シュリ [2005年 レビュー]
「シュリ」(1999年:韓国) 監督・脚本:カン・ジェギュ 主演:ハン・ソッキュ
まさかと思いますが、韓流ブームに乗ってる人たちでこの映画を観ていない人いませんよね?。これを観ずして韓国映画を語る人がいたら、その人は完全なるモグリです。もしそんな人があなたの周りにいたら「シュリ観てない人が韓国映画語らないでよ!」と言っちゃいましょう。僕が許します(笑)。「シュリ」はそれくらい重要な作品なのです。
ではどういう意味で重要なのか一応説明しておきましょう。まずはこのデータを見て下さい。韓国での歴代興行成績ランキング(2005年10月末現在)です。
1位 | ブラザーフッド | 2004年 | 1174万人 |
2位 | シルミド | 2003年 | 1108万人 |
3位 | 友へ チング | 2001年 | 818万人 |
4位 | Welcome to Dongmakgol | 2005年 | 640万人 |
5位 | シュリ | 1999年 | 621万人 |
6位 | 共同警備区域 JSA | 2000年 | 583万人 |
7位 | 殺人の追憶 | 2003年 | 530万人 |
8位 | 家門の危機 | 2005年 | 530万人 |
9位 | 花嫁はギャングスター | 2001年 | 525万人 |
10位 | 家門の光栄 | 2002年 | 520万人 |
もうひとつ興味深いデータは日本で公開された韓国映画の興行成績ベスト10。
1位 | 僕の彼女を紹介します | 2004年 | 20億円 |
2位 | シュリ | 2000年 | 18億円 |
3位 | ブラザーフッド | 2004年 | 15億円 |
4位 | 四月の雪 | 2005年 | 14億円 |
5位 | 共同警備区域 JSA | 2000年 | 11.6億円 |
6位 | ボイス | 2003年 | 10億円 |
7位 | 誰にでも秘密がある | 2004年 | 9億円 |
8位 | スキャンダル | 2004年 | 9億円 |
9位 | シルミド | 2004年 | 6億円 |
10位 | 猟奇的な彼女 | 2003年 | 5億円 |
ここで注目すべきは、「シュリ」以前の作品でランキング入りしている作品がひとつもないという点です。
今現在、レンタルショップで借りられる「シュリ」以前の主な作品は「八月のクリスマス」(1998)、「美術館の隣の動物園」(1998)、「情事」(1998)、「家族シネマ」(1998)、「グリーン・フィッシュ」(1997)、などありますが、「シュリ」より先にこれらの韓国映画を観たという人は極めて少ないはず。つまり「シュリ」とは、日本のみならず世界中に韓国映画の存在をアピールした作品として歴史に名を残す作品なのです。
個人的にはおよそ4年ぶりに観た「シュリ」。衝撃的なストーリー展開でしたから大まかなところは当然記憶していたんですが、それでも充分に面白いです。
もっとも評価できるポイントは“韓国にしか作れない映画”だったこと。
「シュリ」はスパイアクション映画であり、恋愛映画でもあるわけですが、「南北分断」をモチーフにすることでハリウッドでもヨーロッパでもない、純韓国映画に仕上がった。ここが世界的に評価された最大のポイントだったと思います。
南北分断の背景を知ればなお、悲劇の名シーンとなるクライマックスは必見。
二度と有り得ないだろう豪華なキャスティング(ハン・ソッキュ×ソン・ガンホ×チェ・ミンシク)も含めて未見の人は是非、一度観た方もこの5年間の韓流ブームを振り返る意味で久しぶりにご覧になってはいかがでしょうか?
絶対にハズレない韓国映画の傑作です。
エターナル・サンシャイン [2005年 レビュー]
「エターナル・サンシャイン」(2004年・アメリカ) 監督:ミシェル・ゴンドリー
観ている最中に「チャーリー・カウフマンっぽいなあ」と思ったらホントにそうだったので驚いた。
そういえば2004年のアカデミー脚本賞をこの作品で獲ったんだったね。
僕がチャーリー・カウフマンっぽいと思ったのは、「ある特定の記憶だけを選んで消去することが出来る」という架空の技術がこの映画の設定の肝でありながら、無用なツッコミをさせる隙間が寸分も無い脚本だったから。「マルコビッチの穴」もまさにそうでした。
これは「ドラマを作る上で小さな嘘は許されないが大きな嘘は許される」という倉本聰さんの理論が見事に当てはまっていて、「どんなに記憶を操作しようとも人間は本能に逆らえない」という軸がしっかりしているから物語がブレないんですね。ここがこの脚本の優れたところだったと思います。
僕は観始めて30分くらいしたところで、「ジョエル(ジム・キャリー)とクレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)が出逢うシーンはちょっと強引だったけど、まあドラマだしそれもアリかな」なんて勝手に納得していたんですが、気がついてみるとファーストカットから意味アリアリのシーンの連続。それに気がついた瞬間「やられた!」と思って、「こりゃスゴイ!」と唸りました。
さらに、途中ラクーナ社のドクター(トム・ウィルキンソン)とスタッフ(キルスティン・ダンスト)の関係が明かされて「うひゃっ!」とたまげて、いよいよエンディング間近。ジョエルの告白テープを聞きながら、ジョエルとクレメンタインが対峙するシチュエーションに「まじかよ~!」とドキドキし、「こんな設定にして見事なオチをつけられたらこの脚本家は天才だな」ってゴクリと唾を飲んだんだけど、着地自体は「ほえっ?」ってなるくらい甘かった。ここだけは残念だったなあ。だから僕はこの脚本にアカデミー賞はあげません(笑)。面白い作品だったけど。
ところでこの映画を観て思い出したことが2つ。
観終わった瞬間にアタマからもう一度観たいと思わせる映画がたまにあるけれど、僕にとってのそれは1980年に公開された「ファイナル・カウントダウン」というSF映画が最初だったこと。
もうひとつ。
失恋の痛手から立ち直るために有効な方法は、記憶を「消す」のではなく「上書き」していくこと。
本編に「忘却とは許すこと」って名言があったけれど、実際には忘れられないから辛いのであって、そのためには別れた恋人を思い出すあらゆる場所へ恋人以外の誰かと出かけて、その場所での最後の思い出をすべて別のものに書き換えるんです。
例えば、恋人と一緒によく行ったレストラン。「あそこへ行くとあの人を思い出すから行きたくない」なんて人がいますけど、立ち直るためには行かなきゃダメ。その場所へ行って新しい思い出を作ることで前の記憶が少し遠くなる。これを繰り返して行けば、失恋から立ち直ることが出来ます。
これは僕が「タバコをやめるための方法」として編み出したものです(笑)。タバコをやめられない最大の理由はニコチンに依存してるからなのですが、タバコを吸っていた(あるいは吸いたくなる)すべてのシチュエーションでタバコを我慢することで、例えば「行きつけのバーでタバコを吸わなくても平気な自分」を上書き保存して行くんです。言ってみればこれは一種の自己洗脳なんですが、僕はこうして「タバコを吸っていた記憶」を消していったのです。
失恋の痛手から立ち直れない人も、タバコをやめられない人も、騙されたと思って一度トライしてみてください。
thanks! 130,000prv
運命を分けたザイル [2005年 レビュー]
一言で言ってしまえば壮大な再現ドラマ。「ザ・世界仰天ニュース」(NTV)ですわ。
ホンモノのロケーション映像に驚きの連続です。
アンデス山脈最大の難関、標高6,600mのシウラ・グランデ峰で遭難した2人の英国人登山家のの実話です。
僕は山岳遭難モノの“お約束”とも言える「2人で死ぬより、1人の生還」という“究極の選択”を迫られた男達の話かと思ったんですけど微妙に違いました。これが「実話のリアリティ」なんでしょうけど肩透かしを食らった感は否めませんでした。
しかも当の本人たちがインタビューに応じてるから、僕たちは「ああ、この人たちは死なないんだ」って事の成り行きを知った上で観ることになる。もちろん本人が書いた原作もあるし、イギリス国内や登山家たちの間では有名な話だから、「生きるか死ぬか」をクライマックスに出来ないんだけど、監督としても3面記事的な興味で観てもらいたくなかったんでしょう。だから冒頭から本人達のインタビューをインサートしたのだと思います。
この映画は観る人たちの死生観によって受け止め方が変わると思います。僕はこの作品を観て「人間が死ぬのは生きることをあきらめた瞬間だ」と思いました。
遭難し、骨折し、相棒に死んだと思われてザイルを切られ、巨大クレバスに落ち、何度も死を覚悟しても、「死にたくない」という確固たる思いが「魂」と「肉体」とを乖離させなかったのでしょう。
もしも生きる意味を見失っている人がいたらすすめてあげてください。
コンスタンティン [2005年 レビュー]
「コンスタンティン」(2005年・アメリカ) 監督:フランシス・ローレンス
久しぶりに「つかみはOK!」って映画です。
僕は出だし15分で「うおー!」「うおー!」と2回言いました(笑)。
しかしこれはキリスト教的世界観を理解していないと、どうにもこうにもならない映画ですね。少なくとも「ガブリエル」イコール「大天使」。「ルシファー」イコール「堕天使」イコール「悪魔」であると知らないともうチンプンカンプン。しかも面倒なのは、その図式がこの映画を支配しているわけではない、という点です。
だいたい悪魔を退治しているのは神じゃなくて特殊な能力を持ったコンスタンティン(キアヌ・リーブス)という一人の人間だし、他に人間界と天国(あるいは地獄)の橋渡し役をするハーフブリードって奴が出てきたり(コイツらは人間になりすまして人間界にいる)、キリストのわき腹を刺した「運命の槍」ってアイテムが出てきて、それを持ってるととんでもないパワーを手にしたり、もうムチャクチャです。でも!何故か面白い。ビジュアルの面白さもあるけどね。
深読みすればするほど味のある映画かなと思います。物語の背景もきちんと作りこんであるんだと思う。僕には良く分からないけど。
この映画は例えばヒュー・ジャックマンがモンスターハンターを演じた「ヴァン・ヘルシング」(2004)とか、ヴァンパイアと狼男の種族対立を描いた「アンダーワールド」(2003)と同タイプって言っちゃっていいと思うんですけど(設定は大きなウソだけど、テーマはリアルって意味で)、この2つと比べても「コンスタンティン」のほうが断然アリ。
単純に「変人」キアヌ・リーブスを満喫できるし、レイチェル・ワイズは相変わらず色っぽくてキレイだし、悪魔との対決シーンはなかなか見ごたえのあるシーンだったし、楽しみ方は十人十色だと思います。
ところで、ミッドナイトのバーのシーンでワンカットだけキャリー=アン・モス(マトリックスのトリニティ)がカメオ出演していたように思うんですけど気のせいでしょうか?
スカーレットレター [2005年 レビュー]
カスタムメイド10.30 [2005年 レビュー]
「カスタムメイド10.30」(2005年・日本) 監督・脚本・編集:ANIKI
「ひとり股旅スペシャル@広島市民球場」の予習もバッチリ!ついに「カスタムメイド10.30」を観てきました。
でもね、この映画あんまり評判良くないんですよね。「映画をナメるな!」とか「ミュージックビデオの監督風情に映画なんて無理なんだよ!」なんてかなりキツイ言葉があちこち見受けられたんですよ。だから今回はなーんにも期待しないで観に行きました。単純に民生とカエラの顔だけ観られればいいや~ってなもんです。はい。
劇場は渋谷パルコPART3の中にあるシネクイント。「そういえば昔ここに久保田早紀のライブを聞きに来たことがあったなあ」なんて思い出しながらエレベーターで8階へ。
日曜日の最終回19時40分。エレベーターを降りたら狭いロビーに入場待ちのお客さんがぐちゃっといてちょっと面食らう。「意外とお客さんいるじゃん」ってビビってたんだけど、入場が許されて中に入り、客が席についてみるとなんのこたーないガラガラ状態でした。ついでにこの劇場、店員の態度はイマイチだけど施設は悪くないかも。シートの座り心地がいい。
さて本編。
カエラがチョーカワイイ!もう「なんじゃこりゃー!」な可愛さです(笑)。制服もキャバ嬢姿も金髪のカツラを被ったライブ衣装もメチャキュート。この映画はオードリー・ヘップバーンにとっての「ローマの休日」と同じ。今のカエラの可愛さを閉じ込めたというだけで価値のある映画です。カエラファンは見るべし。
では民生ファンはどうかというと、別に観なくてもいいかも(笑)。もっと民生が出てくるかと思ったんですけど、ライブ映像がメインで芝居するシーンなんてほとんどありませんから。ライブDVDのほうがよっぽど充実しています。値段高いけどね。
最後に、映画として観てみようかと思っている方…
やめたほうが良いです。こんなの映画じゃありません。
その証拠に映画が終わり場内が明るくなったところで客席を見回してみたら、目が点になっている人たちがたくさんいました。「えーっマジー?」みたいな感じ(笑)。
「カエラちゃんだけ観るつもりで行きます」と言って映画に付き合ってくれた女性も、席を立ってまもなく目をクリクリにして僕を見ているので、「やっぱり、目が点になるくらい面白くなかったんだな」と思ったら、まったくそんなことじゃなく「足元寒くなかったですか?」と言う。うん確かに寒かった(笑)。そういえばフロントに「ひざ掛けお貸しします」って書いてあったもんね。これシネクイント、ひざ掛け貸し出すくらいならエアコンを調節しなさい。
しかしもうちょっと脚本がなんとかなってりゃ、面白い映画になったと思うんだけどなあ。
バットマン・ビギンズ [2005年 レビュー]
「バットマン・ビギンズ」(2005年・アメリカ) 監督:クリストファー・ノーラン
8年ぶりのバットマンがなんで「BEGINS」やねん!って思いませんでしたか?
これって「スイマセンけど今までのバットマンは全部チャラでーす。じゃあアタマからもう一回行きまーす!」って助監にトラメガで言われてるのと一緒ですから。そりゃ驚いたと思いますよティム・バートンもマイケル・キートンもヴァル・キルマーもジョージ・クルーニー(そもそもオマエがやるな)も。
でもしばらくしたら皆「まあその方がいいかも」って思ったんだね。アメコミ映画って回を重ねるごとにムチャクチャな展開になるじゃないですか。前作を上回るためにはここまでやらなきゃダメ!ってスタッフ全員の思考回路がマヒしちゃいますから。歳とる毎に化粧が濃くなるオバチャンみたいなもんです。タコメーターなんて完全に振り切ってるもんね。
ティム・バートンの2作までは良かったんですよ。でもロビンが出てきてバットガールが出てきて、キャットウーマンをミシェル・ファイファーがやったのはいいけど、シュワルツェネッガーがケッタイな悪役をやった日にゃあ投資家だって「あ、この船沈むな」って一目散に逃げ出すネズミの心境だったと思います。そしたら案の定打ち切りになっちゃった。
そう言えば「スーパーマン」だって最後は酷かった。シリーズ4作目のタイトルは「最強の敵」(1987)ですから。「最強の敵」ってあーた、こんなタイトル打ったらもう後がないじゃん(笑)。まあそれくらい崖っぷちだったってことなんですけど。
ただバットマンに関しては(実は新作が製作されたスーパーマンもだけど)、製作が打ち切られた後の空白の8年の間に「スパイダーマン」が2本続けてヒットしたのが大きかった。ソニーとコロンビア主催の「スパイダーマンこんなに儲かっちゃってゴメンね♪還元パーティ」に呼ばれたワーナーブラザースの重役たちは会場の隅っこでドラゴンパンチをすすりながら「なあ、そろそろバットマンやってもいいんじゃね?」「うまくやりゃそこそこ儲かるんじゃね?」ってヒソヒソ話したはずなんです。ただやるからにはいろんなものをリセットする必要があった。「やっぱり大人も楽しめる作品にしなきゃダメだ」ってことになったんでしょう。そこで原作にもない「バットマン」誕生の秘密を描くことにした。【大人を納得させるための言い訳】を物語の軸にしたんだね。これはいいアイディアだった。でも観てみたら「なんじゃこりゃ」な映画だったんです、これが(笑)。
脇役を大御所で固めると重厚感が出るってワケで、モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、リーアム・ニーソンなんて人たちをキャスティングしましたけど、なぜかあんまり効いていない。モーガン・フリーマンの役どころは007の「Q」だし、リーアム・ニーソンはタイガーマスクが地獄の特訓を受けた「虎の穴」の親方みたいな役どころ。原作の矛盾を潰すために考えた設定がすべて裏目に回ったようなそんな感じが僕はしました。
それに、どんなに過去をリセットしても、アメコミ映画の「お約束」から逃げられないのも事実で【ヒーロー誕生の経緯】→【能力を駆使した大活躍】→【ヒーローであることの苦悩】→【新たなる敵の登場】というパターンをやっぱり踏んでいるんです。ラストでトランプのジョーカーが出てきたときには心底ガッカリしました。
ああ、ついでにトム・クルーズの子供を産むケイティ・ホームズが可愛くなかったことと、渡辺謙が別にどうでもいい役だったことにもガッカリしました。アクションシーンのカット割りも展開が早すぎてつまらなかったなあ。
…とここまで酷評しても「バットマン」は好きなんですけどね。
好きな人だけが観ればいい映画だと思います。はい。
ピアノを弾く大統領 [2005年 レビュー]
僕独自の「韓国映画“アタリ・ハズレ”見極め理論」で言うと、製作されたのは日本公開の3年前ですから【ハズレ】の可能性が極めて高い作品ということになる。
しかしスタッフ欄にご注目。監督名じゃなく脚本に名を連ねるこの名前にピンと来たら、アナタは韓国映画通。そうこの人は「猟奇的な彼女」、「僕の彼女を紹介します」の監督ですね。どうですか。ちょっとだけ期待値が上がったでしょう?
これは、妻に先立たれ10年間も独身だった韓国大統領(アン・ソンギ)が娘の担任教師(チェ・ジウ)に恋をするという物語。
大統領の恋愛モノというと、マイケル・ダグラス主演の「アメリカン・プレジデント」(1995)を思い出します。もちろん大統領と言えど人の子ですから恋愛してもいいんですが(クリントンの場合は別)、設定そのものはどだい無理があるんです。だから「リアリティがない」と言って切り捨てるのは大間違いで、これを一種のファンタジーとして捉えられない人は観る資格がありません。
しかし大統領を主役に据えたからには政治劇としての面白さもないと、何のためにこんな設定にしたのかも分からない。政治ドラマとしての緊張感があってこそ恋愛ドラマのテンションも上がるはずなのですが、ここは「アメリカン・プレジデント」も「ピアノを弾く大統領」もまったく同じミスを犯しています。政治劇としてのリアリティは確実に乏しい。アン・ソンギのキャスティングがはまっていただけに惜しいなと思いました。
僕の「韓国映画“アタリ・ハズレ”見極め理論」は正直言って当たりでした。
つまりこの映画は【ハズレ】ということです。クァク・ジェヨンだって毎度毎度ヒットをぶちかませる神様じゃなかったワケ(笑)。
でもメガネをかけてるチェ・ジウは最高に可愛いし、不愉快になるほどつまらなくもないし、「韓国映画が観たいのに観るものが無いなあ」ってときには観てもいいと思います。
力道山 [2005年 レビュー]
第18回東京国際映画祭クロージング作品です。
魚河岸おじさんのご厚意でご一緒させていただきました。
まず舞台挨拶。
左から「ラブレター パイランより」の監督で、今回オリジナル脚本も書いたソン・ヘソン監督。
続いて、力道山を演じるため64キロだった体重を5ヶ月で95キロまで増やしたソル・ギョング。
献身的な力道山の妻・綾を凛々しく演じた中谷美紀。
力道山を最後まで支えた秘書・吉町役の萩原聖人。
そして力道山の後継者でプロレス興行を取り仕切る菅野会長役の藤竜也。
韓国語は日本語と英語に、日本語は英語に訳されて進行する舞台挨拶が少々まどろっこしい。でもこれが国際映画祭の味なんだろう。そう思ってあきらめる。
舞台挨拶が終わって暗転すると僕はほんの少し腰掛け直して映画を観る体制を作った。
力道山の半生をたどる2時間半の旅。
それを長いと感じるか短いと感じるかが評価の分かれ道になるだろう。
劇場は渋谷BUNKAMURAオーチャードホール。
この日、ここに居合わせた日本人と韓国人で力道山を知らない人間は一人もいなかったと思う。
「空手チョップで外人レスラーをばったばったとなぎ倒した元相撲取り」
どんなに少なくともこれくらいの知識は全員が持ち合わせていたはずだ。しかし実際にどんな人物だったかを知る人は少ないだろう。
「力道山こと百田光浩とは一体何者だったのか」
観客の期待はここに集まっていたと思う。監督もその期待に応えようとしていたと思う。
しかしその意識は見事に空回りをしていた。
「力道山とは何者だったのか」という疑問に対してまず答えなければならないのは、力道山自身にナショナリズムがあったのか否かという点だと思う。台本の上ではその説明を担う台詞がある。「朝鮮人が日本で笑うためには成功するしかない」。文字面だけで見ると力道山は紛れも無い朝鮮民族の一員であるように受け取れるが、その前後を見ていると確信は泡のように消えて行く。なぜなら映画の中の力道山は朝鮮のためでなく、日本のためでもなく、あくまで自分自身のために戦っていたからだ。
この日クロージング上映に立ち会った日本人と韓国人は歯がゆい思いをしたと思う。僕は力道山を応援したかった。それもリング上の力道山ではなく人間・百田光浩を応援したかった。しかしこの映画はそれをさせてくれなかった。このピントのずれ方が母国・韓国で不評を買った要因なんだろうと僕は思う。
2時間半は明らかに長い。あと20分短ければまだいいと思うが、ずれたピントをどこまで修正できるかは不明だ。
この映画を語るとき、ソル・ギョングのルックスと日本語についても避けては通れまい。
例えばウィル・スミスの「ALI アリ」(2001)、ジェイミー・フォックスの「Ray/レイ」(2004)、ブルーノ・ガンツの「ヒトラー ~最期の12日間~」(2004)など、もちろん似ていればいいという問題ではないけれど、まるで本人が乗り移ったかのような見た目と演技は確実に評価の対象になる。しかし力道山にソル・ギョングはいくらなんでも無理があった。
日本語も猛特訓をしたことだろう。ときどき完璧な発音でもって流暢な日本語を話していたけれど(唯一カ行の発音だけは克服出来なかったようだ)、そうは言っても「まずまず」という程度でしかない。聞き取りにくい台詞も多々あって、出来れば日本語字幕で観たいと思った。
映画が終了して大きな拍手が起きた。
舞台袖から監督と出演者達が現れてスタンディングオベーションになったが、僕はしばらく立たずにいた。魚河岸おじさんも立たなかった。拍手が長く続くのと舞台上が見えなくなったので僕たちはやむなく立ち上がり拍手を送った。しかしそれは作品に対してではなく、2時間半も舞台袖(本当は楽屋だと思うけど)にいた監督と俳優に対しての労いの拍手でしかなかった。
この手の作品なら韓国に実在した伝説のボクサー、キム・ドゥックの生涯を描いた「チャンピオン」(2002)の方がよっぽど良く出来ていると思う。拍手を終えて座りなおした僕はそう魚河岸おじさんに話した。
さて10分間の休憩をはさんでこの後は表彰式。ジョン・カビラ、久保純子の司会は良いのだが、ステージ進行の段取りがどうもよろしくない。
発表する審査員、受賞対象者、プレゼンター、通訳ら全員がステージ上でウロウロしている。まったく情けない。腐っても国際映画祭だぞ。
一番情けなかったのは最期の最期、角川歴彦チェアマンの挨拶だ。国際映画祭を締めくくるためのコメントはあらかじめ用意した原稿の棒読みで、しかも間違いまくりの噛みまくり。ろくに喋れないくせに俳優やスタッフたちを呼ぶ言葉は妙に馴れ馴れしくて不愉快なこと極まりない。このオヤジいったいどうしてくれよう、とイライラしていたら魚河岸おじさんがバッサリ斬り捨てた。
「ソル・ギョングの日本語のほうがよっぽど巧いですよね」
魚河岸おじさん、nice!です(笑)。
来年はもっと沢山の作品を観られるように頑張りたいと思います。
地球で最後のふたり [2005年 レビュー]
バンコクを舞台にした潔癖症の日本人(浅野忠信)とタイ人女性の物語。
タイトルからすると「一体どんな恋愛物語なんだろう?」とイメージを膨らませてしまいますが、なんともまったりした雰囲気モノの映画です。タイトルは意味不明だし超期待ハズレ。
自殺願望のある男が今まさに橋の上から川に向かってダイブしようとした瞬間、橋の上で交通事故が起こる。男が振り返るとそこには血まみれになった女子高生と、目の前で妹をはねられて呆然とする姉。こうして知り合った2人が心を通わせ、共に生きる気力を得る…みたいな話です。
多分これから1ヶ月もすると「あれー?この映画ってどんな話だっけなあ」ってことになる気がします。それくらい印象の薄い作品でした。
浅野君のファンなら見てもいい。ロン毛を目指し始めた頃の浅野君の姿が見られます。僕にとってはただそれだけでした(笑)。もう笑うしかありません。