SSブログ

人間の壁 [2009年 レビュー]

人間の壁」(1959年・日本) 監督:山本薩夫 原作:石川達三

 佐賀県の小学校を舞台にしたドラマですが、平凡な学校ドラマではありません。タイトル見て下さい、「人間の壁」ですよ(笑)。いや笑いごとじゃありません。早い話がコレ日教組のプロパガンダ映画なんですが、個人的には一番弱い方面で上手く説明が出来ません。なので映画概要はwowowの記事を転載します。

 『昭和31~32年に佐賀県で実際に起きた教職員の労働争議を題材に石川達三が発表した同名小説を、社会派の名匠・山本薩夫が映画化。財政の合理化を名目上の理由に不当な退職勧告を突き付けられ、苦悩する小学校の女性教師のヒロインを、「東京物語」や「しいのみ学園」でも先生役を演じた名女優・香川京子がハマリ役で好演。山本監督はこの年、本作と「荷車の歌」で毎日映画コンクール監督賞を受賞。宇野重吉も同助演男優賞に輝いた』

 50年前の映画で、少々とっつき難い話ではありますが、意外と今に通じる面白い映画です。
 その“今に通じる”見どころは4つ。
 ひとつ目は教員と生徒の関係。
 以前は「子どもは叱って伸ばすタイプと、褒めて伸ばすタイプがいる」なんて良く聞きましたが、叱られて伸びる子なんて、僕はいないと思います。やっぱり褒められると素直に嬉しいし、叱られたらどうしたって腐ります。しかも子どもの「親や先生に褒められたい」という願望は、大人が思う以上に大きいと思います。その好例が本作にも描かれていて、ちょっぴり泣かせます。
 二つ目は教員同士の関係。
 一口に教員と言っても、その考え方は千差万別。子ども、親、上司、そして自身。一体誰を優先するかで教員の姿勢が大きく変わります。志野田先生(香川京子)と沢田先生(宇野重吉)は子どもが最優先。穴山先生(宇津井健)と神倉先生(三ツ矢歌子)は自身の信じる道を突き進み、一条先生(高橋昌也)は出世が全て。ドラマ的なキャラクター配置と言えばそれまでですが、「自分の子どもを預けるならゼッタイにこの人」と思いながら観ちゃうほど入れ込むでしょう。
 三つ目は教員と教職員組合との関係。
 志野田先生の夫が県教組の執行委員であるという設定が面白く、教育の現場から離れて活動をする教職員組合の意義を考えずにいられません。
 四つ目は教員と政治家の関係。
 事の発端は沢田先生の生徒に対する暴力行為ですが、政治家が教育現場に足を踏み入れるとロクなことがない、という典型になっています。

 実は本作には日教組が出資している関係で、組合の都合が思いのほか優先されています。そのせいでストーリーの軸が当初は志野田先生にあったものが、途中から沢田先生にスイッチしてしまう奇妙な構成が難点。
 しかし教員の不遇ぶりを訴えるテーマは今も見応え充分で、安易なお涙頂戴のドラマになっていないという点では、価値のある学校映画と言えるでしょう。

 意外に豪華な顔ぶれが、昭和世代には懐かしい小品。

人間の壁 [DVD]

人間の壁 [DVD]

  • 出版社/メーカー: エースデュース
  • メディア: DVD

nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 1

とんちゃん

私は、この小説を、いまから50年ほど前に高校生のときに読みました。私には、この小説が「日教組のプロパガンダ」小説とはおもえませんでした。志野田先生も沢田先生も、政治的活動とは一歩離れていました。

沢田先生の体罰問題というのは、貧しい足の不自由な子を、有力者の子がからかっているのを見て、おもわず殴ったことです。

この小説の主張は、人間を不幸にする「壁」は、結局人間が作っていくものだということだとおもいます。

沢田先生には功利的な前夫との不幸な過去があり、沢田先生は「暴力」問題で退職に追い込まれ、足の不自由な子は、安売りの文房具を線路の反対側の店に買いに行き、鉄道事故で死にます。この子の棺を作っている父親の描写が印象に残っています。

この小説で望ましいの考えられている人達は、自分ではどうすることもできない「人間の壁」の不幸に引き込まれていきます。

自分の人生でも、これが「人間の壁」かと思うことがしばしばあります。私にとっては、最良の小説のひとつでした。
by とんちゃん (2013-08-16 15:31) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

歩いても歩いても007/慰めの報酬 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。