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刑事コロンボ/構想の死角 [2005年 レビュー]

刑事コロンボ/構想の死角」(1971年・アメリカ) 監督:スティーヴン・スピルバーグ

 シリーズ化第1作は「激突!」撮影直前のスピルバーグが監督をしていました。
 それにしても初回から順を追って
観ると、いろいろなことが分って面白い。
 例えば、犯行現場で犯人が証拠となるようなものを忘れそうになるシーンが過去3本必ず入ってる。これはサスペンス(あるいはミステリー)の掴みとして、とても効果的なシーンだと思います。なぜならその瞬間観客は犯人側の心理になっているし、こんな凡ミスを犯さない犯人がコロンボの相手であると観客に認識させるわけです。なんと見事なアイデア。
 さて今回僕はスピルバーグらしさにも注目しました。まずはファーストカットのクレーンバックが「らしい」。「宇宙戦争」でのハイウェイを走るワゴン車のシーンを思い出しました。スピルバーグはクレーンカメラのワンカット撮影が昔から好きだったのね。他にもいくつかのシーンで「らしさ」を発見します。ぜひそんなところも楽しんでみてください。
 ちなみに犯行のトリックはこれまでで最高のアイデアでした。

【事件】ミステリー作家、フェリス殺し
【犯人】被害者の共同執筆者、フランクリン
【動機】実際に小説はフェリス一人で書いていた。そのフェリスが突然コンビ解消を申し出た。
【死因】銃による射殺
【犯行の経緯】
 ・オフィスで一人執筆していたフェリスのところへフランクリンが訪れ、サンディエゴの別荘へ行こ
  うと誘う。
 ・「今夜、妻
と食事に行く予定がある」と嫌がるフェリスを強引に誘い、クルマで出発しようとす
  る。が、「オフィスにライターを忘れた」と行ってフランクリンは一旦オフィスに戻る。
 ・フランクリンはオフィスを荒らし、引き出しの中にあるメモを一枚残す。
 ・別荘に着く直前、フランクリンは食料の買出しをするため馴染みの店に立ち寄る。すぐ終わ
  るからとフェリスはクルマで待たせる。
 ・小売店の女主人に「今日はどんな女性と一緒なの?」と聞かれたフランクリンは「今日は一人
  だ」と嘘をつく。
 ・女主人に買い物メモを渡し、品物を揃えてもらっている間にフェリスの自宅に電話をしフェリス
  の
妻と話す。「コンビ解消で仲違いしていたが、今日オフィスに行って仲直りをしてきたよ」
 ・別荘に到着。妻との約束を反故にするのが心苦しいというフェリスに「明日締め切りの原稿が
  上がらない、と電話しろよ」とフランクリンが言う。
 ・それに従い、自宅の妻に電話をするフェリス。まだオフィスにいて仕事が終わらない、と話して
  いる最中にフランクリンがフェリスを撃つ。
 ・電話で話していた妻が驚いて警察に通報。オフィスは荒らされているがフェリスの遺体がない
  状態になる。
 ・フェリスの妻から連絡を受けたフランクリンは、フェリスの遺体をトランクに入れて
ロスに戻る。
 ・オフィスでコロンボと対面したフランクリンは、きっとフェリスが取材していたシンジケートの一味
  に拉致されたのでは?と進言する。フランクリンがオフィスに残したメモは、数あるシンジケート
  のボスの名前を羅列したものだった。
 ・自宅に戻ったフランクリンはフェリスの遺体を自宅前に放置し、コロンボに電話。
 ・やってきたコロンボに「フェリスの仕事を引き継ぐなというシンジケートからの忠告だろう」と持論
  展開する。

【コロンボの着目点】
 ・フェリスのオフィスで見つかったシンジケートのメモが、まるでジャケットの内ポケットにでもはい
  っていたような折り目がついていた。オフィスでタイプしたならこんな折り目はつかないはず。
 ・事件の連絡を受け、急いでロスまで戻るならばクルマではなく飛行機の方が早かったはず。な
  のにフランクリンはなぜクルマで戻ってきたのか?
 ・遺体が自宅の前にある、とコロンボに連絡をしたフランクリン。その電話のそばに開封された郵
  便物がいくつもあった。遺体を発見し気が動転しただろう人間がはたして郵便物を開けるか?

【第2の殺人(シリーズ初)】
 ・別荘近くの店の女主人がフランクリンに接近してくる。
 ・フランクリンに興味のあった女主人はあの日、「まさか一人で別荘へ来るはずがない」と疑い、
  フランクリンが電話をかけているすきにクルマを覗き、助手席のフェリスを目撃していた。
 ・事件を新聞で知った女主人はフランクリンがフェリス殺しの犯人と確信し金を無心する。
 ・15000ドル要求されたフランクリンは、その金を用意しサンディエゴまで行く。このときシャンパン
  2本持って出かける際、コロンボと遭遇している。
 ・女主人の家で食事をし、シャンパンを飲む2人。そのシャンパンの空き瓶で女主人を殴殺。
 ・遺体を近くの湖に遺棄し、手漕ぎボートを横転させる。
 ・翌日、コロンボ登場。表向きは今度の休暇でこの辺の別荘を借りようと思って下見に来た、とフ
  ランクリンには言う。

【さらに犯人の犯したミス】
 ・湖で上がった遺体を、知らない女だとコロンボに言う。しかし女主人に以前サイン本をプレゼン
  トしていた。
 ・別荘周辺での楽しみは?と聞かれたコロンボに「夜の楽しみは本を読むか寝るしかない」と言
  う。それを聞いたコロンボは「じゃあ、昨日は何をしてたので?昨夜こちらに電話をしたのにア
  ナタは出なかった」と突っ込まれる。
 ・女主人の部屋でシャンパンのコルクを発見されてしまう。
 ・2日の間に15000ドルを出したり入れたりしている。
 ・フランクリンとフェリスはお互いに多額の生命保険をかけていた。

 殺人事件の捜査で必ず言われるのが「被害者が死んで、得をするのは誰か?」という点だ。
 この「構想の視覚」の場合は、フランクリン意外に得をする者がなく、コロンボは早い段階でフランクリンが犯人だと確信してストーリーは展開している。
 また第二の殺人もフランクリンの仕業だと断定できたことによって、第一の殺人のトリックが判明するという仕組みになっていた。巧いです。

 でもひとつだけ気になることが。
 別荘に誘ったとき、フェリスに妻との約束がなければサンディエゴの別荘にもホイホイ着いていっただろうし、妻に「まだオフィスにいて…」とウソの電話をする必要もなかったはず。うーむ。


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TAO

ディアゴスティーニ版『刑事コロンボ』をやっと観終わりました。
第一作目が99分、二作目が95分。なので95分だとばっかり思っていたら、76分だったので、もうひと波乱あるのか? と、疑心暗鬼で観てたら終わっちゃいました(笑)
でも、クオリティは相変わらず高く、犯人のちょっとしたお間抜けさが、今回、最後の最後で結末に結び付くのが素晴らしかったです。
by TAO (2007-11-18 06:58) 

ken

そうか。エピソードによって放送時間が違うのですね。
それにしてもここまで詳しく分析した記事を書くなんて大変だなあ。
…と、まるで他人事(笑)。
僕はこれ以降、未見のままです。もったいないなあ。
でも時間も無いしなあ。もはや老後の楽しみかも(笑)。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-11-18 11:48) 

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