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鈴木雅明展 -Untitled 2008- [アートの祭り]

 Bunkamura Galleryで今日(11月19日)から始まった鈴木雅明氏の個展に行く。

 シンワアートオークションの図録で見かけた「Work」という作品が一発で刺さり、ぜひ他の作品も観てみたいと思ったからだ。
 しかも初日の午前中。
 これは「本当に欲しければ初日に行かないといい絵は売れてしまう」と物の本で読んだから。正直、価格によっては買おうと思って乗り込んだのだが、僕の予算は軽くオーバーしていた。残念だった。金銭的に余裕があれば買いたい絵は確かにあった。

 それでも僕は、「買う気」でギャラリーに乗り込む面白さを存分に味あわせてもらった。
 冷やかしじゃない客はスタッフも分かるのか(客が僕一人だったというのはあるけれど)、僕が声をかける前に話しかけてくれ、いくつかの質問に答えてくれた。
 買えない以上、絵はギャラリーでひたすら眺めるしかなく、早々に帰るのも惜しかった僕は過去作品のファイルを見つけ、腰掛けてそれを眺めていた。
 やがて。
 僕はスタッフから鈴木雅明氏を紹介された。
 「あのー、鈴木です」
 あまりに突然で驚いた。と同時に小山登美夫氏が著書で書いていたことを思い出した。

 「ギャラリーには、アーティストと直接会えるというメリットもある。ギャラリーで作品を見て、アーティストに興味を持ったとしたら、その作家の新作展が行われる時期をチェックして、オープニングの日に足を運べば、そこには必ずアーティスト本人がいて、誰でも自由に会うことが出来る。(中略) 新作を出したアーティストというのは誰でも不安なもので、新作の手応えやコレクターの感想を確認したい思いがあるから、きっと会話にも応じてくれるはずだ」(小山登美夫著「その絵、いくら?」より)

 1981年生まれの27歳。一目見て好青年だと思った。
 僕は自分がアートの初心者であることを明かし、「だからこそストーリーをイメージしやすい絵が好きです」と話した。鈴木氏は「僕もそうです」と返してくれた。
 絵を介して人と人が繋がる面白さを知った瞬間だった。
 いくつかの絵を前にしながら、いくつかの話をさせてもらった。そして予算が足りれば買いたかったと正直に話した。
 「いつか一点、買わせてもらいます」
 そういうと氏は喜んでくれた。

 仕事の時間が迫っていた。
 後ろ髪を引かれる思いで、ギャラリーをあとにした。

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現代アートにはまる。 [アートの祭り]

 昨年からアートにはまっている。
 それも、現代アート(コンテンポラリーアート)と言われるジャンルのものだ。
 きっかけは、村上隆。
 彼を忌み嫌う人たちは沢山いるけれど、僕は「芸術企業論」を読んで、
 「この人は優れたアーティストであると同時に、素晴らしいプロデューサーなんだな」
 と知って感動したのがすべてのはじまり。

芸術起業論

芸術起業論

  • 作者: 村上 隆
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 単行本

 彼を嫌う人も同じポイントでスイッチが入るらしい。ただし文言は若干変化する。
 「彼はアーティストである前に、商売人である」
 文言は、翻訳を間違えたらこうなった、と言う程度の誤差だが主張は大きく異なる。
 僕の周りにも「オタクの等身大フィギュアがどうして16億円もするんだ」と言う人がいる。
 確かに僕もそう思う。
 そう思ったからいろんな本を読んで、いろんなアートを観てたら、はまってしまった。
 自分で「16億円」の意味を調べない人は、いつまでたっても「なんでなんだ」と怒ってる。別に彼らに何の危害も加えていないし、何の損失も与えたわけでもないのに。
 そういう人たちは大抵の場合、村上隆が16億円をまるまる儲けたと思っている。
 違います。
 村上隆の懐には1円たりとも入っていない。
 あれは「マイ・ロンサム・カウボーイ」という村上作品を持っていた人が売りに出し、オークションの結果別の人が16億円で買った、というニュースなのだ。
 そんなことを知らない人も、あるいは知ってる人も、村上隆を悪く言う人たちの根底にあるものは、なんだかんだ言っても結局「うまいことやりやがって」という妬みじゃないかと思う。

 さて、そんな僕が勉強のためにと思って読んだ中で面白かったのはまずコレ。

日本人は世界一間抜けな美術品コレクター (Kobunsha Paperbacks 121)

日本人は世界一間抜けな美術品コレクター (Kobunsha Paperbacks 121)

  • 作者: 新美康明
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2008/06/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 いいタイトルですよね。素晴らしい(笑)。
 著者の新美さんはギャラリスト、いわゆる画商さんです。この人は村上隆“否定派”なんだけど、書いてある中身は相当面白いです。
 バブル時代、バカみたいな金額でアートを買った日本企業をこき下ろしつつ、日本人のアートを見る目の無さを嘆いています。
 また、日本には沢山の美術館がありながら、なぜルーブルやMOMA(ニューヨーク近代美術館)のような世界中から観光客が押し寄せる美術館がないのか、その理由も明かしています。基本「日本人は間抜け」路線ですけど(笑)。
 その一方でアートに触れる喜びを初心者に説いてますから、「なんとなくアートって好きだな」って人には、たまならい読み物になっています。
 僕が一番感心したのは現代アートの見方が分からないという人に対する新美さんのアドバイス。
 「じゃあネクタイはどうやって選んでますか?その1本を選んだ理由を明確に言えますか?」
 数あるネクタイの中から選んだ1本だけど、言われてみれば大した理由なんてなかったりする。
 「なんとなく気に入った」
 初心者はそれでいいんだ、と言っています。納得。

 もう1冊は「奈良美智、村上隆を世に送り出した」と必ず紹介されるギャラリスト、小山登美夫さんの著作。

その絵、いくら? 現代アートの相場がわかる (セオリーBOOKS)

その絵、いくら? 現代アートの相場がわかる (セオリーBOOKS)

  • 作者: 小山 登美夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/08/06
  • メディア: 単行本


 タイトル通り、アートの価格に関するさまざまな“謎”が明らかになります。
 アートの価格はいかにして決められるのか?
 日本人はなぜアートを高いと思っているのか?
 現代アートは投資の対象になるのか?
 などなど。
 
 これらの本を読んで僕は「結局一度は買ってみないとアートの本質は分からないな」と思いました。
 金額の大小にかかわらず、完全に「買う気」で挑まないと、真剣にアートを吟味出来ないような気がしたからです。
 そんなわけで僕は、アートを1点買うことにしました。
 「何か買おう」と思って探し始めたら、実に面白いことが分かってきました。
 
 この続きはまた今度。


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