メゾン・ド・ヒミコ [2005年 レビュー]
「メゾン・ド・ヒミコ」(2005年・日本) 監督:犬童一心 脚本:渡辺あや
設定はおもしろい。
オダギリジョー、柴咲コウ、田中泯、というキャスティングもいい。
海辺のペンション風老人ホームのプロダクションデザインも良かった。
でも脚本はどうだろう?
先に断わりを入れておくと僕はゲイではありません。ただ10年近く、ゲイのマスターが営むスナック(安易にゲイバーとは言わない。本人がそういう呼び方を一度もしなかったから)の常連だったことはあります。それを踏まえて。
脚本を不満に思った最大の理由は「ゲイのこと分かって書いてる?」の一点です。
もちろんホンモノのゲイがこの映画を観て「よく出来た映画ね」と言う可能性もあるけれど、僕が知る限りにおいて、水商売に従事していたゲイの言葉の選び方(セリフ)はこんなに生易しくありません。今で言うなら細木数子のコメントぐらい意外性と信憑性と重量感があるんです。それがこの作品では微塵も感じられなかった。例えば田中泯さんに言わせたセリフにしても「安いオカマのボヤキ」でしかないものが沢山あります。
ヒミコ(田中泯)と娘の沙織(柴咲コウ)が初めて対面するシーン。ヒミコは新しいアルバイトかと思って声をかけた沙織がすごい形相で自分を睨みつけるのを見て、「あなた、もしかして…」と言います。もちろん「あなた沙織?」という意味ですが、見ている人間は100人が100人分かります。だから「もしかして…」まで言わせる必要はまったく無いんです。これはヒミコの気持ちを語らせた“説明セリフ”で、脚本の勉強をすると一度は「こんなの書くんじゃねー!」と怒られる類のセリフなのです。なんなら言ってみて下さい、「もしかして…」。最近この副詞を単体で使ったことがありますか?きっと無いと思います。
脚本を書くにあたっては当然ゲイの取材もしただろうに、その成果はどこにも見当たりませんでした。まったく残念。
また欲を言うなら、泯さんにはずーっと同じテンポで台詞を言って欲しかった。ちょっとゆっくり過ぎない?ってくらいのスピードで通していれば、死に行く老ライオンのような“気高さ”を表現できたのに、と思いました。登場してから最初の台詞を言うまでの泯さんは鳥肌が立つほどの凛々しさだったからね。
ゲイたちのセリフに期待した以上のものは何一つなかったのですが、沙織のセリフにはひとつだけ、とびきりいいセリフがありました。ネタバレになるのでシチュエーションは割愛しますがあるシーンで
「触りたいところ無いんでしょ?」
と、言います。唯一このセリフだけは秀逸だったと思います。
柴咲コウ。
最近この人は何やっても「柴咲コウ」になっちゃってる気がします。
木村拓哉がどんな役をやってもキムタクでしかない状態に近いのでちょっと危うい気がしました。
オダギリジョー。
映画に付き合ってくれた女性が「一度もベルトしてませんでしたね」と言って僕を驚かせました。女性の目線ってやっぱりスゴイ。それにしてもどうしてなんでしょうね。ゲイはベルトしないのかな?あ、だからオダギリジョーの話(笑)。役者としての“振り幅”がここ数年で拡がってますね。ますます味が出てきました。
田中泯さん。
素敵すぎて絶句です。泯さんじゃなかったらこの作品は成立してないんじゃないですかね?
他に誰をキャスティングすればいいのか僕は完全にノーアイデアです。
見てないですが寄ったということで。
もうそろそろ。
映画も復活したい!
2ヶ月くらいみてないと思います。
DVDもビデオも映画館も。
by ecco (2005-10-08 21:58)
こんばんは
見てくれましたね、実はkenさんがどんな感想を持つのか非常に楽しみでした。
渡辺あやさんの脚本に対するコメント
自分の事のように肝に命じました(何で!)
by 魚河岸おじさん (2005-10-08 22:17)
>eccoさん
2ヶ月も離れると、逆にもう観なくて良いかもって気分になりませんか?
僕だったらそうなりそうな気がします(笑)。
nice!ありがとう。早く復帰してください。
>魚河岸おじさん
ははー、まだ恋してますね。あやさんに(笑)。
ところで、映画鑑賞会の2回目を年内にやろうかと思っていますが
いかがでしょうか?
by ken (2005-10-08 22:41)
十二月は闘いの日々が続きますので
それまでに是非開催しましょう!
まずは、東京国際映画祭での「力道山」楽しみましょう。
なんて、軽い告知をしてみたりして(笑)
by 魚河岸おじさん (2005-10-09 14:24)
↑
あ。
魚河岸おじさんだ!
意味はないけどそのうち
ゆる~い映画鑑賞会でお会いできればと・・・w
by ecco (2005-10-09 15:38)
>魚河岸おじさん
今月中にやりましょう。僕も来月以降は映画を見るヒマもないくらい
忙しくなると思います。別便でメールします。
>eccoさん
ぜひご参加お待ちしています。
ところでこのアイコンは??? nice!サンキュ。
by ken (2005-10-09 23:43)
確かにオダギリジョーはベルトしてなかったですね。(笑)
背筋が伸びてて、スタイルがいいなあと思いました。
田中泯さんも素敵でしたね。
by kotori (2005-10-11 23:08)
オダギリジョーのスタイリストさんはいい仕事してたと思います。
白いパンツのおしりがキュッと上がった感じは、かなりのゲイの方々が
「ステキ♪」と思ったのではないでしょうか(笑)
by ken (2005-10-12 00:09)
うん。あいかわらずいいレビューですねぇ。
柴咲コウについて全く同感です。どんなジャンルの映画に出ても演技というか オーラが一緒。
ある意味すごいんですかね?オダギリジョーはこの間 SHINOBIを見てきました。いい俳優になりましたね。彼が出ている映画は楽しみです。田中泯さんは個人的に今大注目してます。踊りを見に行きたいです。エネルギーを感じます!!
by (2005-10-12 16:15)
「SHINOBI」は興味あるんですけど、劇場に足が向くほどではありません。
もしつまんなかったらどうしよう!とおっかなびっくりになってます。
田中泯さんの踊り、僕も観てみたいと思いました。
nice!ありがとうございます。
by ken (2005-10-12 16:21)
SHINOBIはぜひDVDで!!(笑)
そういえば"ファイナルファンタジーⅦ アドベントチルドレン"みましたよ。
人間の描写はかなり良くなりましたね。後はCG特有の”軽さ”が克服できるといいんですが。
子供たちが気持ち悪かったなー。後群衆の動きが不自然。お前らいつまで逃げてんだとw。ストーリーは予想通り、ワケワカメ、でした。
by (2005-10-12 17:29)
DVDでいいのかぁ~(笑)。
子供たち、気持ち悪かったでしょ?ありえないですよね。
by ken (2005-10-13 00:42)
こんばんは。
なるほど、kenさんの記事を読むとそうかもしれないと思います。
でも、オダジョーと田中泯はよかったですよね~。(ここは一致かな?)
by coco030705 (2006-07-10 18:07)
一致です(笑)。
by ken (2006-07-10 18:18)