成功は一日で捨て去れ [本の雑談]
昔はこの手のビジネス書ってまったく読まなかったんですけど、最近は割と読みます。
一応、小さい会社とはいえ役員やってるし。
これは、ファーストリテイリングの会長兼社長である柳井正さんが6年ぶりに書き下ろしたものです。どんな内容かは帯のコピーを見れば一目瞭然。しかもこの文言がかなり強烈。
その安定志向が会社を滅ぼす―
現状を否定し、社内改革への挑戦を続けるユニクロ。
経営トップが明かす悪戦苦闘の記録。
正直、「やばい」と思いましたね。自分のことを。
安定志向はどうしたって人間が持ってしまうもの。もちろん僕も持っていて、なんなら「どうすれば安定できるか」なんてことを考えちゃってた時期なので、強烈に刺激を受けました。
すごく一生懸命仕事をしていたつもりだったけど、全然足りてなかったことにも気が付いたし、やらなきゃいけないことも気が付いたし、いやいやこの本を読んでなかったら、2010年は相当ヤバイことになってたと思います。うわ~良かったあ。「読む前の自分よ、さようなら」って感じです(笑)。
ちなみに本書で知った小ネタをひとつ。
社名のファーストリテイリングは「速い小売業」に由来しているそうです。その理由に興味を持ったら是非ご自身で。
葉巻と映画の関係 [本の雑談]
1冊は池澤夏樹氏の「ハワイイ紀行 完全版」。
もう一冊は、ハワイとなんの関係もない馳星周氏の「リアル・シガー・ガイド」。
六本木のABCでこの本を見つけた瞬間、完全に「ビビッ!」と来た。
僕はタバコを吸わないが、葉巻の香りは好きで、タイミングがあれば葉巻だけは吸ってきた。
しかも大好きな作家による日本初の本格的ガイドブックである。
読んだらこれがまた面白い。
氏が自腹で獲得した葉巻に関する知識がこれでもかと披露されている。
特に、旨い葉巻を味わうため絶対惜しんではならない「保管の手間」について、氏は驚愕の裏ワザを披露している。
僕はこの本を、ハワイ滞在中に3回読んだ。
読めば当然葉巻が吸いたくなる。
実は宿泊したホテルの売店に、キューバ葉巻があった。
アメリカとキューバの関係を思えば、これが本物とは思えないが有名ブランドのCohibaがあったので1本購入し、さっそく吸ってみた。
これまでに吸っていた安物と大差ない気がする。
本の中で馳星周氏が書いていたような「旨味」を正直僕は感じなかった。
いずれにしても、帰国してからもう一度トライしようと思ったのだけれど、この本からはもうひとつ、とても重要なことを教えてもらった。
「ある葉巻が旨いか不味いかは、ひとえにあなた自身の嗅覚と味覚、そしてあなたが置かれたシチュエーションにかかっている」
「惑わされるな。騙されるな。あなたが旨いと思ったシガーがあなたにとっては旨いシガーなのだ。それ以上でも以下でもない。したり顔の輩にでかい面をさせる必要はない」
僕は「葉巻(シガー)」と「映画」は一緒だと思った。
そんなわけで今日からまた、映画を観始めます。
ハワイの日記は、こちらで少しずつ書いていきます。
死刑 [本の雑談]
最近の日本ではこの制度の存置そのものについて語られることが少なくなっている気がする。
死刑。
僕はノンフィクション作家の大塚公子が上梓した4冊、
「57人の死刑囚」
「死刑執行人の苦悩」
「死刑囚の最後の瞬間」
「『その日』はいつなのか。死刑囚長谷川敏彦の叫び」
を平成8年から10年にかけて読み、“究極の罰”に関わる人々の苦悩を知った。
けれど僕自身が「存置派か廃止派か」と聞かれると、実はその答えを持ち合わせていない。
今年久しぶりに書店で見つけた「死刑」のタイトルが、その理由を教えてくれた。
そういえば僕は誰にも聞かれたことがなかったのだ。
死刑はあるべきか否かを。
著者の森達也は、傑作中の傑作ドキュメンタリー「A」の監督である。
もともとはテレビのディレクターで、「A」をきっかけにして「テレビ界から干された」人だ。
干されようが何しようが少なくとも「A」は、草野球のファウルチップがネクストバッターズサークルで余所見をしていた僕の後頭部を直撃したとき以上の衝撃だった。
はたして本書はどうか。
森達也は執筆前、本のイメージを編集者に問われ「死刑をめぐるロードムービー」と答えた。
本人はこれを終盤、「相当に軽薄なフレーズだった」と自己批判するが、読了した僕が思うにこれが最も的確な言葉だと思う。彼は間違いなく、「死刑は存置すべきなのか、廃止すべきなのか」、自らの意見をまとめるための旅をしている。
読者は森達也の旅に同行することになる。
不思議な旅だ。
この旅にはゴールが無い。
感じて、考えて、そして悩み続ける。けれど旅は無限に続けられない。
「たぶんこの駅に終着駅はない。だから自分で下車する駅を決めなくてはならない」
これは大塚公子の確固たる視点と比べると「少々甘っちょろい文脈」と言いたくなるのだけれど、死刑を議論し慣れていない日本人にはちょうどいい温度かもしれない。
個人的には森達也がたどり着いた結論はバランス感覚を欠いていると思う。
死刑になるかもしれない“ある囚人”と面会して、彼の気持ちは大きく揺れ動く。
しかし、彼は“被害者の父”にも“被害者の夫”にもなっていない。
そのとき彼はどうするのだろう、という疑問だけが残った。
ただし、大いに読む価値あり。
「罪深き人間なら殺しても構わない」という法律を成立させているのは私たちだから。
私たちも人殺しの片棒を担いでいるのだから。
- 作者: 大塚 公子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1998/08
- メディア: 文庫
- 作者: 大塚 公子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1993/07
- メディア: 文庫
- 作者: 大塚 公子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1996/06
- メディア: 文庫
「その日」はいつなのか。―死刑囚長谷川敏彦の叫び (角川文庫)
- 作者: 大塚 公子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2001/12
- メディア: 文庫
セックスが地球を滅ぼす [本の雑談]
日本のAIDS患者数は4,241名。HIV感染者は8,841名。
AIDS患者の数に対してHIV感染者は、「その10倍いる」というのが常識なのだそうです。
しかし日本の場合、わずか倍の数字でしかありません。
40,000人強のHIV感染者がいるはずなのに、分かっているのはわずか8,841名。
つまり。
日本には30,000人以上の無自覚HIVキャリアがいて、彼らはそうとは知らず今日もセックスをしているということです。
その30,000人が特定の相手とセックスをしていたとして、最小で30,000人がHIVに感染する恐れがあるという事実。
もしも不特定多数の相手とセックスをしていたら…、その数字はどこまで膨れ上がるのが想像が出来ません。
なぜHIV感染者の数が把握できないのか?
それは検査を行う人の数が絶対的に少ないからです。
日本は人口の0.09%しかAIDS検査を受けていません。
アメリカの場合は人口の30%が検査を受けていると言われています。
僕もHIV検査を受けていません。本当なら結婚前に受ける必要があったと思います。
なので近日中に受ける予定です。
そして著者の赤枝先生の運動に僕も及ばずながら協力をさせていただこうと思っています。
著者の赤枝先生が一番危惧しているのは、小・中学生の援助交際が爆発的に増えていることだそうです。
これは東京に限った話ではなりません。
娯楽の少ない地方都市こそ、セックスに走る子供たちが増えているそうです。
実際、性感染症にかかっている子供の数も、人工中絶を行う子供の数も、地方の方が圧倒的に多いのです。
「セックスのときにはコンドームを使う。これが義務!」
こういう話を小学校、中学校でしたいと言うと、PTAや教育委員会から猛反対を受けるそうです。
「セックスを容認するわけにはいかない!」
すると赤枝先生は言いました。
「容認するまでもなく、子供たちはヤッてますから」
何も知らずにヤルとHIVに感染する確立は高くなります。性感染症の怖さを知ると、逆にヤラなくなりますよ。
そう説明しても、なかなか学校では受け入れてくれないそうです。
ストップ、AIDS!
本書を読むと分かりますが、これは子供たちを守るためだけでなく、家庭を、社会を、そして国をよくするための運動です。
ぜひ、HIV検査に参加してください。
そしてあなた自身が性感染症の知識を身につけ、子供とコンドームの重要性について話し合ってください。
このままでは本当に国が滅びます。
いけちゃんとぼく [本の雑談]
- 作者: 西原 理恵子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/09/01
- メディア: 単行本
天才・西原理恵子の絵本。
テレビ番組で紹介されて、ゼッタイ泣ける本の第1位になったそうです。
そんなこと露知らず、書店で偶然見かけて立ち読みせずに買いました。
帯にも「ゼッタイ泣ける!」って書いてあって、「テメそんなの売りにすんじゃねーよ」と思いつつ、僕は昔から西原さんのファンなので買ってみたのですが、コレが本当に泣けました(笑)。
僕は朝、出社前に読んじゃって、「うわ、こんなタイミングで読むんじゃなかった」と後悔するほど泣いちゃいました。トホホ。
これは「いけちゃん」という不思議な友達と「ぼく」の物語。
読み終わったら、すぐそのままもう一度最初から読みたくなる類の本です。
ちなみに立ち読みすると立ち泣きすることになりますから、ぜひお買い求めの上(オマエは誰なんだ?)じっくりとお楽しみください。
この先はワタシの覚書です。出来るだけ立ち入らないように(笑)。
1976年のアントニオ猪木 [本の雑談]
1976年とは言わずと知れた猪木V.Sモハメッド・アリ戦が行われた年だが、「この年は猪木にとっても、その後の日本人にとっても重要な意味を持つ年だった」というアプローチを本書はしている。
実は浅草キッドの水道橋博士が「おもしろい」とどこかで言っていたのを聞いて手に取ったのだけれど、格闘技マニアでなくとも1976年6月26日の猪木対アリ戦を知っている人なら読了後に失望することは無いと断言する。
なんと言っても感動的なのは「プロレスはあらかじめ勝敗の決まったショーなのか?それともリアルファイトなのか?」という無駄な議論が日本で生まれるきっかけになった瞬間を本書が捉えている点だ。
それは猪木が発した「ある一言」がきっかけだった。
その瞬間に日本人は「プロレスの常識」を見失い、誤った幻想を抱くようになるのだ。
僕はこの歴史に残るターニングポイントを明文化しただけでも本書の意義はあると思う。
全日本プロレスは日本テレビ、新日本プロレスはNET(現・テレビ朝日)という図式はどうして出来上がったのか?
猪木はなぜ「卍固め」を必殺技としたのか?
馬場対猪木戦はなぜ成立しなかったのか?
新日本プロレスから大量の選手が流出したのは何故なのか?
そして、猪木-アリ戦はなぜ「世紀の凡戦」と言われるのか?
子供の頃には気付きもしなかった「事実」と、想像もしなかった「舞台裏」が次々と明らかになる奇跡のような一冊。
僕と同世代の男子には自信を持ってオススメします。
私の家は山の向こう [本の雑談]
傑作。
映画の原作にしたいほど実に優れた作品だった。
もともと有田さんがテレサ・テンに関する本を準備中であることは知っていた。けれどその事実を知ってから本作が出版されるまで、あまりに時間がかかりすぎた。
先月。書店で平積みされたこの本を僕は目撃していた。しかし素通りした。
テレサ・テンと有田芳生を結びつける記憶がすでに欠落していたからだ。
記憶の回路を繋いだのは、雑誌「Invitation」の書評だった。この書評が本作の優れているところをすべて書いてくれている。
【いまだに台湾から出稼ぎに来た演歌歌手というとらえ方をされたりもするテレサ・テンだが、中村とうようら音楽評論家による再評価によって、戦後のアジア全域を代表する大歌手であった彼女の全貌が浮き彫りにされつつある。本書はその白眉とも言える一冊だ。先行する評伝も何冊かあるが、それらと本書が一線を画しているのは、中国(中華圏)の近現代史とのかかわりの中でテレサを描いた点にある】(テキスト:大須賀猛)
テレサ・テンをリアルタイムで聴いた僕には驚きの内容が綿々と、しかし淡々と綴られている。
これは音楽評論家には到底書くことの出来ない、有田芳生さんの渾身の仕事です。
特にテレサ死後の章は、テレサの名誉回復に奔走する有田さんの執念を見ました。
僕と同世代の人にはオススメ。
繰り返しますが、傑作です。
心境の変化 [本の雑談]
- 作者: 神田 謙
- 出版社/メーカー: ライブドアパブリッシング
- 発売日: 2005/03
- メディア: 単行本
昨日、仕事の合間に立ち寄った書店でこの本を見つけたとき、思わず足が止まってしまった。
「離婚したので犬を飼うことにした」
なんとストレートな動機だろう。
犬を飼うのにこれ以上の動機が必要なんだろうか、と僕は思った。
僕も昨年の夏から独りになった。
独りの時間を満喫しているけれど、ときどき味気なさも感じている。
昔から犬は好きだった。
いつかは犬との生活を送りたいと密かに考えていた。ただ漠然と。
漠然と考えながら、譲れないところもあった。
マンションで飼うのは嫌だ。
どうせなら庭付きの一軒家で飼いたい(独りモンなのにぃ~?!)。
飼えるのか?
飼うために引越し出来るか?
どこに家を借りる?
仕事に支障はないか?
面倒を見る人間が僕だけで平気なのか?
日中、一人ぼっちにしてもいいのか?
何年か後、先立たれても立ち直れるか?
プライベートのことで久しぶりに真剣に悩みそうだ。
ところで、飼うならコイツと決めとります。
一緒に遊ぶと楽しそうなボーダーコリー。のらくろみたい(オレも相当古いな)で可愛いよね。
天才・西原理恵子の元気が出るマンガ! [本の雑談]
はっきり言ってワタクシ、西原理恵子センセイのことを尊敬しております。
読むたびに爆笑して、読むたびにせつなくなって、読むたびによーし頑張ろうと思う。
そんなマンガそうそうない。
西原さんは「恨ミシュラン」で広く知られるようになり、「ぼくんち」では文藝春秋漫画賞を獲り、映画化までされ、そしてこの「毎日かあさん」でも腕のいい漁師のようなスゴイ仕事をしてくれてます。大漁だーワッショイ!
とにかくどこをめくっても爆笑の連続。その隙間にときどきセンチメンタルなエピソードを挿入するテクニックも秀逸で、まさに脂の乗り切った絶妙なる「サイバラワールド」。
「毎日かあさん」は子育て中、あるいは経験者にはたまらないエピソード満載です。
また、東京の田舎モノには胸がチクリと痛くなる「上京ものがたり」と、その続編「女の子ものがたり」も女子にはオススメですよ。
コトバはナマモノにつき。 [本の雑談]
最近ブログめぐりしすぎてて、この本もどなたかのページで「おもしろい」と紹介されていたので、いまさらですけど読んでみた一冊です。その方のページでコメントまでしたのに、一体どこで寄り道したのかすら判らなくて、ホントすいません。
だからso-netは早く「記事検索機能」復活させろっての(八つ当たり)
いやそれにしても60万部も売れる理由が判ります。面白いもん。
まだ全部読んでいないんですけど、っていうか(うわ使っちゃった)仕事で使うかもしれないから持ち歩こうと思ってるし、とにかく「なるほどね~」と納得させられる事実が満載。
僕が一番「うわ」と思ったのは、「全然いい」についての項。
【「全然」を肯定表現に使うのはまちがいじゃないのか】に対する答えが興味深かった。
「全然」は「全く然り(まったくしかり)」という訓がそのまま当てはまるものだったそうで、「まったく」「すっかり」とか「まるっきり」などの訓もあてられていたようです。
その実例として夏目漱石の「三四郎」にはこんな一文があると紹介しています。
【そこで三人が全然翻訳権を与次郎に委任する事にした。】
日本語って難しい。でも面白い。