遅すぎた男の悲喜劇」と語っていました。うわあ、40過ぎの独身男にはグサグサ刺さる言葉じゃないですか。だからヴェンダースは「悲喜劇」と言いましたが、僕はほとんど笑えませんでした(笑)。
 そう僕は落ちぶれた西部劇のスター、ハワード・スペンス(サム・シェパード)を「オマエはなんて酷い人生を送ってきたんだ」と卑下したつもりが、実は「天に唾しただけ」だったと言うワケです。特にハワードとドリーン(ジェシカ・ラング)のスポーツジムの前でのやりとりは胸がチリリと痛みました。
 しかし、この映画のいいところはダメな中年男を放り出さずに救っているところ。まあヴェンダース自身が「バツ5(!)」ってこともあるかも知れませんが、人間っていくつになってもやり直しがきくんですね。あ~良かった。

 脚本を書いて自ら演じたサム・シェパードがとにかくカッコイイです。存在感バツグン。
 実はヴェンダース、「パリ、テキサス」の主演もサムに頼んだらしいです。ところが「今の自分には演じる自信がない」と頑なに拒否され、泣く泣くハリー・ディーン・スタントンを起用したのだとか。ハリーには悪いけど今のサムが演じる「パリ、テキサス」もちょっと観てみたいね。


 「アメリカ,家族のいる風景」と「ブロークン・フラワーズ」。
 2人の名匠が同じテーマの映画を撮った。さてその違いとは…?
 こんな楽しみ方が出来ると思えば、ますます「観る価値アリ!」の作品だと思います。
 サム・シェパードの構成力とヴェンダースの演出力に感嘆する124分。

 thanks! 270,000prv

アメリカ、家族のいる風景

アメリカ、家族のいる風景

  • 出版社/メーカー: レントラックジャパン
  • 発売日: 2006/08/25
  • メディア: DVD

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コメント 9

coco030705

こんばんは。
ヴィム・ベンダースの映画はあまり見たことがないんですが、
「ブロークンフラワワーズ」と同じ設定なんですか。ぜひ見たいと思いました。
どんな風に違うのかが楽しみです☆
by coco030705 (2006-09-20 21:17) 

ken

「同じお題でこうも違うもんかぁ~」
僕はそう思いながらこの映画を観てました。
そうなると「ブロークン・フラワーズ」も、もう一度観たくなるんですよね^^
nice!ありがとうございます。
by ken (2006-09-21 01:56) 

ラブ

へぇ〜、同じテーマというのがよいですね。
最初、どっちがお勧め?とお聞きしようとしたのですが、
比べてみるのがよさそうなので、どっちも見るように
します。
by ラブ (2006-09-21 10:56) 

ken

ラブさん、ようこそ。
どうぞ両方ともご覧になってください。
どちらも馬鹿な男の話なので、女性の目にどう映るか分かりませんけど(笑)。
nice!ありがとうございます。
by ken (2006-09-21 16:04) 

ponchan

こんにちは♪
ものすごい数の映画を見てらっしゃいますね。
DVDのコメント、とても参考になります。
次回のレンタルの際には是非参考にさせていただきます~!!
もしかして、TSUTAYA DISUCAS仲間でしょうか?
by ponchan (2006-09-25 10:24) 

ken

そうです!
僕も“見たい映画がぜんぜん届かない”DISCASの会員です(笑)。
ブローバック・マウンテンも予約の筆頭に入れたのに、届く気配がないから
買っちゃいました。どういうことだコリャ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2006-09-25 15:35) 

Sho

「ブロークンフラワーズ」のときに伺おうかと思ったのですが、kenさんは「舞踏会の手帳」はご覧になりましたか? 設定は違うけど、女の人が初めての舞踏会で踊った男の人達を訪ねてゆく―  というので、ちょっとこの二作品の逆パターンみたいに思ったんです。昔から見たい映画なのですが近所のレンタル店には在りませんでした。
ご覧になっていたら、感想伺いたいなあと思いました。
よろしくお願いいたします。
by Sho (2006-10-09 23:08) 

ken

「舞踏会の手帳」はシナリオの勉強をしているときに知りました。
観たような気もしますが、だとしたら今から20年以上前。
改めて見てみたい気がしますね。
by ken (2006-10-09 23:41) 

Sho

ありがとうございました。
私もせっせと探してみようと思います。
by Sho (2006-10-10 23:59) 

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