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国境の南(原題) [2006年 レビュー]

「国境の南(原題)」(2006年・韓国) 監督:アン・パンソク

 今年から始まった東京国際シネシティフェスティバルへ行く。

 本当はクロージングの「ディパーテッド」(「インファナル・アフェア」のハリウッドリメイク版)が観たかったのだけど、このイベントに気がついてチケットを探したときには時すでに遅し。でもせっかくだから何か1本、と探したのがこの作品でした。

 作品のタイトルが不思議なことになっちゃってる理由は、「国境の南」という邦題は使えないらしく、一般公開時には別の邦題が付く予定で、でも今回は間に合わなかった、と言うことらしいです。いろいろあるのね映画界も。

 この作品は、結婚を約束した恋人がいながら止む無く脱北した男と、北朝鮮に残された女の物語です。
 物語の序盤は平壌に暮らす若いカップルの恋愛模様が描かれていて、普段うかがい知ることの出来ない国の様子だけに(その描写が事実に基づいているのかどうかも含めて)、実に興味深く観ることが出来ます。しかも北に残される女性ソナを演じたチョン・イジンが抜群に可愛く、男なら感情移入は容易でしょう(笑)。仮にチョン・イジンがタイプじゃなくても、袋小路に追い詰められるような身動きの取れない恋愛をしたことのある男性なら、この映画はかなり刺さります。涙なくして見られません。
 がっ!「この映画はヒットするか?」と聞かれたら、僕は「大してヒットしないだろう」と断言します。というのも僕はこの映画を観て「恋愛映画ヒットの法則」を見つけたのですが、この映画には「ヒットのために欠けてはならない決定的な要素」が欠落しているんです。
 …以上、この先は内容に触れてしまうので未見の方は(一応)立ち入り禁止区域とします。
 でも面白いことを書いときますから、よきときに見に来てください(笑)。

 僕が思う、恋愛映画をヒットさせるための絶対条件はただ一つ。それは何かと言うと、
 『映画を観た女性が、観ていない友人に話したくなるポイントをいくつ作れるか』
 これに尽きると思います。
 特に恋愛映画はアクション、アドベンチャー、ホラー、ミステリーなど他のジャンルに比べて映像のインパクトが弱く、また結局のところ「ラストはどうなのか?ハッピーエンドか否か?」が最大の期待ポイントであるため、よほどストーリー設定かキャスティングに興味を持たれない限り、ある特定の世代のさらに一部分の人しか受け入れられない、という宿命を背負っています。
 恋愛映画はこの「宿命」を断ち切り、年に数回しか映画を観ない“無党派層(観る映画のジャンルに何のこだわりもない人たち)”を獲得しなければ、興行的なヒットは見込めません。
 その「宿命」を断ち切るために必要なのが「クチコミ」という名の武器です。

 例えば「猟奇的な彼女」。これは典型的な“人に話したくなる映画”でした。
 可愛いけど性格がハチャメチャな女の子。
 イケメンじゃないけど優しいカレ。
 どんでん返しのハッピーエンド。
 笑って泣けるストーリー。
 この「猟奇的な彼女」には「ゼッタイ観て損しないから!」と女の子が言えるだけの要素がいくつも詰まっていたのです。
 しかし「国境の南」の場合は2箇所で失点をしています。
 ひとつはアンハッピーエンディングであるということ。
 もうひとつは女性客が、ルックスも含めて主人公の男に共感できないだろうということ。
 この2点に関してはポジティブなクチコミを期待することが出来ません。
 もちろんアンハッピーエンディングでもいい映画は沢山あります。ただしそんなときのクチコミフレーズは「泣ける」でしかありません。なぜ泣けるかと言うと「冬のソナタ」がいい例で、女性はペ・ヨンジュンに感情移入すればこそ「泣ける」のであって、残念ながら「国境の南」は主人公のルックスが女性客のハートを掴まない以上、「ヒットは見込み難い映画」ということになるのです。
 
 とは言うものの、我々男からすると主人公を演じたチャ・スンウォンはいいキャスティングだったと思います。とにかく芝居が巧かった。それに繰り返しますがチョン・イジンが可愛かった!ヨン様にはまる女性をとやかく言えなくなるくらい、「彼女を幸せにしてやってくれっ!」と思いながら観てました(笑)。

 

 ヒットするしないは別にして、まずまず面白い映画だったと思います。
 南北分断をテーマにした韓国映画は沢山ありますが、ちょっと新しいアプローチだったかなと。

 ただクオリティと言う点ではちょっとユルイです。「収容先のテレビで意外な事実を知る」なんて設定はフィクションにもほどがある!って感じでした。


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コメント 4

すの

はじめまして。
TBさせていただきました。

私は主演のチャ・スンウォンも含めて
この映画好きなんですけど・・・
ユルイ設定という部分は非常に共感します。

韓国ではヒットしませんでした。
でも男の人には割と評価高い場合がチラホラ見られました。
by すの (2006-12-01 14:24) 

ken

すのさん、ようこそ。
韓国でもヒットしなかったんですね。ちょっと残念です(笑)。
まあゆるゆるの恋愛しかしていない人間には“刺さらない”映画ですからねえ。
by ken (2006-12-01 14:28) 

すの

ちょうどまだうろうろしてたんで・・
連続投稿すいません。

韓国ではヒットしないどころか、打ち切りでした^^;
結構予算をかけた映画だったのに・・・
by すの (2006-12-01 14:41) 

ken

あちゃ~悲惨だなぁぁぁ(稲川淳二風)
by ken (2006-12-01 16:05) 

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