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光州5・18 [2009年 ベスト20]

光州5・18」(2007年・韓国) 監督:キム・ジフン 脚本:ナ・ヒョン

 1980年の韓国で実際に起きた、民主化を求める市民と制圧しようとする軍隊の10日間に渡る衝突を描いたドラマ。
 僕はこの作品についてはクオリティをどうこう言うつもりはありません。
 この映画には、多くの日本人が知るべき、重大な事実があります。
 一つ。
 民主主義の国に生まれた人間には理解し難い現実が、この世にはあるのだということ。
 二つ。
 これはわずか29年前に隣国で起きた事件であるということ。
 三つ。
 今まさにイランで同様の事件が起きているということ。
 僕にとっては「ホテル・ルワンダ」以来の衝撃でした。

 「5・18」は軍がデモ隊に対し、武力行使をした日です。
 劇中、タクシー運転手のミヌ(キム・サンギョン)は、弟のジヌ(イ・ジュンギ)と一方的に想いを寄せる看護師のシネ(イ・ヨウォン)の3人で映画を観ていました。その途中、館内に逃げ込んできた青年を、追って来た兵士がこん棒で激しく殴打。催涙弾も投げ込まれ、観客は慌てて外に出ると、そこは兵士が一般市民を次々と襲う修羅場だった…。
 「5・18」は平穏な生活を送っていた光州市民が、10日間にも渡って未曾有の恐怖を味わうことになる、悪夢の始まりの日でした。
 映画を観ていると、その恐ろしい事実に息が詰まります。
 しかしこの事実はどれほど日本に伝えられたのでしょうか。
 公式サイトには当時の新聞記事が掲載されていました。その見出し。
 
 5月19日付朝刊
 読売「空てい部隊出動 光州」
 朝日「学生街頭デモ 機動隊と衝突」

 いずれも1面ですが記事は小さく、この日デモ隊や光州市民が味わっただろう恐怖の100分の1も伝えられていません。ましてや情報を流すのは最終的にデモ隊を鎮圧した軍政部。そこから出される情報がはたして正しいのかどうかは、誰にも分からないでしょう。
 例えばたった今も、時事通信社からこんなニュースが流れて来ました。
 「目撃者によると、テヘラン中心部に約1,000人のデモ隊が集結し、警官隊が催涙弾を発射した」
 本当に催涙弾が発射されただけなのでしょうか?
 警官はこん棒を振りかぶっていないのでしょうか?
 わずかな情報から、私たちは想像力を働かせるしかありません。もしかしたら何の罪もない人が、権力を持った一部の人間のエゴで、生命の危機にさらされているかも知れないのです。
 世界の耳目は市民の味方です。
 本編を観て「自分がもしも光州市民と同じ立場に置かれたら?」と想像をしてみましょう。すると、きっと新聞やテレビのニュースをもっと注意して見るようになると思います。

 かつては映画製作に国の検閲があった韓国。
 そんな国で、この映画の製作が許された今の環境に感心。また国民の6人に1人が観た計算になる観客動員に感動。少なくともこの映画が何らかの教訓となって、世界中の民主化運動に関わる人の命をひとつでも救うきっかけになれば。

光州5・18 スタンダード・エディション [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
  • メディア: DVD

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コメント 4

Sho

きっと、自分は知らない(知らされていない)ことがたくさんあるのだろうな・・と、思いました。
知っておかなければいけないことも、たくさんあるのだと思います。
是非見たいと思いました。

by Sho (2009-06-23 03:56) 

ken

国際社会の一員として、果たさなくてはならない使命が、
我々にはあるような気がします。
無知は罪。見て見ぬふりは大罪だと思います。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-06-23 12:14) 

魚河岸おじさん

激しく同感です!
見て見ぬフリは、ホント大罪だと思います。

by 魚河岸おじさん (2009-06-24 07:14) 

ken

ですよね。今はイランの情勢が非常に気になります。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-06-24 12:28) 

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