ステキな金縛り(2011年・日本) [2011年 レビュー]
監督と脚本:三谷幸喜 主演:深津絵里、西田敏行
本としては文句無く面白いと思う。
どうしてこの人はこんなことを思いついちゃうんだろう、と嫉妬心を覚える脚本家は大勢いると思う。ただし映画を観てホッとする監督もいるはずだ。
「監督としての力はやっぱりそれほどでもないな」
そうなのだ。脚本の力が100点を越えて120点あったとしても、映像の力は30点ほどしかないのだ。だから映画としての出来映えは75点ということになってしまう。エンドクレジットを観ながら僕が最初に思ったのは、「これを別の監督が撮ったら、どうだったかなあ」だった。
失態続きの三流弁護士エミ(深津絵里)は、ある殺人事件を担当することになる。資産家の妻殺しの容疑をかけられた男(KAN)には本人曰くアリバイがあった。男は妻が殺された当日旅館の一室で金縛りに遭っていたのだと言う。無実を証明出来るのは、男に一晩中のしかかっていた落ち武者(西田敏行)の幽霊だけだった…。
三谷さんの監督としてのセンスに「?」が出たのは一番最初の見せ場、落ち武者・西田敏行登場のシーンだ。観客は笑う気満々で待っている。こんなタイトルでこんな設定にした以上、落ち武者登場シーンのハードルが上がるのは監督自身覚悟していたと思う。ホームランは難しかろう。しかしここでは確実にランナーを返すバッティングが必要だった。ところが結果はゲッツー崩れの1点である。笑えはした。でも画角もメイクも照明もタイミングも間も、何もかもがちょっと違うのだ。かといって今の僕にも正解は分からない。ただ観客としてもっと笑いたかったのだけは紛れもない事実だ。
そもそも西田さんの落ち武者は出オチである。
仮にドカンと笑いが取れていたとしても、そこから高い位置で笑いをキープするのは相当骨の折れる作業だ。それでも三谷さんは頑張っていた。あの世とこの世を繋ぐためのハーモニカだったり、亡くなった動物を連れて来てみたり、とにかくいろんな“仕掛け”を用意していて、苦心の跡は見て取れた。けれど僕が一番驚いたのは「ブスも3日で慣れる」ならぬ、「落ち武者も30分で慣れる」だった。有り得ないはずのことが起きても、それが恒常化してしまうと、単なる“日常”になってしまう怖さ。つまり時間が経つに従って、落ち武者西田は他の登場人物と横並びになってしまうのだ。
これが本と違う映像の怖さである。意外とこの本は舞台向きだったのかも知れない。
本作がイマイチなのはもうひとつ理由がある。キャスティングだ。
大ヒットした過去2作「THE有頂天ホテル」と「ザ・マジックアワー」は役所広司と佐藤浩市という、どちらかというとコメディには縁遠い役者が主演を務めていたからこそ、その意外性で笑えるシーンが多々あった。しかし西田さんは日本を代表する喜劇俳優である。このキャスティングには何の意外性もないのだ。
はまるかどうかは別だが、例えば中井貴一や阿部寛が落ち武者役をやっていたら、これは相当なインパクトだったと思う。そんな配役で別の監督だったら…とやはり思わずにはいられない「あんまりステキじゃない金縛り」だった。
細かい所は面白いです。 俳優はみなさんうまいですし。
深津絵里はいいのですが、西田敏行はちょっと苦手かも。
中井貴一は良かったですね。かっこよくて笑いも取るという俳優にとってはやりがいのある役です。
細かい所は面白くて飽きずに見れるのですが、大きい筋が通って無い感じ
なんですよね。
それは前作「ザ・マジック・アワー」もそうでした。
それにやっぱり2時間20分は長い。
「有頂天ホテル」は好きでしたが、やはり私は「みんなのいえ」が一番好きかなあ。
キャプラの映画にこだわる小日向文世の役がちょっと面白かったです。
by きさ (2011-12-26 23:29)
僕は深津絵里が思いのほか可愛く撮れてないのが残念でした。
nice!ありがとうございます。
by ken (2011-12-30 17:02)