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風の丘を越えて~西便制~ [2006年 レビュー]

風の丘を越えて~西便制~」(1993年・韓国) 監督:イム・グォンテク 脚本:キム・ミョンゴン

 「桑の葉」を書いたときに瑠璃子さんに紹介していただいた本作を観てみる。
 (そういや「風と共に去りぬ」を書いたときは「欲望という名の電車」を薦められましたが、こちらはDVD買うだけ買ってまだ観てません。スミマセン)

 僕はこの監督の「キルソドム」(1985年)という映画を過去に観ていて、実はこれがすごく面白かったので今回も密かに期待をしていました。
 「風の丘を越えて」は朝鮮の口承伝統芸能“パンソリ”を生業とした旅芸人の家族の物語。
 で、どうだったかと言いますと、とにかく濃いです。骨太です。そして日本人にはなかなか理解しにくい精神が描かれています。
 
 この作品を観るためにはまずはパンソリとは何かを知っておくべきで、Wikipediaなどを参考に予習するといいでしょう。パンソリは朝鮮固有の芸能ですが、日本で言うところの“浪曲”と似ているかも知れません。
 もうひとつ予習すべき点は朝鮮民族が持つ「ハン」という精神です。
 「ハン」は日本語に訳されたとき「恨」という文字に置き換えられることが多く、こと日本人からすると“植民地時代の「恨み」をエネルギーに変える精神”などと誤った解釈をしがちなのですが、これはそんなに底の浅い話ではありません。
 もちろん文字通り“底の浅い”僕がいくら勉強しても解説など出来ないので、「ハン」に関しては字幕翻訳家・根本理恵氏のテキスト「ハンの感覚に見る韓国のメンタリティ」を参考にして頂ければと思います。
 ただしこのテキストを読むと完全にネタバレしてしまいます。が、この作品に関してはガッツリ予習をした上で観るほうがいいと思います。理解度が大きく違いますから。
 反対に何の興味も抱かなかった人は映画を観る必要ありません。ね?便利なテキストでしょ?(笑)。

 僕はこの作品を観て、今までに観てきた韓国映画の奥行きが実はもっともっと深いのではないかと思いました。そして「ハン」という精神を知らずして韓国映画を正しく評価することなど出来ないのではないかと。
 きっと僕たちは隣国の友人のことを何も知らずに、キムチ食べたり、マッコリ飲んだり、韓国映画を観たりしているに違いありません。こっそり反省。
 イム・グォンテク監督の作品も要チェックです。

風の丘を越えて

風の丘を越えて

  • 出版社/メーカー: ビデオメーカー
  • 発売日: 2001/11/22
  • メディア: DVD

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コメント 5

魚河岸おじさん

知ったかぶりのボクも非常に興味が沸いてきました。
読んだあとに見たいと思います。
by 魚河岸おじさん (2006-04-26 19:12) 

ken

魚河岸おじさんの感想もとても楽しみです。
by ken (2006-04-27 15:30) 

瑠璃子

うっひょーしばらくブログ引退していたらこんなことに…。
見られたんですね。うん。濃かったと思います。私が見たのは高校生のときなのでほとんどネタとしか思えなかったですね。で、根本敬氏の「ディープコリア」等を読んで、そんな底の浅い見方しかできなかった自分を反省しましたですよ。
それにしても邦題はちょっとなあ…。内容とそぐわないきがする…。
by 瑠璃子 (2006-05-17 17:13) 

南郷力丸

 私、基本的に韓国映画は性に合わないのですが、イム・グォンテク監督とキム・ギドク監督は気にいってます。
 というか韓国映画を見るきっかけになったのが、この「西便制」です。彼の地に行く機会があれば、映画の中で一家が珍道アリランを唄って歩いていたような農村風景の中に行ってみたいです。
by 南郷力丸 (2006-05-17 19:30) 

ken

>瑠璃子さん
 あれま、引退してたんですか!(笑)
 根本敬氏の「ディープコリア」はやっぱり読むべきなんでしょうかね。
 それと、この邦題はあんまりですよね。
 nice!ありがとうございます。

>南郷力丸さん
 あの長回しシーンの風景はあきらかに日本じゃなくて朝鮮半島って感じが
 していたと思います。韓国へははるか昔に一度行ったきりですが、僕も
 再び行ってみたいと思いました。
by ken (2006-05-18 13:28) 

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