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ALWAYS 三丁目の夕日’64(2011年・日本) [2012年 レビュー]

監督・VFX:山崎貴 脚本:古沢良太、山崎貴

 シリーズ3作目にして3D作品。
 これを「惰性」と見るか、「待望」と思うかは観客の自由だけれど、目新しさに欠けるのは紛れもない事実。だから3Dという技術に頼ったんだろう、とはあくまでも僕の個人的な推測。
 僕はこのシリーズをまったく否定しない。
 舞台設定はよく出来ているし、デジタル技術の良い使い道を示した好例だとも思っている。しかも今回の1964年(昭和39年)は僕が生まれた翌年でもある。大きな波風の立たない、そして悪人も出て来ない“べた凪”映画を好む者としては、まさに待望の最新作だった。

 第一印象。「優等生」
 とにかく全方位に注意を払ったそつのない、そして抜け目ない脚本だったと思う。僕は途中「ピクサー映画に似てるな」と思った。それくらい誰からも嫌われない優等生な脚本だった。いや、へそ曲がりってどこにでもいるから、そういう人からは「面白くも何ともない」と言われる可能性はある。だって「フツーのハナシ」だから。でも「三丁目の夕日」を「ハナシがフツーだから面白くない」と言う人がいたら、そんな人は相手にしなくていい。「フツーのハナシを面白くすることがどれほど難しいか」なんてきっと分からないと思うから。

 今から6年前。1作目が公開されたときに僕は大ヒットの要因について「記憶のゆりかごに身を任せられる心地良さ」と書いた。人にとって一番幸せな時代は、誰かの子どもでいられた時代である。社会的責任を負うでなく、家族の愛情に包まれて、言うなら相当のん気に暮らしているのだ。そんな心地よさを追体験出来るのだから、ヒットしないわけが無い。
 そしていよいよ本作でのテーマは「巣立ち」である。

 鈴木オートの六子(堀北真希)と、茶川家で暮らす淳之介(須賀健太)の2人が、「誰かの子どもでいられた時代」を終えて、いよいよ巣立ちのときを迎える。間違いなく多くの観客が自身の巣立ちと重ねると思う。そうなったらもう後半はだだ泣きである。展開は確実に読めているのにそれでも泣けるのだ。僕は自分と比べて劇中の俳優たちがいまいち泣いていないことに、ちょっとカチンと来るくらい泣いてしまった。
 もっと泣けよ、堤真一(笑)。

 ちょっと冷静に振り返ってみる。
 3D効果は正直言って薄かった。別に2Dで観てもいい。
 ただし。オープニングでタイトルが出るカットだけは秀逸だった。東京タワーを真俯瞰から捉えたCG映像。このワンカットを観るためだけに3Dの追加料金を払う価値はあったと思う。3Dの「飛び出し」と「奥行き」の両方を満足させる素晴らしいワンカット。

 俳優たちの中で、役が熟している感じも受けた。
 長く一つの役をやれる喜びと、同じキャストで続けられる安心感とでも言おうか。昔で言うところの「男はつらいよ」のようなファミリー感に満ち溢れていたように思う。絵には現れない役者同士の信頼感がこの作品を温かなものにしているのは間違いない。
 ついでにひとつ。今回一番驚いたのは堀北真希の成長。いつのまにこんなにキレイになったのやら。

 さてこのシリーズはどこまで行くだろう。
 僕は70年代に入ったら、この作品の味はなくなると思う。だからやるとすればビートルズが来日した66年と、大阪万博の70年。最大この2本で打ち止めがいいと思う。…と言うのは簡単だけれど、どんなドラマにするかは難しい。1作目の公開から6年経ち、今回はこの6年間に自生した“物語”を刈り取った形になってしまったからだ。
 さてどうなることやら。あまり期待しないで待っててみよう。

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コメント 5

きさ

原作を読んでいるので、1作目の最初の方はちょっと違和感がありました。
三作目ともなると安心して見ていられますね。
今回も面白かったです。子役が大きくなっていてびっくり。
須賀健太くんちょっと松田龍平に似てきてません?
おなじみの配役も楽しいですが、森山未來、大森南朋といった新メンバーも良かったです。
こうなれば4作目も見たい気がします。ビートルズが来日の年という手がありましたか。
70年万博編もいいですね。「クレしん オトナ帝国の逆襲」ですね。

by きさ (2012-03-03 09:33) 

ken

ビートルズ来日と勝手に書きましたが、扱い方によっては莫大なライツフィーを
払うことになるでしょうから、実現しない可能性は大ですね。
70年万博は、山田洋次監督の「家族」を思い出します。
nice!ありがとうございます。

by ken (2012-03-03 09:44) 

きさ

山崎監督はクレしんの戦国大合戦をリメイクしたくらいなので、70年万博を題材にするなら「クレしん オトナ帝国の逆襲」は意識するでしょうね。
その前にもう1作と語っているとので時代的にはビートルズかも。
ビートルズを遠景にするくらいならそこまでお金かからないかな。

by きさ (2012-03-03 21:32) 

midori

先日2Dで観て泣いて、
やっぱり映画館でしか3Dは観られない
(私宅の貧しい映像環境では)から、
3Dも観に行きました。
3Dにする意味の無さを指摘する意見は多く聞いていましたが、
2Dを先に観た人間には、3Dの有難さが身に沁みました。
ありとあらゆるところが立体で、
「おおおっ」という感じで堪能しましたよ。
ちょっとクサイけど、良い話でしたねぇ。。。しみじみ
by midori (2012-03-21 12:49) 

ken

そうでしたか。2Dを先に見ると、3Dのありがたさが身に沁みる…なるほど。
3D→2Dはあっても、逆の経験はなかったなあ。もし機会があったら試してみます。
そしてストーリー。
現代の設定でこのクサさは通用しないけど、「三丁目の夕日」だから許されるところは確実にありますよね。
だから素直に泣けるのかも。
nice!ありがとうございます。
by ken (2012-03-21 13:12) 

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