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アフタースクール [2009年 レビュー]

アフタースクール」(2008年・日本) 監督・脚本:内田けんじ

 この作品、巷ではかなり評判良いようですが、個人的には好きじゃありません。
 好みの問題なので声を荒げる気はありませんが、僕には明確な理由があります。
 それは、この映画が「監督の独り善がりに満ちている」からです。

 出産直前の妻を残して夫が失踪。直後、夫の同級生を名乗る探偵が友人を訪ねて来る。
 やがて政治家、ヤクザ、会社社長など怪しげな人間が絡み、夫の失踪の謎が明らかになる。

 脚本の性質上、本編102分のうち60分あたりまで、どこに向かってドラマが進展しているのか、まったく分かりません。なので正直イライラします。ひとことで言えば「何がしたいんだよ」。
 仮に「あとでキレイに刈り取って見せるから、60分間“種まき”させてよ」と最初から言われていたら、僕はゼッタイ「NO」と返します。なぜなら、その60分間は観客のためではなく、監督のための60分だから。監督が観客から褒められたくて準備する60分だから。
 おかしいでしょう?お金を払って60分間ガマンして、最後に客が作り手を褒めてやるなんて。キャバクラじゃないんだからさ。
 「運命じゃない人」は見たけれど、あの1本で「内田けんじを信じろ」って言われても困るし、もしもクライマックスの謎解きまで観客の興味を引っ張りたいのなら、種まきの60分は別の楽しみ方を提供すべき。一番手っ取り早いのはホラーなのか、ギャグなのか、アクションなのか、なんらかのスタイルにはめ込んで見せることです。全編ホラーに見せかけて作ったナイト・シャラマンの「シックスセンス」はその好例。と言いつつ、その後のナイト・シャラマンは本作の内田けんじと同じ過ちを犯してるんですけど。ナイト・シャラマンにとって不幸な出来事は、「ナイト・シャラマン映画」というジャンルが出来てしまったことですね。
 「彼の作る映画は、最後にスカッと謎が解ける構造になっている」
 こういう印象を与えてしまったがため、彼はより劇的なクライマックスのネタを求められ、序盤の演出に知恵を使わなくなってしまったのです。だから「アンブレイガブル」以降、すべてが面白くない。

 僕は「アフタースクール」を面白いという人を否定しません。クライマックスには意外なオチがついていて、それなりに楽しいと思う。けれど、このレベルなら最近の芸人のコントのほうが、コンパクトにまとめられていてよっぽど面白い。僕が本作で一番気に入らないのは「観客不在」で作られたこと。これは前作同様、映画学校の講師にはウケるだろうスケールの小さな作品でした。
 ついでに言うなら大泉洋。タレントとしての個性が強すぎて、コメディ映画以外で主演を張るのは無理だと思いました。

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コメント 2

hana

「なるほど!」うなってしまう記事でした。
私はすんなり楽しんでみてしまったタイプです(汗・笑)
映画はたくさん見るといろんな角度から作品をとらえることができるんだな、と思いました。
やっぱ、映画好きです。これからもいっぱい見ようと思います。(ボキャブラリー薄くてスミマセン。)
by hana (2009-05-09 11:08) 

ken

映画はどこからどう見ても、自分次第でいかようにも楽しめる娯楽です。
みんなでいっぱい観ましょう!w
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-05-09 16:53) 

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