藍色夏恋 [2004年 ベスト20]
高校生の女の子、モン・クーロウとリン・ユエチェンは親友同士。ユエチェンは同級生の男の子、チャン・シーハオに恋をしていた。
「私と彼が付き合えるように手伝って」とユエチェンに言われたモン・クーロウはシーハオと交流を持つようになる。けれどシーハオはモン・クーロウのことが好きになってしまう…。
大雑把に書くとこれだけの物語。いまどき少女漫画でもこんなストーリーってない。だけど、まるで自分のアルバムをめくるようにいつまでも見ていられます。どうしてかというと、「友達」と「恋」とに揺れた「ある時期」を確実に思い出すからなんだよね。
夏のプール、海、体育館、放課後の教室、自転車での帰り道…。物語が展開するすべてのシーンのどこかに、もしかしたら「かつての自分」がいるんじゃないかと思ってふと探してみたくなる…そんな気持ちにさせてくれる映画です。
ピアノのテーマ曲もとても美しく、「ピュアだった過去の自分」との対面を促すような優しい旋律。社会の荒波に揉まれて(笑)、ストレスを抱えている皆さん。ぜひご覧になってください。
余談ですがこの映画の原題「藍色大門(英語タイトル:BLUE GATE CROSSING)」には、若者は日々の暮らしの中で大なり小なり未来に影響を及ぼす出来事に常に遭遇している、つまり毎日門を通過している、という意味が込められているそうです。そう思うと邦題はイマイチね。
海辺の家 [2004年 ベスト20]
余命3ヶ月と診断された建築家のジョージ(ケビン・クライン)が、家を建て直す。これが物語の縦軸。
これに別れた妻のロビン(クリスティン・スコット・トーマス)と、反抗期を迎えた16歳の息子サム(ヘイデン・クリステンセン)、そして近隣の人々が絡んでくる。
家を壊す、そして建て直すという行為が「家族の崩壊と再生」を表現していて、そのテーマが実に判りやすく展開していきます。
脚本もよく出来ていて、前向きに生きることの大切さを「悪いことがいいことを運んで来る」というセリフに置き換え、何度かジョージに言わせています。この辺りがかなり泣けます。
また、僕も父をガンで亡くしているので、病床に伏した父と息子のシーンは涙なしに見られません。
いずれダース・ベイダーになっちゃうヘイデン・クリステンセンがとにかくイケてる映画です(笑)。
ラヴソング [2004年 ベスト20]
【誰にでもいつまでも忘れられない歌がある。二人にとってそれはテレサ・テンの歌声だった。
“夢であったのは、確かにあなた…” 夢を求め大陸から香港へ渡ったレイキウとシウクワン。平行線を描くかに見えた二人の友情はある時ふと交わり恋愛に変わる。しかしそれから数奇な運命に翻弄される二人は、ついに別々な人生の中お互い知らぬ間にニューヨークへと渡る。そしてテレサ・テン死去のニュースがテレビから流れるある日…】
この解説に惹かれて観てみたんだけど、僕がこれまで観てきた恋愛映画の中でも1、2を争う名作でした。ほとんど完璧に近いと思う。
説明セリフを極力排し、ストーリーに余計なアクシデントも用意せず、互いの心の揺れを絶妙の間で撮り切る。
なんと濃厚な純愛。なんと緻密なプロット。なんと劇的な118分。
マギー・チャン最高! 絶対見るべし!
ホテル・ハイビスカス [2004年 ベスト20]
沖縄本島にあるホテル・ハイビスカスは、沖縄料理がついて一泊3.000円。でも貸せる部屋はひとつしかない。
他の部屋は、ビリヤードと三線が得意な父ちゃん、夜はバーで働き家計を支える美人の母ちゃん、黒人とのハーフのケンジにぃにぃ、白人とのハーフのサチコねぇねぇ、くわえタバコのおばぁ、そして小学3年生のおてんば娘、美恵子たちの部屋だから。
同じ中江監督の「ナビィの恋」よりもオススメ出来る沖縄ムービーです。
僕がものすごく感心したのは、恵美子が夜に寝ているシーンや、基地内の草原で「あること」にショックを受けた美恵子が呆然と立ち尽くすシーンなど、普段ならここまで長く見せないだろうと思うくらい肝心のところでのワンショットが長かったこと。
これらは沖縄の風を感じさせるシーンで、風の強弱や湿度や温度、つまり肌でしか感じることが出来ないものを映像から想像させようとする、中江監督の試みだったと思います。そしてそれは沖縄に住む人間にしか撮れないカットかも、と羨ましくなりました。
また主人公・恵美子を演じた蔵下穂波(本名の方がいい名前だ)の天才的な演技も必見。この女の子じゃなかったら無理だろう、って思わせるほどドンピシャはまったキャラクターでした。
それと、もしDVDで観るなら「全編日本語字幕入り」で見ることをオススメします(笑)。
マイライフ・アズ・ア・ドッグ [2004年 ベスト20]
「サイダーハウス・ルール」で一躍有名になった監督、ラッセ・ハルストレムの作品。
マイ・ビッグ・ファット・ウェディング [2004年 ベスト20]
婚期を逃し、父が経営するギリシャ料理店を手伝っている娘が恋をした。
やがて娘の恋は実り、幸せな日々がやって来る…と思いきや、娘の父は大反対!相手がギリシャ系じゃなかったからだ。
「ギリシャ人の女はギリシャ人の男と結婚をして子供を産むのが使命!」と2人の交際を認めない。それでも母や当人たちの説得で、なんとか結婚にまでこぎつけるのだが…。
白い犬とワルツを [2004年 ベスト20]
同名タイトルの邦画(仲代達也主演)もありますが、僕は友人の勧めでアメリカ・テレビドラマ版を観ました。こちらはアメリカ南部の農村が舞台になっていて、金婚式を迎えた夫婦のパーティから物語が始まります。
この作品には年老いた親を持つすべての子供たちが共感できる、そして考えさせられるテーマが存在しています。
オール・アバウト・マイ・マザー [2004年 ベスト20]
「オール・アバウト・マイ・マザー」(1998年・スペイン)
2000年のアカデミー最優秀外国語映画賞を獲得した作品です。
タイトルから想像して主役であるマヌエラの「女の一生」だと思い込んで観るんだけど、途中から劇中に登場するすべての「母性を持った人間」の話であることに気付かされます。
1人息子を失った臓器移植コーディネーターのマヌエラ。
同性愛者の大女優、ウマ・ロッホ。
その恋人で、ドラッグ中毒の女優ニナ。
HIVに感染した修道女ロサ。
常にポジティブなゲイのアグラード。
そして、マヌエラとロサの2人に大きく関わる一人の「男」。
「女を演じる」という裏テーマが随所にちりばめられていて、オカマの存在も劇中劇「欲望という名の電車」も効果的な役割を果たしています。それは見事と言うほか無いダイアローグと構成。
“アルゼンチンの倍賞美津子”と言うと何人かは納得してくれると思うセシリア・ロスの抑えた演技が素晴らしいけれど、それ以上にオカマのアグラードを演じたホンモノの女性、アントニア・サン・フアンに絶賛の拍手を送りたい。
女性は必見の名作です。
CUBE [2004年 ベスト20]
「CUBE」(1997年・カナダ)
友達に薦められて何の情報も持たずに観た作品。
僕が知っていたのは「サスペンス」モノであるということだけ。パッケージを手にして「ホラーか?」と思ったのですが、そうではありませんでした。ただ、オープニング早々度肝を抜かれます。
これ以上はもう何も書きません。皆に僕と同じ感覚を味わって欲しいから。
設定の巧さが名作を生む典型的な作品です。
ラブレター パイランより [2004年 ベスト20]
「ラブ・レター パイランより」(2001年・韓国) 主演:チェ・ミンシク、セシリア・チャン
浅田次郎原作。日本では中井貴一主演で映画化された作品です。
僕は日本版を見ずしてこちらを先に観ちゃったのですが、裏ビデオショップの店長を中井貴一にやられても困っちゃうので日本版は観ないことにしました(食わず嫌いだったらスイマセン!)。それくらい韓国版の出来がいいんです。チェ・ミンシクがずば抜けていい。
もちろん原作がいいんですよ。「鉄道員」の中に収録されていた短編ですが、僕はぽっぽやよりも好きだな。電車の中で読みながら泣いちゃったくらいです(笑)。
韓国版のいいところはアジアの貧困ぶりが生々しいところ。偽装結婚をすすめた者、引き受けた者、身を任せた者、各々がそうせざるを得ない状況にあって、観ている側も納得感があるんです。そして登場人物も観客も「人を想うことの尊さ」を知る…。
物語は実に淡々と流れていくのですが、本編の後半でおおきなうねりがやってきます。
生きて対面することのなかった男と女のラブストーリー。ぜひハンカチを用意して観てください。