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きつねと私の12か月 [2008年 レビュー]

きつねと私の12か月」(2007年・フランス) 原作・監督:リュック・ジャケ

 「皇帝ペンギン」の監督が幼少期の実体験を元に撮った長編フィクション。
 甘っちょろいタイトルが付いていますが、とても見応えのある素晴らしいドラマでした。

 ある日、山の中で野生のきつねを見かけたリラは、その気高さと美しさに心奪われる。
 以来、山に入ってはきつねの姿を追い、餌づけをしようと試みるが、そこは野生動物の棲みか。リラは様々な危機と対面することになる…。

 その昔、血の繋がりのない子熊と雄熊の交流を描いた「子熊物語」という傑作があったのですが、本作はそれを彷彿とさせる仕上がりでした。人間と動物との間に芝居を成立させたという点では本作の方が勝っていると言ってもいい。
 観客は、リラときつねの“ファーストコンタクト”を描いた冒頭の4分50秒にハートをわしづかみされると思います。美しいタイトルバックに現れるきつねのシルエット。そしてリラときつねのカットバック。僕は「どうやって撮ったのか」驚き、そして「編集の巧みさ」に感心し、わずか5分弱のシーンで久しぶりに「一目惚れ」をしてしまいました。
 中でも一番惚れたのは、主人公リラを演じたベルティーユ・ノエル=ブリュノーの無垢な演技。劇中のきつね以上に彼女の笑顔が眩しく、「彼女が笑うと僕も愉しい」、そんな気分になります。
 舞台となる山や川、洞窟のロケーションも文句なく素晴らしい。
 しかも極端な山奥ではなく、少女が自力で歩いて行ける距離感が絶妙で、観客はリラと共に山に入り、五感を解放しながら散策を愉しむことも出来るでしょう。そのためにも、ぜひ音響設備のいい劇場か、DVDがリリースされたのちにヘッドフォンで鑑賞して欲しい。録音と音響デザインがリアリティに満ちた良い仕事をしています。
 そんなロケーションを生かして、インディ・ジョーンズ顔負けのアドベンチャー要素を取り入れた点も特筆すべき点。リラときつねだけの関係性でどう物語を構築していくのか、途中気になってはいたのですが、中だるみが起きそうなタイミングで、いきなりアドベンチャームービーに様変わり。この緩急の付け方は絶妙でした。

 リラときつねの結末には若干不満があるのですが、ドラマとしての着地点は理想的。
 冒頭4分50秒で好きになったら、その気持ちを裏切らない、幸せな、そして納得のエンディングが96分後に待っています。子供を持つ人はぜひ親子で観に行って下さい。

きつねと私の12か月 [DVD]

きつねと私の12か月 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • メディア: DVD

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CORO

映像もドラマもすばらしかったです。
最後のあれさえなければ
トップクラスの作品だと思います。
by CORO (2009-06-11 21:42) 

ken

あれ、ですよねえ。問題はw
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-06-12 00:17) 

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