グアンタナモ、僕達が見た真実 [2006年 レビュー]
「グアンタナモ、僕達が見た真実」(2006年・イギリス) 監督:マイケル・ウィンターボトム他
この作品を観るとアメリカ軍に対して虫唾が走るのは必至。
僕はそもそも“世界警察”気取りの米軍に対して反感を持っていたのですが、今回は反感を通り越し「アメリカって可哀想な国なんだ」と同情するまでになりました。
そして、9.11以降のアメリカのうろたえぶりこそが“諸悪の根源”だと確信するのです。
これは、パキスタン系イギリス人の若者3人が米軍からテロリストの疑いをかけられ、無実の罪で2年以上もキューバのグアンタナモ基地に拘束されたエピソードを、本人達のインタビューを交えながら再現したノンフィクションドラマです。
オープニングの3分間は1人称のナレーションでテンポの良い編集がされていて、観る者をグイグイと引き込みます。が、オープニングから3分間流れたBGMがフェードアウトした瞬間から、若干失速します。これはすべての状況説明が終わっていないにも拘らず、ニュース映像の音声が1人称のナレーションを一端遮ってしまうからなのですが、この編集はちょっと勿体無いなと思いました。序盤いきなり中だるみがあるので、人によっては「何だかつまんないかも」と思うかも知れませんが、しばらくガマンすると再び勢いを取り戻し、やがて目が離せなくなると思います。ツッコミが細かくてスイマセン(笑)。
先にも書いた通り、この作品を観ると米軍に対して猛烈な怒りを覚えます。
「同じ人間に対してどうしてそこまで酷いことが出来るのか」
グアンタナモの様子を観ながら僕はしばらくこう思っていました。
ところが時間が経つに従い、「もし自分が米軍の兵士だったらどうするのか?」と思うようになります。タリバン兵士だと言われて基地に送り込まれて来た異人種の男たち。基地の兵士たちは「ワールドトレードセンターに航空機を激突させたテロリストの仲間」との烙印を1度は押すのでしょう。しかしどんな拷問にあっても自らタリバンであることを認めず、いたずらに無益な時間だけが過ぎて行く中で、「はたしてこの若者は本当にテロリストなのか?」と疑問を持つ兵士もいるはずなのです。だからこそウィンターボトム監督は、“監獄内にタランチュラを発見した米兵士のエピソード”を折り込み、決して非人道的な兵士ばかりではないことをアピールしたのだと思います。
つまり、この類の事件で本来裁かれるべき人間は、その国のトップあるいはそれに準ずる者だと言うこと。
ジョージ・W・ブッシュ、そして、ドナルド・H・ラムズフェルド。
グアンタナモ事件の犯人は間違いなくこの2人です。彼らが裁かれることなど決して無いのだけど。
それにしても、2年以上拘束され、あらゆる拷問を受けたにも拘らず、米軍の脅しに屈しなかった3人はスゴイです。「あの精神力は見習わないとな」と妙に感心してしまいました。
2007年1月27日より全国順次ロードショー
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