バベル [2006年 レビュー]
「バベル」(2006年・アメリカ) 監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
いま密かに“菊地凛子”という名の女優が映画関係者の間で注目を集めている。
きっかけとなったのは、日本では来年のゴールデンウィークに公開されるこの作品。
中で聾唖の女子高生を演じた菊地凛子は、「アカデミー助演女優賞のノミネートは確実だろう」と世界中の映画祭で絶賛されている。
日本ではまったく無名だった25歳。
富士通FMVのTV-CFでウサギ男になってしまうキムタクにツッコミを入れる女、と説明すれば何人かは「ああ」と思い出すだろうか。
そんな彼女のインタビューを撮るため、僕は映画会社から回してもらったVHSで一足早く作品を観させてもらった。
この作品は、“なぜ「バベル」というタイトルなのか?”を知ってから観るのがいい。
プレス資料には旧約聖書の一文が引用掲載されていた。
遠い昔、言葉は一つだった。
神に近づこうと人間たちは天まで届く塔を建てようとした。
神は怒り、言われた。
“言葉を乱し、世界をバラバラにしよう”
やがてその街は、バベルと呼ばれた。 (旧約聖書 創世記11章)
これさえ頭に叩き込んで観れば、あとは観た人の数だけ解釈があると思う。
物語はアメリカ、モロッコ、日本の3カ所で何の脈絡もなく始まる。ところがモロッコで発射された一発の銃弾が運命の糸となり、まったく関連の無かった人々を結びつけて行く…。
関連性が見えた瞬間からこのドラマは俄然面白くなる。しかし「21グラム」の監督が紡いだ物語は、単純な感動を呼ぶような作品ではない。「観た人の数だけ解釈がある」と書いたのはそう言う意味で、この作品をきっかけにして考える(あるいは考えるべき)ことは数多くある。
まずは「異言語」の意味。言葉はなぜ異なるのか。旧約聖書の記述は実に興味深い。そんな中、登場人物の1人が聾唖者である事実。監督の思惑を探るのもまた楽しい。
僕の解釈は「人生は綱渡り。ふとしたことでいつ堕ちるか分からない。しかも堕ちた方角によっては、それまでの人生を台無しにしかねない」と言うこと。
それともう一つ。
「人間は誰しも生きている限り罪を犯し続ける。罪を犯さず生きられる人間などいないのだ」
単純な意味でなく、この映画はおもしろい。
テーマは重く、複雑だけれど、何ならこんなデート映画も僕はいいと思う。
この映画を観たあとで、いろんな話の出来る相手となら、その先を考えてもいいんじゃないか?
菊地凛子のこと。
映画でも、直接逢ってみても、彼女の「目力」には圧倒された。
意外にも素朴な人柄だったからこそ、そのパワーは突出していた。
もしかしたらもしかするかもしれない。来年のアカデミー賞が楽しみだ。
こんにちは。
さすが、素晴らしい紹介文ですね。
聖書の引用文と、映画の概略を読んで、ゾクゾクきました。
来年のGWですか~。待ちきれないくらい楽しみです(^^
by Naka (2006-12-02 12:10)
久しぶりに出逢った「するめ映画」です。
観る度にいろんな味わいが出て、いろんなことを考えさせられると思います。
意外かも知れませんが、ブラピがかなりイイです!
nice!ありがとうございます。
by ken (2006-12-02 12:59)
この映画を見るのがますます楽しみになりました。私の母はブラピの大大ファンなので「いいらしいよ!」と伝えておきます(笑)
日本映画、素敵でチャーミングな女優さんが一杯出てきてくれて日本映画を盛り上げてると私は思ってます。
逆にそこまでパワーを持った若手の男優がいない気が(私は)して寂しいです。そんな実力ある男優が出てきたら日本映画はもっともっと盛り上がるんだと思うんですけどね。
by ななひつじ (2006-12-03 18:59)
この作品は役所広司さんが出演しています。
ハリウッドで多少なりとも実績のある人(SAYURI)ですからいいんですけど
他にいないの?って思ったりもしますね。
by ken (2006-12-04 01:35)
バベルの塔のエピソードは「天地創造」でも出てきましたね。
結局、神の怒りに触れ雷で破壊されてしまうんですが。
by 芸夢人 (2006-12-05 16:11)
聖書を引用した映画って、どれもこれもなんだか深いです。
by ken (2006-12-05 17:05)
とっても気になる作品がまた出てきました
早く見たいです
by 魚河岸おじさん (2006-12-10 08:56)
私のブログで、菊地凛子さんについて書き、その中で、こちらの記事をご紹介させていただきました。
――ということをお伝えしたくて、いろいろ試みているのですが、なかなかうまくいきません。少なくとも、上の空欄にアドレスを入れると通らないらしいことはわかりました。TBも通らないし、コメント欄にアドレスを入れるのもダメなのでしょうか。
アドレスがどこにも入れられないようなので、ブログ名で検索してもらうしかないんですが、よかったら、「海から始まる!?」で検索してみてください。
このコメント自体は通るでしょうか。
by umikarahajimaru (2006-12-11 04:00)
あっ、通りました!
やっぱり本文中にアドレスを入れるのもダメなんですね。
by umikarahajimaru (2006-12-11 04:02)
>魚河岸おじさん
いいですよ。いいです。味があります。
>umikarahajimaruさん
いろいろトライしていただいてスイマセン。
以前アドレス付きのヘンなコメントが沢山ついたので、アドレス入りの
コメントは書き込みできない設定にしてあります。
by ken (2006-12-11 12:28)
ノミネートされましたね
コレをきっかけに公開が早まることなんてないんでしょうか
とにかく早くみたいです
by 魚河岸おじさん (2007-01-24 09:55)
22日の月曜日に行われた試写会には予想を上回る人がやってきて
300人もの人に帰ってもらったそうです。
先日、この作品を観た石井克人監督(「鮫肌男と桃尻娘」「茶の味」)と
お話をしたのですが、「かなり完成度が高い作品」と感心してました。
僕も早くもう一度観たいです。
by ken (2007-01-24 14:11)
TB、ありがとうございます\(●^▽^●)/
今、知りました~。
プレス資料に「バベル」の事が書いてあるのも、今、知りました~。
分からない事は辞書で調べておくと、また、感慨深いものに
なったりするんですネ。
やっぱり、「バベル」の意味が分かってから見た方が良いですネ(・∀・)ノ。
絶対に見たくなりました。
by ミック (2007-01-25 07:16)
僕は何の情報も持たずに観るのが好きなんですけど、
ほんのちょっとした情報を入れてから観ると、俄然面白くなる映画も
あるんですよね。バベルはその典型だと思います。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-01-25 12:00)
こんばんは。
本当に考えさせられる映画でした。未だに心の片隅で考えています。
でも、ちょっと重かったので、次に観るのはDVDにしてしまいそうです。
菊地凛子さんの存在感は凄かったですね。
やっぱり高校生には見えませんけど、そんなことどうでもいいと思わせるような
迫力がありました!
by non_0101 (2007-04-22 23:27)
この映画こそ「ゆる会」で観るのが相応しいかと思いました。
本当に観た人の数だけ解釈がありますから、映画のあとで議論するには
持って来いの題材ですよね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-04-23 09:21)
おはようございます。○○りは朝が早い^^;
今日、観てきました。観ている時と、観終わった後でも感想が違います。
寝て起きたあとも、感想が変わったりするのかな?と。消化に時間が掛かりそうです。それにしても「するめ映画」って(笑)
by 江戸うっどスキー (2007-04-29 08:17)
早いっすね~(笑)。
これは僕ももう一度観ないとダメかも。
昨年の11月に観ちゃってますからね。するめ映画だから楽しいけど。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-04-29 11:20)
やっと見てきました
飲りながら、語りたいです
ヤラレました
by 魚河岸おじさん (2007-04-30 17:13)
飲りながら語る前に、僕ももう一度観に行こうかな(笑)。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-04-30 17:24)
バベル見てきました。
なんだか、私はダメでした。
色々な事件は起こるのだけれども、
それは全て、予測出来るものでした。
3つの事件が繋がるのも必然的に繋がっていない感じがしました。
つじつまを合わせた様な感じです。
テーマが全て、中途半端な気がしました。
>映画でも、直接逢ってみても、彼女の「目力」には圧倒された。
ホントに、菊池凛子の「目力」には迫力がありました。
演技力もすごいと思いました。
by ミック (2007-05-17 22:14)
好き嫌いのハッキリする映画だと思います。
ミックさんのような方も世の中には沢山いるでしょうね。
by ken (2007-05-17 23:16)
一昨日やっと観ました。すごく好きなタイプの映画です。
kenさんのおっしゃる「人生は綱渡り」は私が日ごろ念頭においていることでもあるので、共感しながら映画を観てました。おかげで怖かったです。
TBさせてください。
by satoco (2008-03-10 13:12)
奥深い映画ですよね。
何年かに一度、観てもいいと思わせるほど深いです。
「映画を読む」面白さも教えてくれる1本です。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-03-10 14:32)