フォーリング・マン/9.11 その時 彼らは何を見たか? [2006年 レビュー]
「フォーリング・マン/9.11 その時 彼らは何を見たか?」(2006年・英) 監督:ヘンリー・シンガー
アメリカ同時多発テロから5年が経った今年。「ユナイテッド93」、「ワールド・トレード・センター」と2本の9.11をテーマにした作品が公開される中、今月こんなDVDも発売されます。
『2001年9月11日午前8時46分。ニューヨーク・ワールド・トレード・センターへジャンボジェット機が激突したことからはじまったアメリカ同時多発テロ。事件直後、世界中の新聞に掲載されたのは逃げ場を失くしビルから飛び降りる被害者たちの写真だった。しかしその衝撃的な写真は間もなく姿を消してしまう。
なぜ写真はメディアから消えたのか?そのとき現場では何が起こったのか?撮影したカメラマンや編集者、さらには残された家族へのインタビューによって真実を明らかにする衝撃のドキュメンタリー!』(パッケージ解説より引用)
これは「報道の自主規制」にまつわる話です。
前半は、あのビルから飛び降りざるを得なかった人たちの話。
中盤は、“ある1枚の写真”が新聞に掲載されるまでと、されてからの反響に関する話。
後半は、その写真の人物が誰なのかを探る話。
本編72分はこのように構成されています。
まず前半。
ビルに取り残され「脱出不能」と悟った人たちの多くは、家族へ最期のメッセージを発信していました。その様子が遺族の証言によって明らかになります。
航空機衝突の直接的な被害を免れた上下階では、まもなく火災による煙が充満し呼吸困難に陥ります。新鮮な空気を求めて窓ガラスを破壊する人々。しかしそれが仇となり勢いを増して行く炎。
火に巻かれて焼け死ぬか、窓から飛び降りて死ぬか。
生き残る可能性が1%も残されていない“究極の選択”を超えた「悪魔の選択」をする人々。
そして最期のメッセージを受け取る家族。
もしもあの日自分があのビルにいたら…。
もしもあの日自分があのビルにいる愛する人からの電話を受けたなら…。
観ているだけで息苦しくなる生々しさに圧倒されます。
続いて中盤。
途中でふと気づくのは、9.11にまつわる報道でビルから飛び降りる人々の映像を観たことがなかったという事実です。自主規制はここから始まっていました。
そんな中、あるカメラマンの撮った「1枚の写真」が事故からまもなく世界中に配信されます。
それが「フォーリング・マン(落ちる人)」でした。
翌9月12日。朝刊にこの写真を掲載した地方紙「モーニングコール」は異常な反響に見舞われました。もちろん非難一色です。「こんな写真を載せるなんて非常識だ」と。
こうして、衝撃的な1枚の写真は姿を消しました。
さらに目撃者の証言から、ワールド・トレード・センターの北棟では倒壊までに200人以上が飛び降りていることが分かっているにもかかわらず、市の検死局ではこうアナウンスしていたと言います。
「飛び降りた人はいません。彼らは爆風で吹き飛ばされただけです。自分から飛び降りた人など1人もいません」
9.11にタブーが生まれた瞬間でした。
そして後半ではマスコミの真の恐ろしさを垣間見ます。
それが「フォーリング・マン探し」です。
落ちる人を探し当てて一体何をする気なのか。僕にはそこだけが理解できません。これこそ「落ちる人」の私的な部分に踏み込んだ、観る者を不愉快にさせる追求だったと思います。フォーリングマン探しは何だか論点がずれている気がして仕方ありません。
個人的にこの作品は「9.11報道における自主規制の弊害」を突き詰めるべきだったと思います。もちろんPTSD(心的外傷後ストレス障害)にも絡めて。
世の中には“見せていいもの”と“そうでないもの”が存在しているのは事実です。
そのジャッジをするのは基本的には個人の意思だと思います。
この作品も観るのはアナタの自由。
僕にとっては、9.11と自分との距離を測る“物差し”のような作品でもありました。
後半の展開には疑問を持ちつつも、しかしそれまでの構成は見事。
http://blog.so-net.ne.jp/keikolove/
ケイコは引越ししました。
by **feeling** (2006-10-03 11:17)
おー、それはそれは。
引越しそばちょうだい。
by ken (2006-10-03 15:31)
わしがほしい。
ところでところで。
これみたい。
みまつ。
by **feeling** (2006-10-03 22:28)
いろいろとショックですけど、ぜひ見て。
by ken (2006-10-04 01:51)
ちょうど「9.11」系のドキュメント観たいと思ってたんです☆
コレ、観てみます(^-^)☆
by ジジョ (2006-10-10 02:29)
僕はあまり9.11のドキュメントを観て来なかったせいもあって
かなり衝撃を受けた作品でした。
ご覧になったらどんな感想をもったか、ぜひ聞かせてくださいね。
by ken (2006-10-10 11:00)