ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない [2010年 レビュー]
「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」(2009年・日本) 監督:佐藤祐市
2ちゃんねるのスレッドから生まれた作品。
ここで言う「ブラック会社」とはネット上のスラングで、「待遇が劣悪な会社」という意味なのだそうだ。またの名をブラック企業。僕はその意味を今日まで知らなかった。
主人公の大根田真男(小池徹平)は高校中退の中卒でニートだったが、母親の死をきっかけに就職を決意。そこで奮起し基本情報技術者試験(FE)の国家試験を取るも、学歴が響いて入社試験はことごとく落ちまくっていた。
そんな中、ある一社が採用してくれたのだが、その会社は仕事の出来ないリーダー(品川祐)、空気の読めないガンダムオタク(池田鉄洋)、仕事は出来るが究極の引っ込み思案(中村靖日)、社長とデキている経理など、社員構成からして最悪のブラック会社。しかも“マ男”と呼ばれるようになった真男は入社早々徹夜仕事をさせられる…。
テレビ業界にも似たようなハナシはゴマンとある。
僕が知る中で一番のケッサクは、番組制作会社に就職の決まった新人が、出社1日目ということでスーツを着て会社に言ったら、その日から5日間家に帰れず、スーツ姿のままAD業務に奔走し、いつの間にか「スーツ」というあだ名が付いていた、というハナシ。
学歴社会から脱落した若者は、うまく就職できたとしても気合と根性で仕事をする羽目になる。27年前の僕もその一人だったので仕事の形態は違うものの、マ男にはすんなり感情移入出来た。ちなみに僕のキャリアで一番最悪な仕事は、年末から元旦までの7日間、スタジオにこもりきりで番組の編集に立ち会い、その7日の間に気を失ったことはあっても、寝た記憶がないということだが、まあそれはいい。とにかくこれは現代の「蟹工船」という声もあるようだ。
原作は読んでいないが、マンガ版を斜め読みした。比べると映画版は構成とビジュアルのデフォルメが過ぎる気がする。
原作の良いところはプログラマとしてはど素人のマ男が、2週間後に納期が迫る仕事を入社日に無理やり押し付けられ、いくつもの障害を乗り越えてながら完成に向かうという“縦軸”がしっかりしていて、マ男に軸足が乗った描写になっているからとても読み易い。しかし映画版はマ男以外のキャラクター描写に時間をかけ過ぎていて、散漫になっている気がしないでもない。
それでも観ていられるのは、社会の最下層で生きる労働者の生き様がなかなか面白いからだ。面白いイコール共感できる、ということでもある。不思議なもので日本の大概の企業には、①ロクに仕事をしない上司、②空気を読めない同期、③個人的感情に支配される経理、といった新人から見ると「お荷物」でしかない社員がゴマンといる。ところが入社から何年も経つと、自分がそのどれかに当てはまっているケースがあるから、このドラマは面白いのだ。
ドラマのゴールはありきたりで感動は薄いけれど、若者に向けてのメッセージとしては悪くない。
「どうせバカなんだから、四の五の言わずに死ぬ気で働け」
死ぬ気で働いたら、周囲は中卒や高卒の声にも耳を貸すだろう。学歴社会から脱落しても、それで人生の落伍者になるわけじゃないのだ。そして。
「その気になればいつからでもやり直すことが出来る」
こんなメッセージも込められていることだろう。その志は悪くない。
2ちゃんねるのスレッドから生まれた作品。
ここで言う「ブラック会社」とはネット上のスラングで、「待遇が劣悪な会社」という意味なのだそうだ。またの名をブラック企業。僕はその意味を今日まで知らなかった。
主人公の大根田真男(小池徹平)は高校中退の中卒でニートだったが、母親の死をきっかけに就職を決意。そこで奮起し基本情報技術者試験(FE)の国家試験を取るも、学歴が響いて入社試験はことごとく落ちまくっていた。
そんな中、ある一社が採用してくれたのだが、その会社は仕事の出来ないリーダー(品川祐)、空気の読めないガンダムオタク(池田鉄洋)、仕事は出来るが究極の引っ込み思案(中村靖日)、社長とデキている経理など、社員構成からして最悪のブラック会社。しかも“マ男”と呼ばれるようになった真男は入社早々徹夜仕事をさせられる…。
テレビ業界にも似たようなハナシはゴマンとある。
僕が知る中で一番のケッサクは、番組制作会社に就職の決まった新人が、出社1日目ということでスーツを着て会社に言ったら、その日から5日間家に帰れず、スーツ姿のままAD業務に奔走し、いつの間にか「スーツ」というあだ名が付いていた、というハナシ。
学歴社会から脱落した若者は、うまく就職できたとしても気合と根性で仕事をする羽目になる。27年前の僕もその一人だったので仕事の形態は違うものの、マ男にはすんなり感情移入出来た。ちなみに僕のキャリアで一番最悪な仕事は、年末から元旦までの7日間、スタジオにこもりきりで番組の編集に立ち会い、その7日の間に気を失ったことはあっても、寝た記憶がないということだが、まあそれはいい。とにかくこれは現代の「蟹工船」という声もあるようだ。
原作は読んでいないが、マンガ版を斜め読みした。比べると映画版は構成とビジュアルのデフォルメが過ぎる気がする。
原作の良いところはプログラマとしてはど素人のマ男が、2週間後に納期が迫る仕事を入社日に無理やり押し付けられ、いくつもの障害を乗り越えてながら完成に向かうという“縦軸”がしっかりしていて、マ男に軸足が乗った描写になっているからとても読み易い。しかし映画版はマ男以外のキャラクター描写に時間をかけ過ぎていて、散漫になっている気がしないでもない。
それでも観ていられるのは、社会の最下層で生きる労働者の生き様がなかなか面白いからだ。面白いイコール共感できる、ということでもある。不思議なもので日本の大概の企業には、①ロクに仕事をしない上司、②空気を読めない同期、③個人的感情に支配される経理、といった新人から見ると「お荷物」でしかない社員がゴマンといる。ところが入社から何年も経つと、自分がそのどれかに当てはまっているケースがあるから、このドラマは面白いのだ。
ドラマのゴールはありきたりで感動は薄いけれど、若者に向けてのメッセージとしては悪くない。
「どうせバカなんだから、四の五の言わずに死ぬ気で働け」
死ぬ気で働いたら、周囲は中卒や高卒の声にも耳を貸すだろう。学歴社会から脱落しても、それで人生の落伍者になるわけじゃないのだ。そして。
「その気になればいつからでもやり直すことが出来る」
こんなメッセージも込められていることだろう。その志は悪くない。
ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない [DVD]
- 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
- メディア: DVD
ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない (新潮文庫)
- 作者: 黒井 勇人
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/09/29
- メディア: 文庫
いますよねえ、そういう面々・・(笑)
多くの人が、「自分はブラック会社に勤めている」と思ってるような気がします。漫画の方がカタルシスが味わえそうですね。
仕事をする、働く、ということについていろいろ考えさせられました。
どういう環境であれ、結局、一所懸命にするということしかないのかなあ・・と、思ったりします。
by Sho (2010-12-18 09:28)
そうなんです。結局は自分を偽ることなく働くしかないのです。
そのために環境を変える必要はあるかもしれませんね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-12-18 13:19)
こんにちは。
「ブラック会社」ってそういう意味だったんですか。おもしろいですね~。
この映画、筋書きがマンガにピッタシという感じがします。
映画は小池徹平がかわいいので、ちょっと観てみたいかな。
by coco030705 (2010-12-24 16:40)
小池徹平よかったですよ。
僕は「意外と芝居うまいじゃん」と思っちゃいましたw
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-12-25 16:45)
多分見ていた人のほぼ100パーセントが自分の労働環境に思いを馳せていた作品ですね。私もそうでしたが...仕事の場ってドラマの宝庫ですね。そのワリには今まで仕事がテーマの映画がそんなに面白かった記憶がないのですが、極端なテーマの本作の方が共感度が高いというのがなんだか切ないです。
by satoco (2010-12-29 02:15)
社内の微妙な人間関係って確かにおもしろいと思いますが
描写するにはかなり腕のいるテーマなのでしょう。
たとえば「白い巨塔」も「クライマーズ・ハイ」も「沈まぬ太陽」も組織の話ですが、
何かしらセンセーショナルな事件をベースにしていますもんね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2010-12-29 16:47)