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007/トゥモロー・ネバー・ダイ [2010年 レビュー]

007/トゥモロー・ネバー・ダイ」(1997年・アメリカ) 監督:ロジャー・スポティスウッド

 シリーズ18作目にして、ピアース・ボンドの2作目。
 東西冷戦終結後初の作品「ゴールデン・アイ」で見事なリスタートを切ったボンド映画だったが、新シリーズ2作目にして早くも大きくつまづいている。近年では「美しき獲物たち」(1985年)以来の駄作だ。

 冷戦後のシリーズで懸念されていたのは敵の設定である。本作はメディアの帝王エリオット・カーヴァー(ジョナサン・プライス)。衛星情報を操作し、英国と中国が紛争に突入するように仕向け、そのニュースを独占しようとしている。そのためにステルス艦まで保有しているというから狂気の沙汰である。メディアの帝王が、ではなく、こんな設定にした製作陣が、だ。
 実在のメディア王、ルパート・バードックをモデルにしたとも言われているが、だとしてもハナシが飛躍し過ぎている。しかもボンド映画にしては珍しく「小さなウソ」が目立っていて、個人的にもそこが受け入れられなかった。一番はQから与えられた携帯電話が思いのほか活躍してしまうところだ。
 あるときは指紋読み取りキーのセンサー部分に残った指紋を読み取り、画面上に再現し、なんなく開ける。またあるときはスタンガン風の武器になって電子錠も開ければ、殺し屋にダメージも与える。そしてまたあるときは携帯画面にBMWの運転席からの映像が映し出され、携帯電話をまるでゲームのコントローラーのようにして、BMWを運転することが出来る。…とまあ「んなアホな」の連続である。ボンド映画と言えど、この辺りのさじ加減を誤ると、一気に安い映画に成り下がるのだ。

 とは言うものの、褒められるところもある。
 一番はミシェル・ヨーの起用だ。ボンドガールとしては若林映子、浜美枝に続く3人目のアジア人女優。彼女にカンフー使いの中国のエージェントという役を与えたのは、本作の救いであった。ミシェル演じるウェイ・リンがボンドと行動を共にするようになってからは見応えがある。中でも手錠で繋がれた2人がバイクにまたがり、武装ヘリから逃げ回るシーンは迫力充分だった。ただ欲を言えばカンフーシーンのカメラアングルと編集はもう少し香港映画を観て勉強して欲しかった。
 余談だがミシェル・ヨーは本作をきっかけに「SAYURI」や「ハムナプトラ3」に出演するのだから、彼女も珍しく出世したボンドガールと言えるだろう。
 もう一人のボンドガールは以前ボンドと関係があって、現在はカーヴァー夫人パリスという設定だったテリー・ハッチャー。ミシェルには期待できない“色気担当”ボンドガールで、きちんと仕事をしていたと思う(笑)。その後の彼女は残念ながら「ボンドガールのジンクス」にはまってしまったようだが。

 振り返れば本作は映画史上、珍しいカーチェイスのある映画だった。
 なんたって主人公がステアリングを握らずに敵を蹴散らしていくのだ。普段ならテンションアゲアゲになるところだが、ここはまったく乗れなかった。奇をてらうのもほどほどに、という好例だろう。

 JEAMS BOND WILL RETUREN.

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きさ

ジョナサン・プライスの悪役は結構良かったです。
実際に事故死した実業家がモデルですよね。

by きさ (2010-08-07 08:32) 

ken

配役がいいだけに、もうちょっとしっかりした脚本だったら良かったんですけどね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-08-07 15:29) 

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