サマーウォーズ [2009年 ベスト20]
「サマーウォーズ」(2009年・日本) 監督:細田守 脚本:奥寺佐渡子
すごい映画だ。
この1本でアニメーションの存在価値が200%ほど持ち上がったんじゃないかと思う。
「実写じゃないからこそ醸し出せたリアリティ」
明らかに矛盾した言葉だが、「サマーウォーズ」を語るには相応しい。
そして、これから作られるアニメーション映画の新たな指針になるような気がする。
高校2年生の健二は、憧れの先輩・夏希にアルバイトを頼まれる。それは「一緒に里帰りして欲しい」というもの。行った先で待ち受けていたのは大勢の親戚たち。そこで健二は夏希のフィアンセを演じることになる。その夜、突然の展開に寝付けずにいた健二のケータイにある数式が届く。数学が得意な健二が暇にまかせて解読をすると、翌朝世界は一変していた…。
ドラマは健二たちが生きる現実世界「長野県上田市」と、ネット上のヴァーチャル空間「OZ(オズ)」の2か所で展開する。
正直に言うと、僕のようなアナログ世代には取っ付き難い設定だった。それでも最後まで観ることが出来たのは、これが実写ではなくアニメーションだったからだ。
実社会において「現実世界」と「仮想空間」には大きな垣根が存在している。それは言語や宗教や距離と言ったものではなく「異次元」という絶対理由によるものだが、しかしアニメーションというプラットホームで描かれる2つの世界は、見た目にどちらもただの「絵」でしかない。「サマーウォーズ」は現実世界に存在するモノも、存在しないモノも、等しく「絵」で描くことによって、この垣根を取り払うことに成功している。だから僕はクライマックスでどれだけカットバックされても何の違和感もなかったし、途中断念することなくエンドマークを確認することが出来たのだ。
細田守の前作「時をかける少女」のレビューで僕は、「アニメーション最大のメリットは、実写と違っていろんなものを“省略”出来ること」と書いた。補足する。アニメーションは実写(リアル)ではない。だから観客は誇張も省略も許し、“リアリティのハードル”を下げる。「実写じゃないからこそ醸し出せたリアリティ」とはこういうことだ。
「サマーウォーズ」の功績もここにある。例えどんな世界、設定の組み合わせであっても、アニメーションは異なる世界のつなぎ目にある“段差”を吸収する、ショックアブソーバーとなり得ることを証明したのだ。これまでも「夢」と「現実」を行き来するアニメーションはあった。しかし本作はそれ以上の垣根を容易く乗り越えている点が大きい。アニメーションの可能性はこの1本で確実に広がったのだ。
実写ではこうはいかない。
そもそも可視化不可能な世界を描くためにはCGかアニメーションという方法を取るしかないのだから、やればやるほど実写との段差は大きくなるばかりである。
ショック=違和感がなければ観客は物語に没入することが出来る。奥寺佐渡子の脚本は「時をかける少女」ほど洗練されてはいないが、「インターネットがどれだけ拡充しようと、人はふれあいなしに生きられない」というメッセージが“初恋の芽生え”と共に描かれていて微笑ましい。残念だったのは大家族のキャラクターがいまひとつ立っていなかったことくらいだろう。
単純にアニメーション映画として観ても、OZの描写は素晴らしいと思う。
オープニングまもなく登場するOZをはじめて観たとき、実は「村上隆のパクリか?」と思ったのだけれど、村上隆とルイ・ヴィトンのアニメーションプロジェクト「SUPERFLAT MONOGRAM」を監督したのは細田守だ。もちろん互いにリスペクトする部分もあるだろうが、独特の浮遊感を作りだすカメラワークは確実に細田守のテクニックだろう。
世界中の観客とアニメーターに、これが日本のアニメーションだと自慢していい、現時点で最高のクオリティを誇る1本。
すごい映画だ。
この1本でアニメーションの存在価値が200%ほど持ち上がったんじゃないかと思う。
「実写じゃないからこそ醸し出せたリアリティ」
明らかに矛盾した言葉だが、「サマーウォーズ」を語るには相応しい。
そして、これから作られるアニメーション映画の新たな指針になるような気がする。
高校2年生の健二は、憧れの先輩・夏希にアルバイトを頼まれる。それは「一緒に里帰りして欲しい」というもの。行った先で待ち受けていたのは大勢の親戚たち。そこで健二は夏希のフィアンセを演じることになる。その夜、突然の展開に寝付けずにいた健二のケータイにある数式が届く。数学が得意な健二が暇にまかせて解読をすると、翌朝世界は一変していた…。
ドラマは健二たちが生きる現実世界「長野県上田市」と、ネット上のヴァーチャル空間「OZ(オズ)」の2か所で展開する。
正直に言うと、僕のようなアナログ世代には取っ付き難い設定だった。それでも最後まで観ることが出来たのは、これが実写ではなくアニメーションだったからだ。
実社会において「現実世界」と「仮想空間」には大きな垣根が存在している。それは言語や宗教や距離と言ったものではなく「異次元」という絶対理由によるものだが、しかしアニメーションというプラットホームで描かれる2つの世界は、見た目にどちらもただの「絵」でしかない。「サマーウォーズ」は現実世界に存在するモノも、存在しないモノも、等しく「絵」で描くことによって、この垣根を取り払うことに成功している。だから僕はクライマックスでどれだけカットバックされても何の違和感もなかったし、途中断念することなくエンドマークを確認することが出来たのだ。
細田守の前作「時をかける少女」のレビューで僕は、「アニメーション最大のメリットは、実写と違っていろんなものを“省略”出来ること」と書いた。補足する。アニメーションは実写(リアル)ではない。だから観客は誇張も省略も許し、“リアリティのハードル”を下げる。「実写じゃないからこそ醸し出せたリアリティ」とはこういうことだ。
「サマーウォーズ」の功績もここにある。例えどんな世界、設定の組み合わせであっても、アニメーションは異なる世界のつなぎ目にある“段差”を吸収する、ショックアブソーバーとなり得ることを証明したのだ。これまでも「夢」と「現実」を行き来するアニメーションはあった。しかし本作はそれ以上の垣根を容易く乗り越えている点が大きい。アニメーションの可能性はこの1本で確実に広がったのだ。
実写ではこうはいかない。
そもそも可視化不可能な世界を描くためにはCGかアニメーションという方法を取るしかないのだから、やればやるほど実写との段差は大きくなるばかりである。
ショック=違和感がなければ観客は物語に没入することが出来る。奥寺佐渡子の脚本は「時をかける少女」ほど洗練されてはいないが、「インターネットがどれだけ拡充しようと、人はふれあいなしに生きられない」というメッセージが“初恋の芽生え”と共に描かれていて微笑ましい。残念だったのは大家族のキャラクターがいまひとつ立っていなかったことくらいだろう。
単純にアニメーション映画として観ても、OZの描写は素晴らしいと思う。
オープニングまもなく登場するOZをはじめて観たとき、実は「村上隆のパクリか?」と思ったのだけれど、村上隆とルイ・ヴィトンのアニメーションプロジェクト「SUPERFLAT MONOGRAM」を監督したのは細田守だ。もちろん互いにリスペクトする部分もあるだろうが、独特の浮遊感を作りだすカメラワークは確実に細田守のテクニックだろう。
世界中の観客とアニメーターに、これが日本のアニメーションだと自慢していい、現時点で最高のクオリティを誇る1本。
こんにちは。
この作品は面白かったですね(^^)
“実写じゃないからこそ醸し出せたリアリティ”ってなるほどです!
出だしは“アバター!?”とか引いてしまいそうになったのですけど
途中から夢中になって観ていました。
このアニメが楽しめる日本人で良かったと思えるような作品です。
今年のマイベスト10に確定の1本です(^^ゞ
by non_0101 (2009-09-09 22:43)
面白かったですね。
ちょっと完成度としては前作の「時をかける少女」の方が上だとは思いますが。
ラスト近くの展開は燃えます。
by きさ (2009-09-10 05:59)
「実写じゃないからこそ醸し出せたリアリティ」
なるほど!!ナイスです!
by Betty (2009-09-10 11:02)
>non_0101さん
アバターってワードでつまづく人って結構いたでしょうね。
でも、アニメの歴史に残る作品になっていたと思います。
nice!ありがとうございます。
>きささん
前作と比較するのは酷ですね。あれは原作がいい。
nice!ありがとうございます。
>Bettyさん
リアルに描かれた上田市の様子も良かったと思います。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-09-11 12:10)
この映画を褒めるなんて、何かの冗談ですか?
「実写じゃないからこそ醸し出せたリアリティ」なんてこの映画のどこに
「リアリティ」があるんですか?
「実写じゃないからこそ必要なリアリティ」がこの映画には致命的に欠けていると思いますね。だから、キャラクターがすべて薄っぺらく「リアリティ」が
ないのです。
女子高生に必要なフィアンセ、暗算で解読されるパスワード、妾の子がOZUを開発、凄腕のゲーマー、花札だけは人間が勝つ、妾の子を殺そうとする老婆等など、「リアリティ」はまったくない。むしろ、出来の悪いアニメーションに必要な「御都合主義」だけはいっぱいある。
宮崎駿の『となりのトトロ』と比較すれば、簡単なことです。
生き生きとした現実感のある姉妹だからこそ「ファンタジー」に「リアリティ」があるのです。『となりのトトロ』の方が『サマーウォーズ』よりリアルだと思いませんか?「ファンタジー」なのに・・・。
『サマーウォーズ』の成功は、今後、宮崎駿のような世界的アニメーション作家が日本から生まれないことを暗示しているように思われます。
追伸:『殺人の追憶』を紹介してくれて感謝しています。ラストシーンは興奮 のあまり、30回くらいプレイバックしました。
by takahashi (2010-04-17 04:22)
僕がここで言う「リアリティ」とは、「OZ」そのものを
「そんなことがいずれあるかもしれない」
と思わせたリアリティを指しています。
takahashiさんが「御都合主義」と指摘した設定なんて、どうでもいいのです。
by ken (2010-04-17 10:21)
私には、脚本の「御都合主義」が」「OZ」そのものの「リアリティ」を否定しているようにしか見えないのですが?
ただ冷静に考えてみると、kenさんの指摘、「独特の浮遊感を作りだすカメラワーク」「OZの描写の素晴しさ」には脱帽しました。
私は間抜けなことに、「OZ」の描写の凄みに気がつきませんでした(笑)。
この映画の「新しさ」が判らなかった私は頭がカタイのでしょうね。
やはり、プロは違いますね。
大変、勉強になりました。
by takahashi (2010-04-17 14:39)
この映画、ホントに凄いですよネ!
こないだ観て、
完成度の高さにビックリしました。
by u_yasu (2010-04-21 01:47)
>takahashiさん
映画なんて所詮娯楽です。
個々が好きなように楽しめばいいのです。
>u_yasuさん
僕もスゴイと思いました。気に入らない点もありますが
そんなものを超越しています。nice!ありがとうございます。
by ken (2010-04-21 02:06)