ピラミッド 5000年の嘘(2010年・フランス) [2013年 レビュー]
原題:LA REVELATION DES PYRAMIDES
監督・脚本:パトリス・プーヤール
「5000年の嘘」とはなんとも派手なタイトルである。原題は「ピラミッドの暴露」。
邦題を聞いたとき、5000年もの間、ピラミッドのことについて誰がウソをついてきたのだろう、と思ってしまった。そもそも何が本当で何がウソなのかすら分からないのに。
ギザの三大ピラミッドを実際に見たことがあるかないかで、関心の度合いも違うと思う。この映画がアメリカではなく、フランスで作られたのも、ピラミッドとの距離感によるところが大きい。幸いなことに僕は一度だけピラミッドを見たことがある(正しくは一度ではなく、5日間あらゆる角度から見続けたのだけれど)。そして見れば誰もが同じ疑問に行き当たるのだ。
「誰が、何のために、どうやって、この巨大建造物を建てたのか?」
一般的に知られる仮説は王の墓である。それをエジプトの民が(建築方法は謎だが)20年で完成させたということになっている。本編の「5000年の嘘」は、この定説にかかっていると言っていい。
僕は元エジプト考古庁長官のザヒ・ハワス博士が、クフ王のピラミッドは「クフ王の墓」であると信じて、中からクフ王のミイラを発見することに情熱を燃やしていたことを知っている。
しかしこの映画は王墓説を完全に否定している。
ではピラミッドの正体をなんと説いているのかというと、それについては何も無いのだ。
何を隠そうこの映画は、広く知られた仮説を否定しながら、しかしそれに代わる新説を提示しないという、なんともおかしな映画なのである。
いささか強引な事実関係の提示はある。
そのひとつが「赤道と同じ長さで、30度傾いている幅およそ100キロの円周上に、数多くの遺跡が並んでいる」というもの。
ナスカ、マチュピチュ、クスコ、ペトラ、モヘンジョ・ダロ、スコータイ、アンコールワット、イースター島。これらはそれぞれの位置が黄金律と関係していて、ピラミッドの2辺の和は自転速度に等しいなどなど。
映画では何を言わんとしているかというと、「地上から消えた古代文明の警告」らしい。じゃあその「警告」とは何なのか。それは教えてくれない。本編ナレーションに「疑問だらけでめまいを覚える」とあるのだけれど、「疑問を解決してから映画にしてくれ!」と思ったのは僕だけだろうか。
そもそもナレーションの情報量が多すぎて、字幕についていくのが精一杯。画を見る余裕はほとんどなく、突飛なハナシを理解する暇もない。
近年観終わったあとに、これほど「で、なんだったの?」と思った映画もなかった。
ただただ疑問と疲労が残るだけ。回避が賢明。
とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
by 添え状の見本 (2013-06-16 10:26)
おまちしております!
ってレスが9ヶ月後になっちゃってスイマセン。
by ken (2014-03-05 01:17)