SSブログ

リトル・ミス・サンシャイン [2006年 ベスト20]

リトル・ミス・サンシャイン」(2006年・アメリカ) 監督:ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス

 東京国際映画祭 コンペティション作品

 10月28日(土)12時20分、渋谷オーチャードホールの幕が上がる。
 それから100分後。
 ブラックアウトしたスクリーンにエンドクレジットの最初の一行が現れた瞬間、会場は万雷の拍手に包まれた。
 感動だった。
 観客のアクションにも、大きく響き渡る音にも、そして映画にも。

 「リトル・ミス・サンシャイン」は9歳の娘をミスコンに出場させるため、アリゾナからカリフォルニアまでワーゲンのオンボロバスで移動する家族の物語。
 この家族のキャラ設定が秀逸なんです。だから面白いんだけど(笑)。と言うわけで、チラシに掲載された文章を引用して登場人物を紹介します。

 【グランパ】 老人ホームを追い出されたわがままなおじいちゃん。
 【リチャード】 “負け組”否定の成功論提唱者のパパ。
 【シェリル】 家族をまとめようと孤軍奮闘しているママ。
 【フランク】 ゲイで自殺未遂のプルースト研究家の伯父。
 【ドウェーン】 ニーチェに心酔している沈黙の兄。
 【オリーブ】 ミスコン優勝を夢見る9歳の妹。

 言っちゃなんですけど、このキャラ設定には文句のつけようがありません。今振り返っても「これ以上の設定はあり得ない!」と断言できる完璧な組み合わせと配役でした。
 また個人的に今回は「ロードムービー」というジャンルの面白さを改めて知ることになりました。
 このジャンルは基本的に旅をするわけですから、「容易に絵変わりさせられる」ことが最大の特徴なんですが、裏を返せば「なんでもあり」ということでもあって、優れたロードムービーに仕上げるためには、いくつ面白い場面を作り出せるか、が重要なポイントになってきます。
 しかし、だからといって突拍子もない事ばかりが次から次に起こっても、今度はリアリティを失うばかり。つまりロードムービーには「観客の予想を裏切りながらもリアリティを損なわないシーン」がいくつも必要になってくるんですね。
 「リトル・ミス・サンシャイン」の脚本(マイケル・アーント)は、まずこのさじ加減が素晴らしかった。
 移動中に遭遇するさまざまなトラブルやアクシデントは絶妙な伏線によってリアリティを保ち、ときに重くなりがちなテーマも、肩肘張らないジョークをさりげなく織り込むことで重量感を払拭することに成功しています。中でも兄ドウェーンと伯父フランクのエピソードは笑いました。
 でも、もうこれ以上詳しいことは書きません(笑)。

 今回僕はこの作品を観て、『映画はまず娯楽であること』、が大事だと改めて思いました。
 僕は眉間にシワを寄せて観る映画よりも、笑いジワが出来るかも知れない映画が好きです。
 そして自宅で静かに映画を観るよりも、沢山の人と一緒に劇場で映画を観ることが好きです。
 「リトル・ミス・サンシャイン」は本当に面白い映画でした。
 僕がこうやって自信を持って言えるのは、大勢のお客さんとこの映画を共有できたからです。
 劇場で映画を観るときは決して恥ずかしがらずに大きな声で笑いましょう。
 その笑い声が、1本の「おもしろい映画」を「すごくおもしろかった映画」に印象を変え、アナタの記憶に残り続けるのです。
 この作品も出来ることならぜひ劇場で観ていただきたいと思います。

 さて翌日。
 本作品は見事、最優秀監督賞を受賞しました。

 おめでとうございます。

 今回、我々と一緒にオーチャードホールで自作を観て、「日本人は笑うポイントが違うな」と思っていたそうですが、エンドでの拍手に感激したとか。僕は劇場公開時にもう一度観に行って、DVDになったら即買って、またまた観ようと思います。
 それにしても「サンキュー・スモーキング」に続いて2日連続でこんなに素晴らしい映画を観られるなんて、人生で初めての経験だったので実は土曜の夜はモーレツに感動しておりました(笑)。
 こんなことが頻繁にあればいいのにな。

リトル・ミス・サンシャイン

リトル・ミス・サンシャイン

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD

nice!(12)  コメント(31)  トラックバック(11) 
共通テーマ:映画

nice! 12

コメント 31

Sho

kenさんの
>、『映画はまず娯楽であること』、が大事
という文章から、私は自分が幼い頃、母と一緒に映画館に「白雪姫」や「バンビ」など昔のディズニー映画を見に行ったときのことを思い出しました。
それは確かにとっても素敵な娯楽で、豊かな時間だったのだなあと思いました。そういう想い出がある自分は幸せだなあ、と思いました。
by Sho (2006-10-31 22:35) 

ken

僕の映画に関する記憶は、妹と2人で「東映まんが祭り」を観に行った記憶が
一番古い記憶ですが、この記憶も楽しかった大切な思い出ですね。
by ken (2006-10-31 22:57) 

魚河岸おじさん

見たい・・・・・
素晴らしい環境の中で見れたkenさん
羨ましいです
by 魚河岸おじさん (2006-11-01 19:38) 

ken

この映画はオススメです。
映画祭期間中に見ることが出来たのは本当にラッキーでした。
by ken (2006-11-01 20:16) 

coco030705

この記事を読んで、モーレツに見たいと思いました。
最後に観客から大きな拍手がもらえる映画って、そうそうないと思います。
ぜひ劇場で見たいと思います。いい記事をありがとうございました。
by coco030705 (2006-11-03 19:43) 

non_0101

こんばんは。
>劇場で映画を観るときは決して恥ずかしがらずに大きな声で笑いましょう。
そうですね!例えばアニメとかも吹替版で大勢の子供たちがいる劇場で観ると
楽しさが倍増しますし。
私がこれまでで一番楽しく映画を観たと思ったのは
平日、お年寄りがいっぱいの劇場で観た『大誘拐』です。
この『リトル・ミス・サンシャイン』も笑って楽しんで欲しいなと思います。
by non_0101 (2006-11-03 21:52) 

ken

>coco030705さん
 思えばスター・ウォーズEP3のプレミアのときより
 拍手は大きかった気がします。
 素朴な映画ですが、きっと楽しめると思いますよ。
 nice!ありがとうございます。

>nonさん
 僕は今年一番に観た「THE 有頂天ホテル」も劇場で沢山の人と一緒に
 大笑いしました。こういうのっていいですよね。
 nice!ありがとうございます。
by ken (2006-11-03 23:28) 

ジジョ

ホントにイイキャラ揃ってましたよね。この映画。
わたしはおじいちゃんが大好きですw
TBさせていただきましたので、よろしくお願いします(^-^)
by ジジョ (2006-11-28 05:34) 

ken

僕は断然お兄ちゃんが好きです(笑)。
一般公開時にもう一度観に行こうと思っています。
nice!ありがとうございます。
by ken (2006-11-29 13:14) 

江戸うっどスキー

やっと観てきました。本当に楽しめました。
私は、あのバスに乗ってしまった気分です。
一つ置いた席のお客さんは号泣、背後からは笑い声、
同じ映画なのに皆捕らえ方や、感情の盛り上がりとか微妙に
違うのを体感できるのは映画館ならではですね。
by 江戸うっどスキー (2006-12-28 02:33) 

ken

一般公開時に観に行けなかったのがちょっと残念…。
でもDVDになったら買うつもりです。
もう1度あの黄色いバスに乗らないと(笑)
nice!ありがとうございます。
by ken (2006-12-29 13:06) 

蓮花

すみません、今頃。
やっと観られたのです~!すんごくよい作品でしたね!
kenさんのおっしゃるリアリティのさじ加減が本当に素晴らしかった。
ありえそうなことばかり続けては、面白みがなくなるところを
絶妙なバランスで繋げていくのって、ほんとはすごいことなんですね~。

>『映画はまず娯楽であること』
めっちゃ同感です!
作り物の増殖具合で娯楽になるか、外れるか、だと思います。

>劇場で映画を観るときは決して恥ずかしがらずに大きな声で笑いましょう。
ああ、kenさんにこう言ってもらえて嬉しい。
実は私、人が多かろうが少なかろうが、周囲と笑いのポイントがずれていようが、
抑えることができないんですよ。
これからは無理せず笑います。
私もTBさせてくださいね。
by 蓮花 (2007-01-13 17:35) 

ken

劇場で映画を観る醍醐味のひとつは、「リアクションを愉しむこと」だと
思います。そのためにはリアクションをリードする人も必要なんですよね。
誰かが声を出して笑ってくれると、ほかの人も笑い易い、みたいなことが
やっぱりあると思うんです。だから蓮花さんみたいな人は大事です!^^
by ken (2007-01-14 01:57) 

クリス

おはようございます☆
映画祭でご覧になってたんですね。私も東京にいた頃、『ロック、ストック~』を映画祭で満員のお客さんと一緒に観た時に、やっぱり終わった後の拍手喝采(もちろん劇中は皆がゲラゲラ笑い)が起こったのを今もよく覚えてます。鳥肌立ちましたもんね。そういう雰囲気の中で観た作品は、特別な思いがありますね。
by クリス (2007-01-16 08:40) 

ken

「ロック、ストック…」を映画祭で観たんですか!
それもすごいですね~。劇場のざわつき方が想像できます。
うらやましい体験ですね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-01-16 22:43) 

デクノボー

kenさんの記事を拝見し、ぜひ観たい!と思いながら、ようやっと観てきました。
私はおじいちゃんが好きです。お兄ちゃんドウェーンに対するお説教も好きだったし、オリーヴのダンスではおじいちゃんの策略にまんまとはめられた感が。
それにしても、家族みんながほとんど躊躇なく、おじいちゃんをあんな風に扱うなんて、やっぱりちょっと変わった家族です。
by デクノボー (2007-02-03 00:06) 

ken

ドラッグは別として、僕もあんなおじいちゃんになろうかな?と思いました。
ところでこの作品、アカデミー賞獲るんでしょうか?
ちょっとドキドキしてきました(笑)。
by ken (2007-02-03 10:16) 

coco030705

こんばんは。
やっと見ました。kenさんのレビュー通りの、とっても楽しい映画でした。
大好きな作品です。
TBさせていただきます。
by coco030705 (2007-02-06 00:27) 

ken

ホント、「やっと」でしたね^^
気に入ってもらえて良かったです。
by ken (2007-02-06 02:17) 

まみりん

こんにちは。
やっと記事書きました~。
ほんと、最初から最後まであんなに楽しく観れるなんて!!!すごいです。
私もDVDが出たら、すかさずゲットします!!
もっと大きな劇場で上映してもいいのに~って思ったのですが(こちらではミニシアター上映)、アットホームな雰囲気で観れたので、まぁいいです。
TBさせてもらっちゃいます。
by まみりん (2007-02-06 16:17) 

ken

これってなんでしょうねえ。始まってまもなくこの映画に期待した感じが
最後まで裏切られること無くエンディングまで突き進むって感じでしょうか。
そういう意味でも素晴らしい映画だったと思います。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-02-07 02:45) 

sicca

こんにちは!
本当に、この作品は素晴らしかった♪
温かくって可笑しくって、ちょっと切なくって。
キャラクターが丁寧に描かれてて、みんなの負けっぷりに私もどこか共感しながら見ちゃいました。
TBさせていただきま~す。
by sicca (2007-02-07 12:55) 

ken

アカデミー賞の発表を前にして、このページも盛り上がってきました!
もししたら、もしかするかも知れませんね!
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-02-07 14:21) 

こんばんは〜
最初はあまり期待してなかったんですが
いい意味で期待を裏切られ、すごく楽しめました
期待と不安様々な家族の問題がうまく混ぜ合わされたいい映画でした
ぜひ、アカデミー賞の台風の目になって欲しいですね
by (2007-02-12 20:00) 

ken

キャスティングも良かったんですよね、この作品は。
アカデミー賞の台風の目になることを期待しています!
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-02-12 22:50) 

バラサ☆バラサ

拍手いいですねぇ。
私も三茶のボロイ映画館で、一人スタンディング・オベーションしそうになりましたが、やるとイタイ人になってしまうので、我慢しました。

上映終了後で、自然と拍手が起きたのは、「スクール・オブ・ロック」で経験しただけです。
この映画は、クライマックスのシーンでも、「おー!!」という歓声とともに拍手が鳴り響きました。あの、ダイブのシーンです。
by バラサ☆バラサ (2007-06-17 15:02) 

ken

ジャック・ブラックのダイブシーンは僕も自宅で「うおー!」と言いました(笑)。
三茶の映画館は、実は怖くて一度も入ったことがありません…。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-06-17 22:37) 

naonao

東京国際映画祭でこの映画を観れたなんて羨ましいですね!
私もこの会場で観たかった。DVDでも素晴らしかったので会場で大きなスクリーンで観れたならもっと素晴らしかったでしょうね。本当「家族のキャラ設定が秀逸」でした。これ以上ないくらいに。
by naonao (2007-07-16 20:22) 

ken

映画の評価は観客と共に作るものだと痛感した作品でした。
独りで見たらどうだったかな?と未だに思います。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-07-17 02:35) 

こんな素敵な(私好みの♪♪)ブログを作っていらっしゃるんですねー。
時間あるときに、じっくり遊びにこようとおもいます。
私の所にも来てくださって、ありがとう。
この映画、トニ・コレットが好きだったので借りてみたのです。
DVDを買おうかなーと思ってます!!
by (2007-12-08 21:07) 

ken

ときどき思い出して観てみたくなる映画ですね。コレは。
またゆっくり遊びに来てください。
映画の記事数だけが自慢です(笑)。nice!ありがとうございます。
by ken (2007-12-08 22:43) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 11

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。