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マンデラの名もなき看守 [2008年 レビュー]

マンデラの名もなき看守」(2007年・フランス/ドイツ/ベルギー/南アフリカ)

 マンデラとは、南アフリカ前大統領ネルソン・マンデラのこと。
 名もなき看守とは、マンデラが27年も不当に収監されていた時代に交流を深めた人物で、本編の主人公ジェームズ・グレゴリーを指しています。
 囚人と看守という関係は「グリーンマイル」や「デッドマン・ウォーキング」を思い出しますが、この作品の場合は
政治的理由によって対峙する“監視する者とされる者”を描いた「善き人のためのソナタ」のテーマに近いです。
 
 人種差別主義者の看守が「行動は支配できても精神までは支配できない」という絶対の真理に気付いたとき、その価値観はどう変化していくのか?
 
 ドラマとしては最高の部類に入るテーマだと思います。
 ただ実体の無い精神論だけに、そのエピソードをどう繋いでいくかは、やはりかなりのテクニックが要るんだなと痛感しました。本編に対する不満もまさにそこ。
 少なくとも、巧く映像に出来ていなかったポイントが2つあったように思います。
 まずは、27年も拘束されたマンデラの苦悩。
 マンデラは刑務所の中にいながら、まるで自宅でくつろぐように落ち着き払っていたと言われています。それはいい。でもそれを額面どおり撮ってどうする、と思いました。観客は平凡で欲深い人間たちです。つまり「マンデラはいかにして達観したか」を具体的にしない限り、マンデラを理解することなど出来ないということです。
 もうひとつはグレゴリーがマンデラに傾倒していく経緯。
 白人が黒人に暴行を働くシーンを入れたりしていますが、それは観客向けの安易なシーンとしか思えません。子供のころ黒人の少年と付き合いがあったというエクスキューズはありますが、じゃあなぜ人種差別主義者になったのかが分からない。この一歩間違えば「矛盾」と捉えられなくないポイントは最大の失点です。
 結果、先に挙げた本作のテーマは描ききれていないと言わざるを得ません。

 邪なことを想像すると、ネルソン・マンデラが齢90になって映画化を認めた理由は、自分が理想とする自分の過去を映像にしたかっただけじゃないか、という気がしないでもありません。テーマがいいだけに残念です。

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コメント 4

snorita

ああこの映画、どうなんだろうと思ってスルーしてたけどkenさんのレビュー見て俄然見ようと思いました。(日本語で見ないと分からなさそうですねえ、難しい?)

オーストラリアって、南アフリカと全く同じ社会構造だったんですね(当たり前か)、こちらに来てすごくそれがよくわかりました。彼らは南アフリカは自国の「兄弟」みたいな感じがある。マンデラさんはこちらではすごく人気があるんだけど、それはちょっと複雑な感情みたいです。最近出たマンデラさんの伝記(?)はしばらく書店のbest10にずっとでてました。必ず見てみたいと思います。ご紹介いただきサンクスです。
by snorita (2008-03-09 07:55) 

ken

マンデラの母国語、「コーサ語」が重要なアイテムになっているので
英語で観ることが出来たら、きっといいと思います。…多分(笑)。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-03-09 09:37) 

ジジョ

そうそう!
モーガンフリーマンがマンデラを演じる映画もあるみたいで、
生誕90周年キャンペーン的なコトとか、ありそうな。。
でも、ご存命というのが驚異的☆です。



by ジジョ (2008-05-03 23:17) 

ken

そんな映画の企画もあるんですか…。
なんだか複雑ですねえw
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-05-04 01:04) 

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