ロスト・イン・トランスレーション

「ロスト・イン・トランスレーション」（2003年・アメリカ）　監督・脚本：ソフィア・コッポラ

　アカデミー脚本賞を獲得したソフィアの長編2作目。

　日本人である僕たちからすると、アメリカ人の目に映るニッポンの描かれ方に居心地の悪さを感じるんだけど、地球の反対側の小さな島で「自分は一体誰のために生きているのか？」という疑問を持ってしまった中年俳優と若い人妻の心の交流はとても繊細に書き込まれていて、作品の質感は極めて上質に仕上がっています。

　特に、主人公と同じ40代の中年である僕は、ボブ・ハリス（ビル・マーレイ）が抱いていた喪失感に強烈なリアリティを感じました。
　同時に、僕は20代の若い人妻ではないので、出来ることならその世代の（スカーレット・ヨハンソンのような）女性と一緒に観たかった。そして、その女の子がどんな感想を持つのかぜひ聞いてみたかったな。
　

　率直な感想。安易に2人が寝なかったのがとても良かったと思う。
　作り手が女性だと「短絡的な男の願望は物語に組み込まれないものなんだな」と妙に感心。
　けれどエロティックなシーンがないわけじゃない。女性がリードする（描く）エロティシズムが要所にあります。中でもエレベーターの中でのキスシーンが最高で、40過ぎの中年男にとっては胸が熱くなる名シーン。
　小説の行間を読むように、2人の心の揺れを感じながら観て下さい。
　ビル・マーレイもスカーレット・ヨハンソンも、ソフィアの書いた脚本の行間を見事に演じています。

ロスト・イン・トランスレーション

• 出版社/メーカー: 東北新社
• 発売日: 2004/12/03
• メディア: DVD

コメント 10

こんばばんみ
不思議に見終わったら元気になっていた
ふわふわした感覚。
私にはそんな映画でした★
by keiko-nari (2005-03-21 00:36) 

そうですか。元気になってたんですね。
じゃあ、女の子にとってもいい映画だったってことだ。
それはいい。うん、それはいい。
by ken (2005-03-21 00:47) 

TBアンガト．デス。
＞小説の行間を読むように、2人の心の揺れを感じながら観て下さい。
　　ボブ・ハリスもスカーレット・ヨハンソンも、ソフィアの書いた脚本の行間を見事に演じてい　
　　ます。
ほんとに。久々に上質な映画を観たなー　という想いです。聞けばこの物語、ソフィアが日本に来た時に感じた事が元になったそうですね。時として　こんな佳作の映画が　かけがえのない一作になるものです。
by (2005-04-13 17:29) 

replicalove*さん、ようこそ。
ナイスありがとうございます。
映画の撮影は頑なに拒否してきたパークハイアット東京も
ソフィアの説得に根負けしたと聞きました。
そして撮影に協力するのも、この映画が最初で最後だとも。
いいホテルの、いいハナシです。
by ken (2005-04-13 18:18) 

こんにちは。TB＆コメントありがとうございました。
この映画を10年後にもう一度観たいと思ってます。
また違った気持ちが湧いてきそうな気がします。
なんだか大切にしていきたい映画です。
by hana (2005-04-16 13:33) 

hanaさん、こんばんは。
「10年後に観たい映画」ですか。いいですね。
そんなことを思わせてくれた映画の力もすごいけど
hanaさんの感受性が素晴らしいと思いました。
これから10年、大切にしまっておいてください。
by ken (2005-04-17 23:33) 

TBありがとうございます。
逆TBさせていただきました。
私の映画の見かたはほんと単純なので、
自分の知っている日本のあちこちがでてくるだけで、
楽しく見てしまいました。
あ～。
それにつけてもあの別れのシーンはよいよね～～。
by ecco (2005-05-28 18:30) 

あの別れのシーンは周りに内緒で撮ったのかな？
そんな雰囲気の映像だった気がしますね。
よかったよかった。
by ken (2005-08-06 14:36) 

最近見たのですが、予想以上に気に入った作品です。二人のキャスティングが絶妙だと思いました。

ＴＢさせてください。
by satoco (2008-01-22 11:55) 

わざわざ古い記事を探していただきありがとうございます。
言われると久しぶりに観てみたくなりますね。
nice！ありがとうございます。
by ken (2008-01-22 12:45)