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つぶより花舞台 [2009年 レビュー]

つぶより花舞台」(2007年・日本) 監督:鯨エマ

 劇団員の大半は60歳以上というシニア素人劇団の初舞台を追いかけたドキュメンタリー。
 14名の熟年男女は、元銀行員、元教師、未亡人など、ほとんどが演劇とは無縁だった人たちばかり。なぜ彼らは舞台に立とうとするのか。劇団かんじゅく座の主宰者である鯨エマがインタビュアーを務め、演劇と向き合うことにした彼らの思いを引き出していく。

 ドキュメンタリー映画というジャンルはデジタル技術の進歩によって、誰にでも作れるようになった。これはとてもいいことだと思う。僕は「情報を発信するのはメディアだけ」という発想に囚われず、一市民が社会的意義のあるテーマを発信することはとても重要だと思うし、これからますます増えて行くべきだと思う。
 もちろんそのためには「アウトプットをどこに求めるか」という重要な問題が付きまとう。しかし「ポレポレ東中野」のようなドキュメンタリー作品に好意的な小屋のさらなる出現であったり、あるいはBSやCSチャンネルの有効活用化、さらにはネット配信環境の整備などが進めば、誰もがドキュメンタリー作家になれると思う。そこから優れたテーマの作品が生まれて来れば、時代は大きく変わるだろう。

 さて本作もそんな1本である。
 若い世代には退屈極まりないだろうが、我々中年には興味深い場面の連続だ。
 テーマは「老い」である。
 たとえば、職を持っていた人間にとって、リタイアするということは「社会的地位を失う」ということ。それを受け入れるのは決して容易くない。たとえば、60年近く生きるということは、他者が介入できない「固定概念を持つ」ということ。これを打ち破るのも決して容易くない。しかし、ここに登場する人たちは、演劇と向き合うことによって健全な老人になろうとしている。もちろん一筋縄ではいかない。しかしシニア劇団員たちのもがき悩む様が、我々に勇気を与えてくれるのだ。
 「人間はいくつになっても変われる」
 いい教訓をもらったと思う。
 
 上映はポレポレ東中野で10:45からの1回上映のみ。厳しい条件だけれど上映できるだけでも幸運だ。

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