スパイゾルゲ [2004年 レビュー]
「スパイゾルゲ」(2003年・日本) 製作・監督・脚本:篠田正浩
ラストフィルムという呼び方は悪くない。
ラストフィルムという呼び方は悪くない。
実際、篠田監督は「ゾルゲと撮れたら死んでもいい」と公言していたし、資金集めにも大きな効力を発揮したことだろう。
186分という尺にも執念を感じる。
映画というものは作品的にも興行的にもよほどのことがないかぎり150分が限界だと思う。「スパイゾルゲ」は映画会社からカットを指示されてもおかしくない長さ(実際少し長いと思う)なのに、最終的には186分で仕上げられたのだ。
映画というものは作品的にも興行的にもよほどのことがないかぎり150分が限界だと思う。「スパイゾルゲ」は映画会社からカットを指示されてもおかしくない長さ(実際少し長いと思う)なのに、最終的には186分で仕上げられたのだ。
篠田監督は「もうワンカットたりとも落とせない」というところまで自分を追い込んだと思う。
僕たちも番組を作っていて毎回経験するけれど、ディレクターとしては「もうどこも切れない(編集でカットできない)」と一度は思う。
しかし、最終的に僕たちは断腸の思いでカットをしている。なぜなら、テレビの場合は放送時間が確定しているからだ。
「スパイゾルゲ」もあと30分短かったらどうだったろうと思う。見ていてむやみに長さを感じたわけではないけれど、濃厚な作品とも言い難い。
監督にすれば「186分では到底見せられない素材がゾルゲの周辺には沢山ある」となるだろう。実際、ゾルゲの妻や、尾崎の妻のことはもっと深く描くべきだと思った。しかしそれを許す時間はどこにもない。
もしもこのテーマを映像化して世に出したいと願うなら、連続モノのテレビドラマでもよかったのではないかと僕は思う。映画に固執したばかりに、監督の執念がどこまで観客に伝わったか、と思うと少し心が痛む。
世界大戦の流れを大きく変えた一人のスパイ。そして彼を支えた日本人。
事の重大さは今の日本人に伝わるまい。劇場に足を運ぶ若い世代には理解されがたいテーマだと思う。
「今さらそれを知ってどうなる」と聞かれたら、それに対して説明する言葉を僕は持たない。
制作費がわずか20億円しか工面できなかったことも悲しい。
映像を見ればそれは一目でわかる。CGによって再現された昭和の街並みがあまりにも貧弱で感情移入を妨げる。
日本の技術力、資金力、そして我々の意識。すべてが監督の思いから微妙にズレているのではないか。
平和を願う余り祖国を裏切ることになった尾崎秀実。
ゾルゲを撮りたいがために引退を懸けることになった篠田正浩。
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