嵐を呼ぶ男 [2007年 レビュー]
「嵐を呼ぶ男」(1957年・日本) 監督・原作・脚本:井上梅次 脚本:西島大
雪村いずみや江利チエミ主演の歌謡映画を撮ってきた井上梅次に、日活が当時売り出し中だった石原裕次郎を託したと思われる完全無欠のアイドル映画。
僕が生まれる前には既に「ベタなアイドル映画の王道は確立されていたんだな」、と感心するほど本当によく出来てます。ただし作品としてじゃなく、構造として。その証と言うべきか1966年には渡哲也、1983年には近藤真彦主演(驚いたことに監督は井上梅次)でリメイクされました。
アイドル映画の基本は「悩める主人公を理解するのはワタシだけ」という構造にすることですね。
つまり観客は「パトロン」であって、映画の着地点は「パトロンだけが理解していた主人公の立場を、登場人物全員で共有する」ということ。これがパトロンのカタルシスであって、ホッと肩をなでおろし劇場を後にするという図式になるわけです。この構造のいいところは、何度観ても同様のカタルシスを得るに至るという点で、「水戸黄門」や「大岡越前」あるいは「遠山の金さん」などが日本人にウケる理由と同じなんじゃないでしょうか。
作品としての完成度は、ドラマーを主役にしながらドラム演奏の絵と音が合っていないという点で、最悪と言わざるを得ません。
特にドラム合戦は酷すぎ。敵役の及川敏夫はスネアをまったく叩いてないし、最大の見せ場となる裕次郎の歌い出し部分はリテイクすべきほどのNGカット。監督にとっては生涯心残りとなるワンシーンじゃないかと思います。
それにしても裕次郎がカッコイイ。
昭和30年代にこれほど体躯が良く、愛らしい笑顔を持つ人がいたという事実は、オードリー・ヘップバーンが「ローマの休日」に主演したのと同じくらいの“奇跡”でしょう。
日本映画史を語る上で避けては通れない重要な1本。
見てはいないけれど
ドラムをたたきながらの歌うシーンとか
なぜか知ってますよね。
裕次郎の作品
ちゃんとみてみようかな。
by ecco (2007-08-19 07:23)
小学生の頃、ものすごく裕ちゃん好きでした。
あの頃は、音と動きが合ってないとは気付かなかったな~(鈍い)。
マッチのリメイクは嘘でしょと思いましたが、渡さんのもあるんですね。
久々に裕ちゃん観たくなりました。
by (2007-08-19 07:50)
>eccoさん
映画を観たことはなくても、「オイラはドラマー、ヤクザなドラマー」
って歌は聴いたことがあるでしょう?
映画では突然この歌が誕生するので、おったまげます(笑)。
nice!ありがとうございます。
>ERUNさん
絵音は笑っちゃうくらいひどいですよ~。
僕は渡哲也版が観たくなりました。
by ken (2007-08-19 11:03)