いぬのえいが [2005年 レビュー]
「いぬのえいが」(2004年・日本) 監督:犬童一心、黒田昌郎ほか
僕も犬は大好きですから、このタイトルは劇場公開前からかなり注目してました。
ただ「映画館で観るほどの映画か?」と思ったのも事実で、実際映画館の前まで行ったのですが結局は「同じ2時間ならサウナでマッサージの方がナンボか気持ちいいだろう」という“オヤジ行動心理”に負けた記憶があります(笑)。
さてそれから時は流れて先日無事にDVD化され(何の障害もないから「無事」もヘッタクレもないんだけど)、サウナへ行ってしまったお詫び(?)と特典映像観たさに、僕はプレミアム・エディションDVDを購入したワケですが、あくまで作品としての評価を下すために、特典映像は観ないでこの記事を書くことにします(メイキングなんて観ちゃうと作品に情が湧いちゃうからね)。
さて今回はまずは結論から。
これは大人が観るもんじゃありません。「いぬのえいが」は子供映画です。
動物を使う作品はとにかく大変です。
この映画も「お犬様」の扱いには苦労したと思う。だけどその苦労が画面から滲み出るようでは作品として失格。とにかくエサで釣って撮影しているのがあからさまで、これには少々興ざめしました。
ただし。
そこに目が行くようなら、この映画を観る資格はないんです。なぜならこの映画は、人と犬の関係をキレイにまとめた「童話」だから。大人が観るものじゃないんです。
可愛い犬が出てこなくてガッカリという人もいると思う。
犬が好きな(あるいはこの作品に期待を寄せた)人たちは、とにかく可愛い犬の表情や仕草を観たかったはず。でもそういったシーンは皆無(唯一“ねぇ、マリモ”のワンシーンにある程度)と言っていい。大半はドッグトレーナーの指導で演技をしているだけ。もっと自然な犬の行動や表情を盛り込むべきだったと思います。物語なんてあとからいくらでも作れるんだから。
では主なエピソードの寸評を。
「うちの子 No.1」 主演:渡辺えり子、佐野史郎
いぬのえいがなのに、人間が主役のオープニングって意味が分からない。この段階で軽く引き
ました。
「CMよ、どこへ行く」 主演:伊東美咲、中村獅童
犬をテーマにしただけのコメディ。これは嫌味がなくて笑える。犬の演技にウエイトが少ない
し、何より伊東美咲が相変わらず可愛い(笑)。モロ師岡さんだけはミスキャストだね。
「ポチは待っていた/思い出」 主演:中村獅童
設定に哀愁があってグッときました。「空き地」に「土管」、そして「貧乏」というシチュエーション
だけで泣けます。
「恋するコロ」 主演:佐藤隆太、乙葉
犬のモノローグを使った最初のエピソード。これが後の「ねぇ、マリモ」で効くのだ。
作品としてはイマイチ。間が良ければもっと笑えた。電通関西支社の山崎隆明さん(リクルー
ト・ホットペッパーのCD)が作ったら面白かったんじゃないかな?
「ポチは待っていた/唄う男」 主演:天海祐希、川平慈英
天海の部屋着姿がカワイイ。ただそれだけ。
「犬語」 主演:田中要次
タカラの「バウリンガル」をネタにした作品。アイデア一発モノだけど、これが一番笑えた。
犬の演技のウエイトが少ないのもいい。
「ボチは待っていた/病院」 主演:清水美那
忠犬ハチ公に近いエピソード。結末が不明瞭で脚本としては成立していない。
このエピソードの完成度の低さが、「いぬのえいが」の評価を落としているかも。
「ポチは待っていた/空き地」 主演:中村獅童、小西真奈美
かつての空き地がスーパーマーケットの駐車場になっていた…という見せ方は好きだな。
でもパン屋さんの小西がロン毛を束ねずに仕事をしているのは許せない。もっと気を使うべき。
あーでも童話だからいいのか!
「ねぇ、マリモ」 主演:宮崎あおい
目線を変える構成はアイデア賞。前半5分は泣き通しだったけど、折り返した6分は泣けなかっ
た。それは僕が薄汚れた大人だからかな(笑)。
一番泣けるのは最後の「ねぇ、マリモ」です。
ただ「犬を飼うってことは、そんな甘っちょろいもんじゃねーんだぞ」とも思ったな。
そう思っていた理由は、谷口ジローの「犬を飼う」という作品を過去に読んでいたからです。
発売日: 1992/10
メディア: 単行本
これは著者自身の体験を基に書かれた「犬を看取る」物語です。
この中で胸を打つのは、歩くこともおぼつかなくなった犬と飼い主が過ごす濃厚な時間。確実に近づく「死」を前に人と犬とがそれぞれの思いで散歩し、公園で休息する様には静かな感動がありました。
犬を飼うことは容易(たやす)い。けれど最後まで面倒を見るということは容易ではない、と訴えつつ、それでも「犬を飼う」ということがいかに人生を豊かにしてくれるかを教えてくれる作品です。
子供のための「童話」と大人のための「私小説」。せっかくですから合わせてご覧になることをオススメします。
僕も犬は大好きですから、このタイトルは劇場公開前からかなり注目してました。
ただ「映画館で観るほどの映画か?」と思ったのも事実で、実際映画館の前まで行ったのですが結局は「同じ2時間ならサウナでマッサージの方がナンボか気持ちいいだろう」という“オヤジ行動心理”に負けた記憶があります(笑)。
さてそれから時は流れて先日無事にDVD化され(何の障害もないから「無事」もヘッタクレもないんだけど)、サウナへ行ってしまったお詫び(?)と特典映像観たさに、僕はプレミアム・エディションDVDを購入したワケですが、あくまで作品としての評価を下すために、特典映像は観ないでこの記事を書くことにします(メイキングなんて観ちゃうと作品に情が湧いちゃうからね)。
さて今回はまずは結論から。
これは大人が観るもんじゃありません。「いぬのえいが」は子供映画です。
動物を使う作品はとにかく大変です。
この映画も「お犬様」の扱いには苦労したと思う。だけどその苦労が画面から滲み出るようでは作品として失格。とにかくエサで釣って撮影しているのがあからさまで、これには少々興ざめしました。
ただし。
そこに目が行くようなら、この映画を観る資格はないんです。なぜならこの映画は、人と犬の関係をキレイにまとめた「童話」だから。大人が観るものじゃないんです。
可愛い犬が出てこなくてガッカリという人もいると思う。
犬が好きな(あるいはこの作品に期待を寄せた)人たちは、とにかく可愛い犬の表情や仕草を観たかったはず。でもそういったシーンは皆無(唯一“ねぇ、マリモ”のワンシーンにある程度)と言っていい。大半はドッグトレーナーの指導で演技をしているだけ。もっと自然な犬の行動や表情を盛り込むべきだったと思います。物語なんてあとからいくらでも作れるんだから。
では主なエピソードの寸評を。
「うちの子 No.1」 主演:渡辺えり子、佐野史郎
いぬのえいがなのに、人間が主役のオープニングって意味が分からない。この段階で軽く引き
ました。
「CMよ、どこへ行く」 主演:伊東美咲、中村獅童
犬をテーマにしただけのコメディ。これは嫌味がなくて笑える。犬の演技にウエイトが少ない
し、何より伊東美咲が相変わらず可愛い(笑)。モロ師岡さんだけはミスキャストだね。
「ポチは待っていた/思い出」 主演:中村獅童
設定に哀愁があってグッときました。「空き地」に「土管」、そして「貧乏」というシチュエーション
だけで泣けます。
「恋するコロ」 主演:佐藤隆太、乙葉
犬のモノローグを使った最初のエピソード。これが後の「ねぇ、マリモ」で効くのだ。
作品としてはイマイチ。間が良ければもっと笑えた。電通関西支社の山崎隆明さん(リクルー
ト・ホットペッパーのCD)が作ったら面白かったんじゃないかな?
「ポチは待っていた/唄う男」 主演:天海祐希、川平慈英
天海の部屋着姿がカワイイ。ただそれだけ。
「犬語」 主演:田中要次
タカラの「バウリンガル」をネタにした作品。アイデア一発モノだけど、これが一番笑えた。
犬の演技のウエイトが少ないのもいい。
「ボチは待っていた/病院」 主演:清水美那
忠犬ハチ公に近いエピソード。結末が不明瞭で脚本としては成立していない。
このエピソードの完成度の低さが、「いぬのえいが」の評価を落としているかも。
「ポチは待っていた/空き地」 主演:中村獅童、小西真奈美
かつての空き地がスーパーマーケットの駐車場になっていた…という見せ方は好きだな。
でもパン屋さんの小西がロン毛を束ねずに仕事をしているのは許せない。もっと気を使うべき。
あーでも童話だからいいのか!
「ねぇ、マリモ」 主演:宮崎あおい
目線を変える構成はアイデア賞。前半5分は泣き通しだったけど、折り返した6分は泣けなかっ
た。それは僕が薄汚れた大人だからかな(笑)。
一番泣けるのは最後の「ねぇ、マリモ」です。
ただ「犬を飼うってことは、そんな甘っちょろいもんじゃねーんだぞ」とも思ったな。
そう思っていた理由は、谷口ジローの「犬を飼う」という作品を過去に読んでいたからです。
- 作者: 谷口 ジロー
- 出版社/メーカー: 小学館
メディア: 単行本
これは著者自身の体験を基に書かれた「犬を看取る」物語です。
この中で胸を打つのは、歩くこともおぼつかなくなった犬と飼い主が過ごす濃厚な時間。確実に近づく「死」を前に人と犬とがそれぞれの思いで散歩し、公園で休息する様には静かな感動がありました。
犬を飼うことは容易(たやす)い。けれど最後まで面倒を見るということは容易ではない、と訴えつつ、それでも「犬を飼う」ということがいかに人生を豊かにしてくれるかを教えてくれる作品です。
子供のための「童話」と大人のための「私小説」。せっかくですから合わせてご覧になることをオススメします。
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