アラビアのロレンス/完全版 [2008年 ベスト20]
「アラビアのロレンス/完全版」(1988年・イギリス) 監督:デヴィッド・リーン
観よう観ようと思いながら未だに観ていない歴史的大作シリーズ完結編。
「風と共に去りぬ」(1939年・アメリカ)、「ベン・ハー」(1959年・アメリカ)に続いて、ようやく「アラビアのロレンス」に手を出しました。長かったあ。いや映画じゃなくて、この企画が(笑)。2005年の6月に「ベン・ハー」でスタートを切って、今日ゴールするまで、まさに観よう観ようと思いながら2年半ですからねえ。
これらの作品に手が伸びない理由は皆さん一緒でしょうけど、まず「長尺である」ということ。そして「今さら観る理由がない」ってことでしょう。
ちなみに「風と共に去りぬ」231分。「ベン・ハー」240分。「アラビアのロレンス」227分。まあ見事にどれも4時間コースですよ。4時間言うたらアナタ、東京駅から大阪のNGKまでビャーっと行って、吉本新喜劇観ながら「アホやなーこいつら」言うくらいのことは出来ますからね。ついでに「たこやきくん」のたこ焼きも三舟くらい食えてるっちゅーねん。…とまあ冗談はさておき。
「アラビアのロレンス」がオリジナル版(1962年)から完全版(1988年)へと生まれ変わった経緯は、allcinema onlineの解説に詳しいのでそちらをご覧頂くとして、いろんな意味で敷居の高い本作を観た率直な感想は、他の2本とも共通するのですが、やはり「観ておいて良かった」に尽きます。
本編。
歴史劇だと思って観始めたら、なんとタイトルバックには一台のオートバイが映っていて、しかも現代風の青年がそれを走らせるシーンからスタートします。それはあまりに意外なオープニングでした。
ところがその青年は事故によって亡くなり、次の葬儀のシーンで彼こそが主人公のロレンス(ピーター・オトゥール)であることが分かります。そして葬儀の列席者の何人かにロレンスのことを語らせ、「はたしてロレンスとは何者なのか?」という疑問を抱かせた上で本編に突入する流れになっていました。
巧いと思います。
葬儀を導入にして主人公の人となりを語る手法は今となっては目新しくありませんが、少なくとも僕には意外な展開で思わず引き込まれてしまいました。しかもこのオープニングは“エンディング”でもあるところが巧いのです。その説明は最後にするとして。
本編の見どころはまずなんと言ってもロケーションです。
CGてんこ盛りの映像にすっかり慣らされた僕たちは、脳天を殴られたような衝撃を受けること間違いありません。
特にアラブ砂漠地帯でのシーンは驚きの連続。地平線から現れる人影を長回しで見せたり、列車の脱線事故を実物で再現したり、圧倒的な人数の戦闘シーンやキャンプのシーンなど、CGが無い時代ですから当たり前なのですが、とにかく観るものすべてがホンモノだという事実。
そして正当な構図で撮影された美しいシーンの数々。これ以上無いだろうと思わせるほど完璧なショットが次から次へと出て来るのです。ストーリーに興味を持てなくても、絵だけ観て欲しい。それだけの価値がこの映画にはあります。僕はこのロケーションで「スター・ウォーズ」の撮影が出来たら、新三部作は随分と印象の代わったものになっただろうなと思いを巡らせました。そんなEP1~3も観てみたかった。
30代の男たちはロレンスの生き様を観ておいてもいい。
まず「運命」を信じるか否か。
運命は自ら切り拓くものか、あるいは流れに任せるものか。ロレンスは一度ある場所で「運命など無い」と声高に叫びますが、後にそれを改める事件が起きる…。
さらに重要なのは「過信」にまつわるエピソード。
劇中、ロレンスの“ある挫折”を請け負うことにした、アラブの族長が傷心のロレンスにこう告げるシーンがあります。
「戦士の仕事はもうなくなった。取引は老人の仕事だ」
勢いのある若者だけが世の中を動かしているわけじゃない、という痛烈な批判。今やどちらでもない僕には充分過ぎるほど心に染みた一言でした。
ラストは意外なほどあっけない。
しかし昔と違って今は、ボタン一つでオープニングへ戻ることが出来ます。
エンドマークを確認したあと、ぜひオープニングを観て下さい。葬儀のシーンに登場した人物がロレンスとどんな関係にあったか。それを知った上で観ると彼らの言葉に重みが出て、これが真のラストシーンになるからです。
インターミッションを挟まない長編であるため、なかなか「一気」というわけには行かないかも知れませんが見応えは充分。時間を見つけてどうぞごゆっくり。
観よう観ようと思いながら未だに観ていない歴史的大作シリーズ完結編。
「風と共に去りぬ」(1939年・アメリカ)、「ベン・ハー」(1959年・アメリカ)に続いて、ようやく「アラビアのロレンス」に手を出しました。長かったあ。いや映画じゃなくて、この企画が(笑)。2005年の6月に「ベン・ハー」でスタートを切って、今日ゴールするまで、まさに観よう観ようと思いながら2年半ですからねえ。
これらの作品に手が伸びない理由は皆さん一緒でしょうけど、まず「長尺である」ということ。そして「今さら観る理由がない」ってことでしょう。
ちなみに「風と共に去りぬ」231分。「ベン・ハー」240分。「アラビアのロレンス」227分。まあ見事にどれも4時間コースですよ。4時間言うたらアナタ、東京駅から大阪のNGKまでビャーっと行って、吉本新喜劇観ながら「アホやなーこいつら」言うくらいのことは出来ますからね。ついでに「たこやきくん」のたこ焼きも三舟くらい食えてるっちゅーねん。…とまあ冗談はさておき。
「アラビアのロレンス」がオリジナル版(1962年)から完全版(1988年)へと生まれ変わった経緯は、allcinema onlineの解説に詳しいのでそちらをご覧頂くとして、いろんな意味で敷居の高い本作を観た率直な感想は、他の2本とも共通するのですが、やはり「観ておいて良かった」に尽きます。
本編。
歴史劇だと思って観始めたら、なんとタイトルバックには一台のオートバイが映っていて、しかも現代風の青年がそれを走らせるシーンからスタートします。それはあまりに意外なオープニングでした。
ところがその青年は事故によって亡くなり、次の葬儀のシーンで彼こそが主人公のロレンス(ピーター・オトゥール)であることが分かります。そして葬儀の列席者の何人かにロレンスのことを語らせ、「はたしてロレンスとは何者なのか?」という疑問を抱かせた上で本編に突入する流れになっていました。
巧いと思います。
葬儀を導入にして主人公の人となりを語る手法は今となっては目新しくありませんが、少なくとも僕には意外な展開で思わず引き込まれてしまいました。しかもこのオープニングは“エンディング”でもあるところが巧いのです。その説明は最後にするとして。
本編の見どころはまずなんと言ってもロケーションです。
CGてんこ盛りの映像にすっかり慣らされた僕たちは、脳天を殴られたような衝撃を受けること間違いありません。
特にアラブ砂漠地帯でのシーンは驚きの連続。地平線から現れる人影を長回しで見せたり、列車の脱線事故を実物で再現したり、圧倒的な人数の戦闘シーンやキャンプのシーンなど、CGが無い時代ですから当たり前なのですが、とにかく観るものすべてがホンモノだという事実。
そして正当な構図で撮影された美しいシーンの数々。これ以上無いだろうと思わせるほど完璧なショットが次から次へと出て来るのです。ストーリーに興味を持てなくても、絵だけ観て欲しい。それだけの価値がこの映画にはあります。僕はこのロケーションで「スター・ウォーズ」の撮影が出来たら、新三部作は随分と印象の代わったものになっただろうなと思いを巡らせました。そんなEP1~3も観てみたかった。
30代の男たちはロレンスの生き様を観ておいてもいい。
まず「運命」を信じるか否か。
運命は自ら切り拓くものか、あるいは流れに任せるものか。ロレンスは一度ある場所で「運命など無い」と声高に叫びますが、後にそれを改める事件が起きる…。
さらに重要なのは「過信」にまつわるエピソード。
劇中、ロレンスの“ある挫折”を請け負うことにした、アラブの族長が傷心のロレンスにこう告げるシーンがあります。
「戦士の仕事はもうなくなった。取引は老人の仕事だ」
勢いのある若者だけが世の中を動かしているわけじゃない、という痛烈な批判。今やどちらでもない僕には充分過ぎるほど心に染みた一言でした。
ラストは意外なほどあっけない。
しかし昔と違って今は、ボタン一つでオープニングへ戻ることが出来ます。
エンドマークを確認したあと、ぜひオープニングを観て下さい。葬儀のシーンに登場した人物がロレンスとどんな関係にあったか。それを知った上で観ると彼らの言葉に重みが出て、これが真のラストシーンになるからです。
インターミッションを挟まない長編であるため、なかなか「一気」というわけには行かないかも知れませんが見応えは充分。時間を見つけてどうぞごゆっくり。
この作品は観たことがありません。
馴染みのある作品は「風と共に去りぬ」だけです
「ベン・ハー」「アラビアのロレンス」と私もチャレンジしてみたいと思いました
大作映画に「チャレンジ」とは又、失礼ですね・・・
CG処理の無い大作をじっくり観たいと思いました!
歴史的大作の素晴らしさを堪能したいと思います!(きまった・・?)
by (2008-01-20 10:37)
いえいえ、チャレンジという言葉がピッタリですよ。
CGの無い大作を堪能してください!
バッチリ決まってます(笑)。nice!ありがとうございます。
by ken (2008-01-20 11:23)
中学生の私に強烈な砂漠へのアコガレを植えつけた作品です。そして大人になって行きましたよ、サハラ砂漠..。本作のロケ地にも行っちまいました。(モロッコです)
砂漠の光景と同じくらい、ピーター・オトゥールが男前で、もうすっかりファンでした。そしておっしゃるとおり構図が決まってるのですよね。DVDのパッケージになっているロレンスのポーズもステキだし。最初のバイクも格好良くて。
子供だった私には、人種の問題、アラブ人の族長たちのそれぞれの思惑など、大人の世界が大変な刺激でした。
それと今でもレモネードを見ると砂漠を思い浮かべてしまいます。
しかし子供の頃に劇場で見たきりでしたので、kenさんのおっしゃるように葬儀のシーンを見返すことはまだしたことがないのです。大好きな映画の新しい魅力を一つ教えてくださって、本当に嬉しいです。ありがとうございます。
by satoco (2008-01-20 12:41)
中学生でご覧になりましたか。うらやましいです。
そしてサハラとモロッコへも!ますますうらやましいです(笑)。
昨年のアカデミー賞授賞式にピーター・オトゥールいましたね。
残念ながら主演男優賞受賞はなりませんでしたが、
「ヴィーナス」も観てみたいなと思いました。
satocoさんはぜひ、DVDで本作を見直してみて下さい!
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-01-20 16:19)
こんばんは。
会社の先輩(団塊の世代)がピーター・オトゥールの大ファンでこの作品を何度も勧めてくるのですが、やはり長くてずっと敬遠しておりました。私にとってのピーター・オトゥールは年をとってからの「ラスト・エンペラー」なので、若い頃も新鮮に見られそうですし、kenさんの記事を読むと一度は観るべきと思いました。頑張って観ます!
by うつぼ (2008-01-20 20:04)
あ、僕は「ラスト・エンペラー」も観てないんですよねえ。
うつぼさんも、ぜひ「アラビアのロレンス」にトライしてください!
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-01-20 20:22)
私もこの映画、見たことがないんです。幾度も繰り返して上映されてるし、
TVでも何度も放映しているのに、どうしてでしょうね。今まで縁がなかったのかもしれません。
「風と共に去りぬ」のほうは大好きな映画なので、繰り返し見てるんですが。「ベン・ハー」もTVで2,3度見ました。
kenさんの解説を読んだらすごくおもしろそうなので、ぜひ今年前半には見たいと思いました。
by coco030705 (2008-01-20 23:14)
興味が無くても引き込まれる映画ってあると思うんですけど、
この作品もそんな1本ですよ。ぜひお楽しみ下さい。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-01-20 23:34)
ピーターオトゥールってきれいな人だったですよねー。モデルとなったご本人もきれいな男性だったらしいですが。私これ、何回みたかわからない映画です!映像がきれいだし。
でもよく考えると、白人に都合の良い映画だよなあ、とも思いますが。
by snorita (2008-01-21 12:08)
トルコ軍に発見されて上半身脱がされたシーンで、
「わちゃー華奢だなー。こりゃ食われてもしょうがねー」
と思いました。わはは。
by ken (2008-01-21 13:13)
これと「ドクトルジバコ」だけ見ていないんですよ。いわゆる長尺超大作映画って。パットン大戦車軍団も同じくらいの長さだったかな。あれとなんとなくこの映画って自分の中で対なんです。
ずいぶん長い間よそ様のブログにコメントすることなく今まで来てしまいました。無沙汰すみません。またよろしくお願いします。
by 瑠璃子 (2008-02-04 15:43)
あー「ドクトルジバコ」かあ、そんなのもありましたねえ。
「パットン大戦車軍団」も観てないなあ。
はい、またよろしくお願いしますね。
by ken (2008-02-04 15:59)