ギルバート・グレイプ [2007年 レビュー]
「ギルバート・グレイプ」(1993年・米) 監督:ラッセ・ハルストレム 原作・脚本:ピーター・ヘッジス
「ハルストレムを語る上では欠かせない」といろんな人から言われた、スウェーデン出身監督のハリウッド進出2作目をようやく観ることが出来ました。
ちなみに脚本のピーター・ヘッジスは「聞き覚えのある名前だな」と思ったら、この9年後に「エイプリルの七面鳥」で監督デビューする人でした。
ギルバート・グレイプは主人公の名前。
タイトルロールを演じるのは当時30歳だったジョニー・デップ。
その弟で18歳になる知的障害児を演じているは、本作でアカデミー助演男優賞にノミネートされたレオナルド・ディカプリオです。
本作の評判を聞くとき必ず言われるのがディカプリオの演技。確かに素晴らしいです。ときどき健常者の顔がちらりと出てきてしまうのが惜しいのですが、少なくとも「I am Sam」のショーン・ペンよりいい。
ジョニー・デップはのちのキャリアを考えるととても地味な役柄を演じています。そんな彼を観ながら感じたのは「この映画に対する評価はなぜ高いのか?」という点でした。
というのも、個人的には手放しで褒められるほど優れた作品だとは思えなかったからです。
例えば1年後、「これってどんな映画なの?」と誰かに聞かれても、僕はうまく説明する自信がありません。それくらい引っかかりの無いストーリーなのです。
そこが「ハルストレムらしさ」と言えなくもないのですが、他の作品に比べてこれだけが決定的に掴みどころの無い、にゅるっとした作品に仕上がっているのです。僕はこの反省がのちのちの作品に生かされているように思います。
「事件は最後に起きたんじゃダメなんだ」
そう気付いたかどうかは分かりませんが、これ以降の「サイダーハウス・ルール」、「ショコラ」、「シッピング・ニュース」ではその教訓が生かされていると思います。
では、この作品が概ね高評価を得る理由はどこにあるのか?
それはこの映画には悪人が出て来ないだけでなく、登場人物全員が見事なまでに「純粋」な人たちだからでしょう。
ギルバートと不倫関係にあるベティの夫だけが唯一即物的なキャラクターかと思いきや、実は彼こそ極めて純粋な人間だったという徹底ぶり。つまり誰からも嫌悪感を抱かれることの無い、完全無菌、人畜無害の映画だからじゃないかと思います。
また、ハルストレムが得意とする「小さなコミニュティのエピソード」は「世界が100人の村だったら」に似ています。「その中には自分も含まれている」と観客に思わせるのが巧いんですね。人間なら誰もが持っているさまざまな“弱点”を、登場人物たちに抱え込ませているのも、共感を生むポイントだと思います。
個人的にこれがハルストレムの最高傑作だとは思いません。ただし「小さな枠組みからの脱出」と「家族解散」をテーマにした作品の中では佳作の部類に入ると思います。
まず一度観ておいて、そのあと何かの折に観てみてみると新たな感動があるかもしれない不思議な作品。
「ハルストレムを語る上では欠かせない」といろんな人から言われた、スウェーデン出身監督のハリウッド進出2作目をようやく観ることが出来ました。
ちなみに脚本のピーター・ヘッジスは「聞き覚えのある名前だな」と思ったら、この9年後に「エイプリルの七面鳥」で監督デビューする人でした。
ギルバート・グレイプは主人公の名前。
タイトルロールを演じるのは当時30歳だったジョニー・デップ。
その弟で18歳になる知的障害児を演じているは、本作でアカデミー助演男優賞にノミネートされたレオナルド・ディカプリオです。
本作の評判を聞くとき必ず言われるのがディカプリオの演技。確かに素晴らしいです。ときどき健常者の顔がちらりと出てきてしまうのが惜しいのですが、少なくとも「I am Sam」のショーン・ペンよりいい。
ジョニー・デップはのちのキャリアを考えるととても地味な役柄を演じています。そんな彼を観ながら感じたのは「この映画に対する評価はなぜ高いのか?」という点でした。
というのも、個人的には手放しで褒められるほど優れた作品だとは思えなかったからです。
例えば1年後、「これってどんな映画なの?」と誰かに聞かれても、僕はうまく説明する自信がありません。それくらい引っかかりの無いストーリーなのです。
そこが「ハルストレムらしさ」と言えなくもないのですが、他の作品に比べてこれだけが決定的に掴みどころの無い、にゅるっとした作品に仕上がっているのです。僕はこの反省がのちのちの作品に生かされているように思います。
「事件は最後に起きたんじゃダメなんだ」
そう気付いたかどうかは分かりませんが、これ以降の「サイダーハウス・ルール」、「ショコラ」、「シッピング・ニュース」ではその教訓が生かされていると思います。
では、この作品が概ね高評価を得る理由はどこにあるのか?
それはこの映画には悪人が出て来ないだけでなく、登場人物全員が見事なまでに「純粋」な人たちだからでしょう。
ギルバートと不倫関係にあるベティの夫だけが唯一即物的なキャラクターかと思いきや、実は彼こそ極めて純粋な人間だったという徹底ぶり。つまり誰からも嫌悪感を抱かれることの無い、完全無菌、人畜無害の映画だからじゃないかと思います。
また、ハルストレムが得意とする「小さなコミニュティのエピソード」は「世界が100人の村だったら」に似ています。「その中には自分も含まれている」と観客に思わせるのが巧いんですね。人間なら誰もが持っているさまざまな“弱点”を、登場人物たちに抱え込ませているのも、共感を生むポイントだと思います。
個人的にこれがハルストレムの最高傑作だとは思いません。ただし「小さな枠組みからの脱出」と「家族解散」をテーマにした作品の中では佳作の部類に入ると思います。
まず一度観ておいて、そのあと何かの折に観てみてみると新たな感動があるかもしれない不思議な作品。
私はラストでいい意味の笑いがおきました。
by **feeling** (2007-12-22 20:32)
こんばんは。
kenさんはやはり細かく見ておられますよね。
私はこの映画を見たとき、ジョニー・デップの顔を見て、
「どうしてあなたは私の大好きな顔に生まれてきたの!」と思って以来、
ジョニーの虜になっちゃいました。ディカプリオのほうがよかったって、
友達は言ってましたけどね。そんなの関係ない☆
by coco030705 (2007-12-22 20:46)
>keiko_keikoさん
僕もいいラストだったと思います。
とてもポジティブな展開でしたからね。
>coco030705さん
ジョニデ、カッコよかったですねえ。
僕もあの髪型を目指します。あとちょっとなんです。あそこまで(笑)。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-12-22 20:51)
この映画を見て、それまで好きになれなかったディカプリオが好きになりました。途中、何度か胸が詰まる思いもしましたが、ラストでそれが、解決される感じがこの映画を好きになる理由です^^♪
by ミック (2007-12-23 16:37)
思えばお母さんが2階のベッドへ上がったのは
自ら死を悟った象の行動と同じだったのかも知れませんね。
子供たちのことを想って旅立ったのでしょう。
ラストはまさしく「解決」でしたね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-12-23 18:21)
“弱点”が共感を生むポイント、という部分に納得しました。
ハルストレムの作品に出てくる人物って、
何かしらの欠点を抱えている人がたしかに多いですよね。
kenさんのレビューはいつもいろいろ考えさせられます。
久しぶりにまた観てみたくなりました。
by lucksun (2007-12-25 01:59)
お褒め頂きありがとうございます。
引っ掛かりのないブログよりも、何か引っ掛かるブログのほうが
僕自身いいと思っています。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-12-25 04:07)
はじめまして、ブログ初心者のホーギーと言います。
この映画は、ジョニー・デップの素晴らしさとディカプリオの19歳にして見事な演技を披露した名作だと思います。
私にとって、彼らの出演した映画の中で、ベスト3には入る作品だと思います。
こういう映画最近ないですよね。ぜひ、多くの人に観てもらいたい映画ですよね。
ということで、また、遊びに来ます。
それから、トラックバックもお願いします。
by はじめまして (2008-03-09 19:28)
ホーギーさん、こんにちは。
僕はハルストレムのファンなので、この作品も嫌いじゃないんですが
ちょっと詰めの甘い作品だなと思いました。
ジョニーもレオもいいですけどね。
by ken (2008-03-09 20:55)
さっきDVD見たところです。
シザーハンズ・チョコレート工場・アリス・そしてギルバートと
勝手にジョニデ祭りをしているわけです(笑)
私もこの映画いいなって思ったんだけれど
その理由・・・
kenさんの言う通りかと!
4作品目にして私初めてジョニデがこういう顔の人だってわかりました。
4作品目にして初めて演技しているジョニデ見ました(笑)
ラスト私もいいなって思いました。
なんかすがすがしいラストでしたね。
by ecco (2012-02-11 22:09)
いいですねえ、ジョニデ祭り!
シザー、チャリチョコ、アリスだと、確かに素顔はさっぱり分かりませんね。
デーモン小暮閣下並みに分からないw
ところでこの映画、どんなラストだったのか忘れちゃいました。
もう4年以上経ってるしなあ。
でも忘れるから、また観ても楽しいんですけどね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2012-02-11 23:42)