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刑事コロンボ/死者の身代金 [2005年 レビュー]

刑事コロンボ/死者の身代金」(1971年・アメリカ) 監督:リチャード・アーヴィング

 前作から4年後。TVシリーズ化が決定して製作されたパイロット版。
 作品の宣伝文句は「人質なき誘拐事件にコロンボが挑む」でした。

 舞台劇がベースだった前作に比べると、ヘリコプターでの追跡やセスナのフライトシーンなど動きの派手なシーンが盛り込まれ、また脚本も【犯人V.S.コ
ロンボ】、【犯人V.S.義理の娘】という二重対立構造に仕立ててあり、「これは“犯人V.S.刑事”という単純な謎解きドラマじゃないぞ」という作り手の心意気が伝わる作品に仕上がっています。
 またコロンボのキャラクターは「こざっぱりした地方刑事」から「もっさりとした田舎刑事」に改められ、誰もが知るコロンボのスタイルがこの作品で確立。
 ただ内容に関しては前作の方が完成度は上。いくつか突っ込みを入れたくなる展開がありました。
 

【事件】夫殺し
【犯人】被害者の妻、レスリー。弁護士。
【動機】出世狙いの結婚だったことを夫に知られ、離婚を迫られた。
【死因】22口径の銃で撃たれたことによる失血死?
【犯行の経緯】
 ・自宅に帰ってきた夫を待ち受けるレスリーは椅子に座った状態で立っている夫を撃った。
 ・遺体はシートに包み、夫のクルマで外へ運び出し、崖上から海に投機。クルマはそのまま残し
  て自宅へ戻る。その途中、事前に作っておいた身代金を要求する脅迫状(自宅宛)を投函。
 ・誘拐事件として捜査するためFBIが自宅へ。犯人からの電話を録音する準備など整ったところ
  へ夫から電話が入る。が、これも事前に作っておいたテープをオフィスの電話の自動発信装置
  を使って流した自作自演。
  (注:最初に捜査官が電話を取ってしまうのは明らかな制作上のミス。テープと会話をしなけれ
  ばならないレスリーがそこまで計算してテープを作ることなど不可能だ)。
 ・身代金の受け渡しは、レスリーが指定の場所までセスナで飛び、犯人の合図する地点で金の
  入ったバックを落とす算段。FBIとコロンボはヘリで追跡する。
 ・しかし、その身代金を入れたバックは、レスリーがセスナに乗り込む前、空港の個人ロッカーで
  同じデザインの空のバックとすり替える。
 ・レスリーは上空からフラッシュランプを自ら落とし、さも犯人から合図があったように見せかけ、
  続けて空のバックを投げ落とす。
 ・指定された箇所に配置した警官やヘリのコロンボたちが現場へ急行。しかし空のバッグが残っ
  ているのみでFBIには「犯人を取り逃がした」と思わせた。

【コロンボの着目点】
 ・身代金の受け渡し日時を伝える夫からの電話(テープ)があったとき、夫の身を気づかう言葉を
  レスリーが何も言わなかった。
 ・金を入れるバッグをFBIが提供しようとすると、レスリーは「自分で用意した」と言って断わる。
 ・急いで逃げる必要のあるはずの誘拐犯は、なぜ金だけ抜いてバッグを残したのか。
 ・夫の死体が見つかったとFBIが報告した際に、「どこで?」も「どんな状態?」も一切質問しなか
  った(これは、「どんな状態か知っているから聞かない」という、どの犯人もが犯す典型的なミス
  のひとつ。前作の「帰宅時に“ただいま”と言わずに帰ってきた」のと同類)。
 ・遺体に残された銃弾が22口径だったこと。殺人の場合は通常32か38口径の銃を使う(らしい)
  が、それでも22口径を使った理由は「銃弾を貫通させたくない。つまり犯行現場に証拠となるも
  のを残したくなかったのだろう」と推理する。
 ・弾道の角度が下から上へ向かっていた。ここからコロンボは、犯人は座っていて、被害者は立
  っていた。それはどんな状態なんだろうとレスリーにカマをかける。

【犯人の犯したミス】
 ・身代金受け渡しが終わり、FBIが自宅から撤収したあとリビングで鼻歌を唄っているところを義
  理の娘に目撃される。
 ・オフィスにある電話自動発信機をコロンボに自慢してしまう(ここはかなりマヌケだと思うな)。
 ・遺体投棄現場に残してきた夫のクルマのシートが、男性が運転していたとは思えないほど前
  に出ていた(レスリーが運転していたため)。しかもクルマのキーを持ち帰ってしまった。

【ドラマのオチ(犯行を認めざるを得ない犯人にとっての袋小路】
 ・義理の娘に「犯人はあなた」と追い詰められたレスリーが、義理の娘を買収しようとする。
 ・これはコロンボと娘の作戦(一種のおとり捜査だと思うが)で、「金に執着するアンタだからこ
  そ、娘も金で黙らせることが出来る、と思っちまったんだ」と言われレスリーは絶句。

 本作で一番ダメだったのは、身代金のバッグを回収したシーン。
 ドラマの時間の都合で無視したものと思われるが、現場確保も何も無く、しかも回収したバッグを皆が素手で触る始末。犯人のクルマのタイヤのあとが残っているかもしれない現場にヘリコプターで降りるのもナシでしょう。こういうずさんな設定の脚本はちょっと許せないな。
 いずれにしても分析すればするほど面白い刑事コロンボ。勉強になりますわ。


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コメント 2

はるちー

レビューを拝読し、刑事コロンボのDVDボックスを買いたくなりました。まだ「24」も観終わっていないのに(笑)。
by はるちー (2005-09-20 00:56) 

ken

「24」が終わるまでガマンしてください(笑)
nice!ありがとうございます。
by ken (2005-09-20 14:19) 

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