山の郵便配達 [2007年 レビュー]
「山の郵便配達」(1999年・中国) 監督:フォ・ジェンチイ 脚本:ス・ウ
1980年代の中国湖南省。広大な山間地帯で郵便配達に従事した父と、その仕事を引き継ぐことになった息子の物語。これは1999年の中国アカデミー賞で最優秀作品賞に輝いた作品です。
家族の中にあって最も会話の少ない関係にある父と息子。そんな2人も生涯で何度か濃厚な時間を過ごすタイミングがあります。それは息子が父親と肩を並べるか、あるいは追い抜こうとするとき。
息子を持つ世界中の父親はいつの日か必ず息子に負ける瞬間を迎えるわけですが、それはかつて自分が通ってきた道でもあるわけで、自分の時代が終わり息子の時代が来ると悟った瞬間に父親は優しく雄弁になるのです。
この作品で描かれているのは、まさにその“生涯に何度もない”父と息子の濃厚な時間。
僕は子供を持たない中年なので、子供に負ける複雑な心境を知りません。でも亡き父との関係を思い出してこの映画は心に染みました。
父と息子とで話す仕事のこと。互いのこと。そして母親のこと…。
世の中の「男に生まれた」人たちにとっては、きっと何か感じるところのある作品だと思います。
この作品の見どころはこれ以外にあと2つ。
ひとつは中国のロケーション。この手の作品ではいつも「反則だろ~」と思っちゃうのですが、なにより景観に圧倒されます。その牧歌的な風景が作品全体のトーンを落ち着いたものにしていて、地味なストーリー展開をうまく際立たせているように思います。
もうひとつは“次男坊”と呼ばれる愛犬(シェパード)の名演技。
感心したのはドッグトレーナーの影が一切見えなかったこと。このシェパードは父と子を演じた俳優のどちらかの飼い犬じゃないかと思うほど、何の違和感も無くカメラの前に立っていました。
この作品に中国アカデミー作品賞を獲らせたのは、エンディングで見せた“次男坊”の演技だと僕は思います。
間違いなく地味です。でも確実に共感できる1本。
父と息子の関係というのが、とても興味深いです。
以前武田鉄也氏が、「子供の頃から怖くてしょうがなかった親父と、高校生くらいのときケンカしたら勝っちゃった」そうで、その瞬間から何か劇的に変わったといっていました。
母と娘の関係も興味深いけど、「家長」「強きもの」としての父と息子の関係って、とても深そうですね。
犬の名演技とともに(笑)、見たくなりました。
by Sho (2007-02-04 19:17)
父と息子の関係は、母と娘のそれとは比べ物にならないくらい
気まずくて、ストイックです。
女性からは想像も出来ない世界を楽しんでください。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-02-04 23:37)