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もうひとりの息子(2012年・フランス) [2012年 レビュー]

原題:The Other Son
監督:脚本:ロレーヌ・レヴィ

 第25回東京国際映画祭、東京サクラグランプリ作品
 本題に入る前に、
このグランプリ名。そもそも「サクラ」はいらないと思うんだけど、百歩譲ってもイベント開催は秋。なのになぜ「サクラ」なのよと思う秋なんだから「イチョウ(そもそも東京都の木だ)」とか、「モミジ」とか、「焼き芋」とか季語は沢山あるわけで、でも「秋の季語は座りが悪いなあ」ってなるなら「サクラ」だって止めちゃえばいいじゃない。
 これと同じでイラッとするのが、国内の空港名。「徳島阿波踊り空港」とか「高知龍馬空港」とか「たんちょう釧路空港」とか、なんで一枚乗っけちゃうのよ。そんな情報いらないでしょ。
 …というわけで、今年の「東京サクラグランプリ」作品は、フランスの小品でした。

 兵役用健康検査の結果、両親の実子でないことを知ったイスラエルの青年。出生の際の手違いが明らかになり、やがてイスラエルとパレスチナふたつの家庭のアイデンティティと信念が大きく揺さぶられる事態に発展する。根深い憎しみからの解放を巡る感動のドラマ。

 公式サイトの作品解説を引用させてもらいましたちなみに僕がTIFFの場合に限って解説を引用するのは、作品は沢山あるものの、少ない情報の中から何に引っ掛かって観ることにしたか、を記録するためでもあります。読者の皆さまに至っては「この解説で自分なら観ようと思うか」など考えて頂ければ善いかと思います)。
 さて本題。

 ドラマの設定として「出生時に入れ替わった2人の赤ん坊」は決して目新しくはないんだけど、だからこそ「どうして誰もこの設定をイスラエルとパレスチナに置かなかったのか」と言いたくなるくらい、いい着眼点だったと思います。ただそれだけでなくドラマのとしての落とし込みが実に巧かった。審査員が「グランプリに相応しい」と判断したのも、脚本の力が大きかったと思います。

 当然ですが最低限の中東事情を把握していないと、このドラマは理解出来ません。
 イスラエルとパレスチナ。互いの言い分が理解出来ていると、本作の展開には胸を打たれるはずです。
監督のロレーヌ・レヴィ紛争は相手の立場を理解しようとしない愚者の行為」と喝破しつつ、具体的なエピソードについては丁寧な筆致で実に優しく描いています。
ゼッタイにあり得ないことが起きたことによって、互いの立場を超えて徐々に歩み寄る2の家族と当事者の2人。特に互いの家族がよそよそしくしている間に、当人同士が早々と意気投合する辺りが、いかにも現代的で面白い。この2人の距離感こそがパレスチナ問題解決の糸口なのではないかと思えるほどでした。

 俳優は皆素晴らしくて、とても良くまとめられた作品だと思います。
 ただし、こんなにこじんまりとした作品が今年のグランプリで良かったのかどうかは疑問。それほど今年のTIFFは小粒な作品ばかりだったってことでしょうか?

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coco030705

こんばんは。
おもしろそうですね。公開されたらぜひ観てみたいと思います。
by coco030705 (2012-11-18 21:32) 

ken

TIFFのグランプリと思えば、小ぶりなんですが、そんなこと関係なく観れば、実に良い作品だと思います。
日本で公開されるといいんですけどねえ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2012-11-19 10:56) 

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