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弓 [2007年 レビュー]

」(2005年・韓国) 監督・製作・脚本・編集:キム・キドク

 うすうす感づいてはいたんですが、僕はキム・キドクの世界から逃れられなくなりました(笑)。
 この「弓」も面白すぎです。

 沖に浮かぶ船上で2人きりの生活をしている老人と少女。
 釣り客を船に招くことで収入を得ていて、世間との繋がりは陸から釣り客を運ぶ小さな漁船だけ。
 生活をしている船はエンジンが壊れていて使い物にならない。
 老人と少女は少女の16歳の誕生日に結婚をすることにしていた。

 どんな設定やねん!と思いますよね(笑)。でも、キム・キドク作品が面白いのはまずこれらの設定なのです。
 僕が今年観た「絶対の愛」も「うつせみ」もそう。現実にはあり得ないだろうと思うような設定なのに、観ているうちにあれよあれよと映画の中に引きずり込まれて行きます。
 その理由は何か?
 一番は主人公たちが寡黙だからでしょう。
 「弓」でも、老人と少女は全く言葉を発しません。
 「そこはフツーなんか喋るだろう!」ってシーンでも言葉を発しないので、観客たちは各々が考えたセリフを頭の中で呟くことになります。だから違和感が生まれない。当然です。観客はそれぞれ自分が聞きたいセリフをイメージしているんですから。
 「映画は観客に届いて完成する芸術」
 とは先人の言葉ですが、キム・キドクの映画はまさにそれ。
 例えるなら「きいちのぬりえ」と同じです。
 アウトラインこそあれど絵としては未完成。そこに色が加えられることで「ぬりえ」として完成すると言う仕組み。きいちのぬりえもキム・キドクの映画も、客によって完成形が異なる“理想の芸術”なんじゃないかと思います。

 わずか90分の作品ながら、まったく想像のつかない展開が緊張感溢れる濃厚な時間を紡ぎだし、あまりにも意外なエンディングが観客の脳裏に「弓」という焼印を押す。
 弓を弾くシーンだけは「偽りあり」で頂けないのですが、忘れられない映画になることは必至。
 ハン・ヨルムの妖しい存在感も一見の価値アリ。
 彼女は菩薩でした。

弓

  • 出版社/メーカー: ハピネット
  • メディア: DVD

nice!(4)  コメント(8)  トラックバック(1) 
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コメント 8

とうとうドクされましたか(笑)。
まことに勝手ですが、トラックバックさせていただきました。
by (2007-12-09 23:50) 

ken

確かにドクされました(笑)。
彼を天才と呼ばずに誰を呼ぶ、って感じです。
キム・キドク部、発足させないとなあ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-12-09 23:55) 

Sho

非常におもしろかったです。
見る人の数だけ、いろんな解釈ができますね。
幼女から成熟した女になるまでの凝縮版みたいな気がしました。
そこに、実父と惚れた男との板ばさみもあったり。

この人の映画、好きです。
by Sho (2007-12-13 00:48) 

ken

聖書みたいな映画つくる人なんですよねえ。
キム・キドク部、入ってください!(笑)。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-12-13 02:08) 

てくてく

耳打ちする時、確かにセリフを想像してました!
しゃべらずともこれだけ引き込む力がある、すごい物を作る人ですね。
by てくてく (2008-02-11 23:52) 

ken

そうなんです。
僕も未見の作品を早く観たいんですが、なかなかDVDと出会えません!w
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-02-12 00:46) 

shioko

TBありがとうございました。
すっかり、キドクにハマってしまいました。
「悪い男」は観ましたか?
私は中でも一番好きな作品です。
勝手ながら~RSS登録させてもらいました。
また、おジャマします。

by shioko (2008-12-01 17:12) 

ken

「悪い男」、実はまだ観ていません。
ぜひ観たいと思ってます!
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-12-01 19:16) 

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