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殺人の告白(2012年・韓国) [2015年 レビュー]

英題:CONFESSION OF MURDER
監督・脚本:チョン・ビョンギル

 実際の未解決事件をモチーフにした韓国映画の傑作『殺人の追憶』を観た監督が、「時効成立後に犯人が名乗り出たらどうなるのか?」と考えたところからスタートしたというクライム・サスペンス。ドラマとしての面白さ以前に、犯人役を演じたパク・シフが美しすぎて片時も目を離せない作品だった。

 15年前。刑事のチェ・ヒョング(チョン・ジェヨン)は偶然、連続殺人犯に遭遇。拘束を試みるが既のところで取り逃す。その後、懸命の捜査にも関わらず時効が成立。喪失感を抱くチェに追い打ちをかけるニュースが飛び込んできた。法的に無罪となった犯人が手記を出版するというのだ。これには遺族もマスコミも激しい批判を展開するが、犯人イ・ドゥソク(パク・シフ)が会見を開くと世論に歪みが生じ始める。まるでモデルのように美しいルックスをしていたからだ。

 2012年の映画ではあるけれど2015年に観たため、序盤はどうしても「神戸連続殺傷事件」の犯人、元少年Aが6月に発表した手記を思い出さずにはいられなかった。
 元少年Aの手記について、日本のメディアは「遺族感情を無視した独り善がりな行動で、全く許されるものではない」という批判を展開した。この批判そのものは“本題の前提”としてはあっていい。しかし肝心の「厚生プログラムを終えて社会復帰した元少年Aが、手記で発信したかったメッセージは何かを探る」という仕事は放棄していたように思う。恐らくマスコミ各社は「この手記について正面から向き合うことは賢明ではない」と判断したのだろう。なぜならそれはかなりの労力を必要とする仕事であり(そもそも本を読まなきゃならない)、かつ検証行為そのものが「被害者感情を無視している」と批判されることを恐れたのだろう。だからマスコミは批判の矛先を元少年Aから出版社に向け、「世間の逆風は想定内であったはず。それを承知で出版した理由は何なのか」という議論に終始した。早い話が日本のマスコミは元少年Aから“逃げた”のである。
 『殺人の告白』では犯人の倫理観を問うため、自社の報道番組に出演をさせようとするテレビマンが登場する(本作において最も重要な設定のひとつ)。ここにリアリティを感じられなければ本作への感情移入は難しい。僕は韓国のメディアなら元少年Aもテレビの前に引きずり出すかもしれないな、と思いながら見ていた。韓国には逮捕された容疑者への取材を許す警察、容赦ない質問を浴びせるメディア、またそれも禊ぎの一種と捉える視聴者が存在するからである。だから僕は本作の設定にリアリティを感じたし、脚本そのものは面白いと思った。
 ただし「見せる」ことにこだわったいくつかのアクションシークエンスは「ありえない」と呆れた。商業映画であるから否定はしなけれど、ドラマ部分がとても良く出来ていただけに、個人的には「もったいない」と思った。
 またクライマックスについても(ネタバレになるのでディテールは割愛)、カタルシスを演出するために止むを得ないこととはいえ、演出過多であった気がしてならない。

 それにしてもこの映画は、パク・シフのビジュアルによって支えられていたように思う。対する刑事役にチョン・ジェヨンという武骨な役者を置いたことも効いている。
 韓国映画界の世代交代を感じさせる1本。


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