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私の中のあなた [2009年 ベスト20]

私の中のあなた」(2009年・アメリカ) 監督・脚本:ニック・カサヴェテス 脚本:ジェレミーレヴェン

 白血病の姉を救うため、臓器を提供するドナーとして生まれて来た妹と、その家族の物語。
 これはカナダに実在する家族をモデルに書かれた原作を「きみに読む物語」のニック・カサヴェテスが脚色したフィクション映画です。

 11歳のアナ(アビゲイル・ブレスリン)は姉のケイト(ソフィア・ヴァリジーヴァ)に腎臓を提供する手術を控えていた。姉を救うため、物心つく前から協力を強いられたアナだったが今回は拒否。しかも「両親を提訴したい」とある弁護士に相談を持ちかけた。理由を聞いた弁護士のキャンベル(アレック・ボールドウィン)はアナの依頼を受けることに。原告はわずか11歳の娘。そして被告は母。やがて家族それぞれの思いが露わになって行く。

 こんな映画ですから、僕は臓器移植からクローン技術に至るまで、
 「人間の生命に対する執着が生んだいくつかの問題」
 がメインテーマなんだと思っていました。もちろん序盤はドナーとして生まれて来たアナの尊厳を考える展開をするのですが、途中から大きく方向転換をします。
 これは「なぜアナは両親を提訴したのか?」という理由とリンクしているため欠かせない舵の切り方なのですが、個人的にはいささか肩すかしを食った気分でした。
 インプットしておくといいのは、これは倫理的な問題を観客に投げるものではないということ。僕が思う本作のテーマは「片思いの家族愛もある」だったと思います。

 ただとにかく泣けます。
 「心が震える」という慣用句がありますが、これは、「嗚咽で胸が波打つことを言うのだな」と思い知ったくらいです。
 僕はこの家族のお父さん、ブライアン(ジェイソン・パトリック)の立場でずっと妻と子どもたちを見ていました。何としても長女を救いたいという妻の気持ちは自分も同じ。けれど何を思って親を提訴したのか、下の娘とそれを支えた息子の気持ちも知りたい。もう頭の中はぐらんぐらんに揺れていました。そしてこういうときに男親は無力だなと思い知りました。男は観れば分かります(笑)。

 これは、世界中のどの家族にも起こりうる問題を取り上げた、極めて普遍的な物語。

 姉妹を演じたソフィア・ヴァジリーヴァとアビゲイル・ブレスリンの演技が見もの。「リトル・ミス・サンシャイン」を観た方はぜひ、役者として一回り大きくなったアビゲイルを是非観てやって下さい(すっかり父の気分)。素晴らしい成長を遂げています。

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rennka

あーーーっ!!!
この女の子,どこかで観たぞって,ずっと気になってました。
リトル・ミス・サンシャインの子だ!!この映画,大好きで!!
あーすっきりしました。
kenさん,ありがとう(笑)
最近は,アメリカ映画離れの私ですが,ちょっと観てみようかな。
by rennka (2009-10-09 23:18) 

silvercopen

私もこの映画観に行きたいと思っています。
ソフィア・ヴァジリーヴァはテレビドラマの「ミディアム霊能者アリソン・デュポア」の長女役の子なので活躍が楽しみです。
by silvercopen (2009-10-09 23:40) 

CORO

重いテーマの作品には尻込みしてしまうんですが、
kenさんの「心が震える」に反応しました。観てみます。
by CORO (2009-10-10 00:35) 

ken

>rennkaさん
 アビゲイルはすごく成長してます。
 「リトル・ミス…」をご覧になっているなら、こちらもオススメですよ。
 nice!ありがとうございます。

>silvercopenさん
 若い2人の演技が完全にキャメロンを食っていましたw
 素晴らしいです。nice!ありがとうございます。

>COROさん
 そうですね。この手の作品を敬遠したくなる気持ち分かります。
 でも、本当に心が震えました。精神的浄化のためにも是非。
 nice!ありがとうございます。
by ken (2009-10-10 13:04) 

カオリ

昨日、ちょうど新聞でこの作品についての記事を読み、「あれ、思っていたストーリーと違うんだな」と思っていたところでした。ワタシも心の洗濯をしたいなぁと思いました。
by カオリ (2009-10-11 09:48) 

ken

あ、僕と同じ人がいて良かったw
でもそうと知って観れば、かなりいい作品だと思います。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-10-11 10:44) 

ジジョ

臓器提供、白血病、訴訟、、とか
あらずじに出てくる単語がスキャンダルすぎて
ちょっと尻込みしますよね、この映画(^-^;
観たら全然、想像と違っていて良い意味で裏切られました☆
実在する家族がモデルなんですね!

by ジジョ (2009-10-12 08:12) 

てくてく

周りの席に誰も座ってなかったので
思うに任せて泣きました。
お父さん目線で見ると、
パーティに娘を送り出すシーンは堪らないと思います。
by てくてく (2009-10-12 17:01) 

ken

>ジジョさん
 そうなんです。カナダにモデルとなった家族がいるんですよね。
 モデルの家族は映画とはまた違う結末だそうです。
 nice!ありがとうございます。

>てくてくさん
 僕も思い切り泣きたかったですw
 お父さんのつもりで観ていた僕に、ご指摘のシーンはたまりませんでした。
 nice!ありがとうございます。
by ken (2009-10-13 21:54) 

non_0101

こんにちは。
予告編を観た時には訴訟の話?とか思ってしまったのですけど
本当に“普遍的な物語”でした。
家族への想いが心に残る作品ですね。
泣けました~!
特にソフィアちゃんの演技には泣かされてしまいました(^^ゞ
by non_0101 (2009-10-16 12:54) 

ken

予告編もミスリードを招いてましたね。
きっとそこに期待した人もいたと思うので、この着地点を良しとするかどうか
意外と評価が分かれるんじゃないかと思いました。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-10-17 10:43) 

snorita

帰国便の中で最初から最後まで号泣でした。
私の仕事はこういう関係でして、映画の中にでてくる小児がん担当の医師の気持ちに
自分のたくさんの思い出がフラッシュバックしてしまって。

病気をしている子が、いかに家族を思っているか、また病気の子の兄弟がいつも置き去りになっていること、お父さんとお母さんの温度差、そして、最後には子供を失ったと同時に、夫婦の関係が切れてしまう家族がとても多いこと、そんなことを考えると、この映画は事実がたくさん盛り込まれているなと思いました。
白血病の映画、なんて思って敬遠しないでいただけるといいな、と思ってしまいます。
本当にこういう家族がたくさんいるんですもの。
by snorita (2009-10-20 16:47) 

ken

ははあ、そうでしたか。
もしかしたらsnoritaさんと僕はどこかですれ違っているかも知れませんね。
いや、詳しくは今度メールしますw
by ken (2009-10-20 17:00) 

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