リトル・ロマンス [2010年 レビュー]
「リトル・ロマンス」(1979年・アメリカ) 監督:ジョージ・ロイ・ヒル 脚本:アラン・バーンズ
31年ぶりに観る。
実はつい最近まで、これがジョージ・ロイ・ヒル作品だったとは露知らず、名前を聞いて俄然見直したいと思っていた。
初見は16歳。僕は映画ノートに呑気なことを書いている。
「このオープニングはおもしろい。『リトル・ロマンス』より先に『明日に向って撃て!』が出てくる」
なんたる無知っぷり。なんたる自由。我ながら笑ってしまった。
言わずと知れたダイアン・レインのデビュー作である。公開当時彼女は14歳。
「最後の初恋」を観たとき、「ダイアン・レインは僕にとって“幼なじみ”と一緒」と書いた。それは彼女が、出会ってから早31年も経過しているのに、今なお健在ぶりをアピールしてくれる元気な女優の一人だからだ。だから僕は「そういや昔はどんな風だったっけ?」と旧いアルバムをめくるように、DVDのスタートボタンを押してみた。
文句なく可愛い。
ジョージ・ロイ・ヒルも撮り方を心得ていて、なにより顔見世シーンにこだわった形跡がある。
シーンは映画の撮影現場。大人たちが動き回るロケセットの中、大きな背もたれ椅子に腰掛け、本を読む少女。後ろ姿。椅子の背もたれから少女のブロンドのロングヘアが右半分だけ見えている。
やがて少女を呼ぶ声。振り返るダイアン・レイン。
このときの笑顔がすでに満点である。スター誕生の瞬間と言っていい。観客はおそらく「この世で無垢な少女の美しさに敵うものは何も無い」と確信するだろう。
僕は今のダイアン・レインを頭の片隅に置きながら、14歳のダイアン・レインを見つめ続けた。そして旧いアルバムを開けたときの懐かしさと同じ、胸になにか温かいものを感じていた。
「思えば長い付き合いになったもんだ」
これは永年映画を観てきたからこそ味わえる悦びだったと思う。
ドラマの主人公は、数学が得意で中でも「確立」には絶対の自信を持つダニエル(テロニアス・ベルナール)。映画と競馬の予想が趣味で、フランス人だがアメリカ映画で英語も習得した秀才肌。一方アメリカから母親とパリにやってきたローレン(ダイアン・レイン)は13歳で哲学書を読む、ちょっとマセた少女。この2人の恋の行方を謎の老紳士ジュリアス(ローレンス・オリビエ)が見守るという設定である。
さて本作で有名になった「ヴェネチアにある『ため息の橋』の下で日没の瞬間にキスをした2人は永遠の愛を手にすることが出来る」という言い伝えだが、実はこれ、ジュリアスのでっち上げだった(笑)。僕は後年39歳でヴェネチアに行ったとき、水上タクシーでわざわざ「ため息の橋」の下を通って(ただ見上げるだけだったけれど)感激したことを今でも思い出すが、その元となるエピソードが“スリ”の“ホラ”だったと知って、軽いめまいを覚えてしまった。
けれどこれは一人歩きをしてしまうほどロマンチックなエピソードだったという証でもある。そのうち「ため息の橋」の言い伝えだけが残って、この映画のことを知る人はいなくなるのかも知れない。
今となっては映画の持つ不遇な運命をも感じる1本だった。
31年ぶりに観る。
実はつい最近まで、これがジョージ・ロイ・ヒル作品だったとは露知らず、名前を聞いて俄然見直したいと思っていた。
初見は16歳。僕は映画ノートに呑気なことを書いている。
「このオープニングはおもしろい。『リトル・ロマンス』より先に『明日に向って撃て!』が出てくる」
なんたる無知っぷり。なんたる自由。我ながら笑ってしまった。
言わずと知れたダイアン・レインのデビュー作である。公開当時彼女は14歳。
「最後の初恋」を観たとき、「ダイアン・レインは僕にとって“幼なじみ”と一緒」と書いた。それは彼女が、出会ってから早31年も経過しているのに、今なお健在ぶりをアピールしてくれる元気な女優の一人だからだ。だから僕は「そういや昔はどんな風だったっけ?」と旧いアルバムをめくるように、DVDのスタートボタンを押してみた。
文句なく可愛い。
ジョージ・ロイ・ヒルも撮り方を心得ていて、なにより顔見世シーンにこだわった形跡がある。
シーンは映画の撮影現場。大人たちが動き回るロケセットの中、大きな背もたれ椅子に腰掛け、本を読む少女。後ろ姿。椅子の背もたれから少女のブロンドのロングヘアが右半分だけ見えている。
やがて少女を呼ぶ声。振り返るダイアン・レイン。
このときの笑顔がすでに満点である。スター誕生の瞬間と言っていい。観客はおそらく「この世で無垢な少女の美しさに敵うものは何も無い」と確信するだろう。
僕は今のダイアン・レインを頭の片隅に置きながら、14歳のダイアン・レインを見つめ続けた。そして旧いアルバムを開けたときの懐かしさと同じ、胸になにか温かいものを感じていた。
「思えば長い付き合いになったもんだ」
これは永年映画を観てきたからこそ味わえる悦びだったと思う。
ドラマの主人公は、数学が得意で中でも「確立」には絶対の自信を持つダニエル(テロニアス・ベルナール)。映画と競馬の予想が趣味で、フランス人だがアメリカ映画で英語も習得した秀才肌。一方アメリカから母親とパリにやってきたローレン(ダイアン・レイン)は13歳で哲学書を読む、ちょっとマセた少女。この2人の恋の行方を謎の老紳士ジュリアス(ローレンス・オリビエ)が見守るという設定である。
さて本作で有名になった「ヴェネチアにある『ため息の橋』の下で日没の瞬間にキスをした2人は永遠の愛を手にすることが出来る」という言い伝えだが、実はこれ、ジュリアスのでっち上げだった(笑)。僕は後年39歳でヴェネチアに行ったとき、水上タクシーでわざわざ「ため息の橋」の下を通って(ただ見上げるだけだったけれど)感激したことを今でも思い出すが、その元となるエピソードが“スリ”の“ホラ”だったと知って、軽いめまいを覚えてしまった。
けれどこれは一人歩きをしてしまうほどロマンチックなエピソードだったという証でもある。そのうち「ため息の橋」の言い伝えだけが残って、この映画のことを知る人はいなくなるのかも知れない。
今となっては映画の持つ不遇な運命をも感じる1本だった。
16歳のkenさんは、なかなかうまいこと言いますね!栴檀は双葉より芳し、そう、ダイアン・レインもまさにそんな少女でした。長い付き合いになったもんだ、と考えるときにいい気分になれる数少ない女優さんですね。
私も久々に本作見返したくなりました。
by satoco (2010-12-07 18:46)
ダイアン・レインは
「オレの映画人生もなかなかのもんだったな」、
と思わせてくれる人です。
改めて観ると、こんなに可愛かったのかと、驚くと思いますよ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-12-08 13:18)