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ハワイの若大将(1963年・日本) [2015年 レビュー]

監督:福田純
脚本:笠原良三、田波靖男

 僕にとってのハワイは近いようで遠い。
 初めてのハワイは多分21歳のとき。正月に社員旅行で行った。初めての海外旅行。チェックイン後オーシャンフロントの部屋から見たワイキキビーチの青さに心が震えた記憶がある。
 2度目は多分32歳くらいのとき。これも社員旅行(会社は違う)。ハイアットのそこそこの階に泊まって、まずまずの思いはしたと思うけれど、あまり印象に残っていない。ああ、2度ゴルフしたか。オアフ島はこの2回しか行っていないはず。
 3度目のハワイは新婚旅行のハワイ島。…とハワイは多分これっきりなのだ。その理由は、のちにグアム、サイパン、沖縄の方が海は何倍も綺麗だってことを知り、「ハワイに行く意味」を見い出せなかったことが一番。それと日本人向けのショップやレストランがわんさかあって、ハワイは外国に来た気がしない、というのも大きかった。そうか。だから僕は開発が進んでいない南の島然としたハワイの映像に惹かれるのだな。いいことに気が付いた。本作「ハワイの若大将」を観ようと思ったのも結局はそういうことなのだ。

 若大将シリーズそのものが初見。
 加山さん、若い!細い!歌うまい!セリフ棒読み!(笑)。でも加山さんの棒読みセリフこそが本作最大の“味わい”である。セリフが棒読みであるが故に若大将は「うすらバカ」にしか見えないのだが、うすらバカだからこそ、澄ちゃん(星由里子)にヨットを破壊されても修理代を請求せず、青大将(田中邦衛)に頼まれるがままカンニングをさせて共々停学処分となり、ハワイでは現金やパスポートの入ったバックを紛失し、やはり頼まれるままに青大将の恋心を澄ちゃんに伝えて話がややこしくなるのである。
 つまり、こんなドラマが展開できるのも、そしてそれが許されるのも、若大将がうすらバカに見えるからであって、それはひとえに加山さんの棒読みセリフあってこそ、というワケなのだ。
 個人的には芝居の“間”がないところも気に入った。それはまるでB級カンフー映画で繰り広げられる演武のような対決に等しい。そのため加山さんと“組手”をする相手の役者も、間を排除した芝居を強要されるところが可笑しくて仕方なかった。唯一その間に惑われていないのが田中邦衛さんだ。だから2人の芝居は噛み合っているようで実は噛み合ってなく、若大将と青大将の微妙な関係性を表現するのに役立っているように見えた。

 それにしても、今は見る影もないハワイのロケーションは見ものである。聞けばサイパンでロケをした「南太平洋の若大将」という作品もあるらしい。サイパンには少なからず思い入れがあるので機会があれば観てみたい。

ハワイの若大将 [東宝DVDシネマファンクラブ]

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  • 出版社/メーカー: 東宝
  • メディア: DVD

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コメント 3

Sho

いやあ、やっぱりkenさんのレビューはいいです。
朝から笑わせていただきました(笑)。
なんといっても、
>セリフが棒読みであるが故に若大将は「うすらバカ」にしか見えないのだが
ここ(笑)。
そしてそこからの解説が、なるほどなるほどで、深く納得しました。
この「時代」そのものを見たいなあとよく思うので、興味を惹かれました。
by Sho (2015-04-25 07:41) 

うつぼ

今の散歩番組でも棒読みですから、もう才能ですね。(笑)

kenさんの文章だけでもう目に浮かぶというかなんというか。
こうやって景色と共演者を巻き込んで素晴らしい作品に仕立てる最大の
貢献者が若大将。。。 一度見てみようかなー。
by うつぼ (2015-04-25 10:16) 

ken

>Shoさん
うすらバカとはいろんな解釈があるんですけど、僕の場合は「うっすらとしたバカ」という意味で使わせて頂いています。
60年代の日本映画はトリッキーな作品が多いので、オススメですよ。

>うつぼさん
そうそう。この手の映画って基本「巻き込み型」なんですよね。
寅さんしかり、駅前社長しかり、王道のパターン。
なんだか他の作品が観たくなって仕方ない今日この頃ですw
by ken (2015-04-26 09:27) 

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