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奇蹟の輝き [2007年 レビュー]

奇蹟の輝き」(1998年・アメリカ) 監督:ヴィンセント・ウォード 脚本:ロン・バス

奇蹟の輝き

奇蹟の輝き

  • 出版社/メーカー: 日本ヘラルド映画(PCH)
  • メディア: DVD

 このDVDは今から4年前、僕が40歳になったときに旧い友人が誕生日プレゼントとして贈ってくれたものだ。
 添えられたカードには「私が大好きな映画。何度観ても毎回泣いちゃう」とあった。
 DVDを見ると裏ジャケには大きくロビン・ウィリアムズの顔がある。けれど僕はこの作品のタイトルすら知らなかったので、DVDの解説を読んでみた。

 「事故で命を落とし、天国に召されたクリスは、そこが目を奪うような壮麗で、輝かしい楽園であることを知った。(中略)一方、地上では、子供たちを不慮の事故で亡くし、さらにクリスまでも失った最愛の妻が、そのショックに耐え切れず自殺をしてしまう。その結果、彼女が地獄に落ちてしまったことを知ったクリスは、彼女を救い出すために天国から地獄への壮絶な旅に出発した。それは、深い愛の力がもたらす奇蹟の旅だった…」

 DVDをくれた友人は、優しい夫と母親思いの可愛い2人の息子に恵まれ、僕より早く幸せな40歳を迎えていた。
 かたや僕は40歳になる2週間前に父を亡くし、しかも当時のパートナーとは完全に信頼関係を失っていて、プライベートはこれ以上ないほど荒んでいた。
 そんなときにこんな映画は観られなかった。きっと誰にも感情移入できないし、共感も出来ないはずだった。そんなわけで、贈ってくれた友人には悪かったけれど、このDVDは永年我が家のラックの中でひっそりと眠ることになってしまった。

 それから4年半が過ぎた昨夜。僕はようやくこの映画を観ることにした。実を言うと「結婚したら2人で観よう」と心に決めていたからだ。結婚式から1週間だった昨夜は、僕たち2人にとっても久しぶりにゆっくり出来る夜だった。

 これはキリスト教の「自殺は罪」という教えをベースにした“スピリチュアル・ファンタジー”で、しかも夫はそのルールを越えて地獄へ堕ちた妻を救いに行く、というもはやスケール感すら分からないほど壮大な物語である。
 敬虔なキリスト教徒の中には、「そうはいっても自殺は罪」とこの物語を認めない人がいるのかも知れないけれど、無宗教の僕は、クリスの行動を否定する立場にいない。言い換えるなら「否定のしようがない物語」なのだ。だから僕たちはただただ呆然とクリスの行動と体験を見守るしかなくなってしまう。
 ただし、「否定のしようがない物語」は「文句のつけようがない物語」という意味ではない。
 ソファーに寝転がって観ていた妻は途中で寝てしまった。どのタイミングで寝たのか僕は気が付かなかったけれど、寝てしまった理由を妻は「気持ちは分かるけど意味が分からなかったから」と言った。寝てた割には的確な評価だ。
 この作品は「ファンタジーである」と認識していないとどうにもついていけないと思う。それは天国や地獄を描写したシーンのことではなく冒頭からそうなのだ。妻が「分からなかった」と言ったのは現実世界のシーンであり、ある程度のストーリーを承知していないと確かに分かり難い展開と編集だったと思う。
 
 アカデミー視覚効果賞を獲得したビジュアル部分は見応えがあった。
 特にクリスのたどり着いた天国は、“妻が描いた絵画の世界だった”という設定は秀逸で、とにかく美しい。
 また妻が堕ちた地獄は“罪人の吹き溜まり”とでも言いたげなプロダクションデザインで、その発想に感心した。美術チームもアカデミー賞にノミネートされたが(「恋におちたシェークスピア」に破れ)受賞になっていないのは残念なところだ。

 俳優たち。
 映画の冒頭、青年に扮したロビン・ウィリアムズが気持ち悪くて“げっぷ”が出そうになるが、相手役のアナベラ・シオラの輝かしい美しさがそれを押し戻す。
 アナベラ・シオラの演技とメイクは全編を通しての見ものだ。彼女は設定ごとに大きくヘアメイクを替え、幸福の絶頂期と不幸のどん底にいる1人の女性を見事に演じ分けている。
 僕の妻は寝てしまったけれど、女性にはウケる作品だろう。
 夫と子供を持つ女性にはオススメ。


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コメント 4

**feeling**

夫と子供が出来たら見ましょうかね。
by **feeling** (2007-07-17 08:31) 

ken

ぜひ(笑)。
今は他に観る映画がありそうですもんね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-07-17 10:38) 

サラダ

このレビューを読ませていただいて
とても面白そうだな~と思いました。
今度ぜひ観てみたいです。
by サラダ (2007-07-17 18:17) 

ken

女性の感想をぜひ聞いてみたいです!
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-07-17 22:07) 

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