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007/消されたライセンス [2010年 レビュー]

007/消されたライセンス」(1989年・イギリス/アメリカ) 監督:ジョン・グレン

 シリーズ16作目。ティモシー・ダルトンは2作目にしてこれが最後のボンドとなってしまった。
 残念だ。本作のティモシー・ボンドも悪くないのに。
 特に今回は英国諜報部の任務ではなく、個人的な復讐が主たる動機になっているため、ボンドの人間臭さも加味され、過去15作にはない味わいがあったと思う。
 
 ボンドは親友であるCIAのフィリックス・ライターの結婚式に出席するため、本人と共に教会へ向っていた。ところがアメリカ麻薬取締局が長年追っていた麻薬王のサンチェス(ロバート・ダヴィ)がアメリカ領内に現れたとの情報が入り、ライターは挙式を放り出してサンチェス捕獲に向う。ボンドの応援もあって捕獲作戦は成功するが、まもなくサンチェスは捜査官を買収しまんまと脱走。その足でライター夫妻を襲い、新妻は殺害。ライター自身は拷問によってサメに片足を食いちぎられる目に遭う。
 ボンドは親友の仇を討つためサンチェスを追うが、任務を逸脱したボンドの行動を見かねたMから「殺しのライセンスは剥奪する」と宣告されてしまう…。

 大物麻薬王の捕獲という仕事にはもちろん意義はある。しかしそれは女王陛下の命令ではない、という設定がミソだ。よって今回ボンドはMのオフィスに現れないし(シリーズ初じゃないか?)、もちろんマニーペニーとの絡みもない。そこでボンドをサポートするために活躍するのがQである。
 Qはわざわざ休暇をとってボンドの様子を伺いに現れ、何かと世話を焼く。こういった設定もボンドがいかに重宝されているかを物語るもので、Mもマニーペニーも実はボンドの身を案じている、というところに英国諜報部の“温かみ”が表現されている。
 もちろん「00(ダブルオー)ライセンス」を剥奪された不便さが描かれても良かったとは思うが(例えるなら、ウルトラアイを失ったモロボシ・ダンのような)、それすら逆手にとってサンチェスの懐に潜り込む辺りがボンドらしくもあり、小気味良くもある。

 ボンドガールの置き位置も良かった。
 まずはサンチェスの情婦ルペ(タリサ・ソト)。ルペはいつかサンチェスから逃げ出したい思いがあってボンドに接近し(これは「黄金銃を持つ男」のスカラマンガから寝返った情婦アンドレアに似た設定で、ボンド映画ではありがちな設定ではある)、やがてサンチェス側の内部協力者としてボンドを助ける役目を担う。
 タリサ・ソトはプエルトリコの血を引くアメリカ人で、艶っぽい視線と唇の形が魅力的。久しぶりにセックスアピール全開のボンドガールだった。
 もう一人はCIAパイロットのパム(キャリー・ローウェル)。彼女はサンチェスに接触を試みていたエージェントの一人で、ボンドと協力してサンチェスを追い込んでいく。
 キャリー・ローウェルは登場シーンのヘアメイクこそ南部出身の田舎娘のようだたが、ボンドに金を渡され「洋服を買って来い」と言われたあとから、見事な美貌とスタイルを披露する。
 今回のボンドガールはいずれも重要な役を与えられ、「蔑ろにされていない」ところに好感が持てた。例えば、エンディングでボンドガールが2人とも登場するなんて設定は過去にも無かったはずだ。それはそのままティモシー・ボンドの女性に対する配慮の表れであり、好感が持てるひとつの要因であったように思う。
 また大人の色気と健康的な色気。この“振り幅”こそがボンドガール2名態勢における“鉄板”の設定でもある。少なくとも僕はこの2人のおかげで、全編飽きることなく愉しむことが出来た。

 本作には当時22歳だったベニチオ・デル・トロも出演している。
 決して小さな役ではなく、サンチェスの部下として多数のシーンに出演しているが、当時はまさかここまで大きな役者に成長するとは、誰も思わなかっただろう。それくらい、笑っちゃうほどチンピラな役が似合っていたのだ。どちらかと言えばボンドガールの2人の方が将来的に有望かと思ったけれど、俳優の運命なんて分からないものだ。

 JAMES BOND WILL RETURN


 次回からピアース・ブロスナンの登場である。本作から6年のブランクを空けて公開された新シリーズはどんな作品だったのか、今から愉しみだ。

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きさ

本作でティモシー・ボンドが終わりになってしまったのは、お客さんが入らなかったからですね。
で、なぜお客さんが入らなかったかというとトーンが暗いからでしょう。
元々、スパイ映画はシリアス路線が中心で、そこにアソビスパイという路線を持ち込んだのが007シリーズです。
これは原作からの話です。
なので常にボンド映画はシリアス路線とアソビ路線の間を振れているのですが、お客さんは気まぐれというかこの回はもっと明るいハナシを期待していたのでは。
でブロスナンは基本ライト路線ですよね。
でまた今のボンドはシリアス路線だし。
という所がシリーズ通して見ると面白いです。
by きさ (2010-07-04 21:42) 

ken

客の好みは本当に怖いものだということを如実に表すエピソードですね。
ダニエル・クレイグでアソビ路線は見たくないな。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-07-05 01:58) 

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