全然大丈夫

「全然大丈夫」（2007年・日本）　監督・脚本：藤田容介

　荒川良々主演の脱力系ヒューマンコメディ。
　僕は田中麗奈の「ドラッグストア・ガール」で荒川良々に惚れて、「いつかこの人の主演映画とか出来ないかな」と密かに期待していたのですが、実際に出来上がってみると、「主演という“重荷”を背負わせるのは、ちょっと可哀想だったかな」と。ある種「出オチ」みたいなところもある人だし、シーン数が多くなれば多くなるほど彼の“味”が効かなくなってくる気がしました。例えるならスティーブ・ブシェミが主演を張るようなもの。彼が出ずっぱりでも困るでしょ（笑）。

　ただ、脚本がもうちょっと何とかならんかったかなあ。
　一番納得がいかないのは彼の登場シーン。頼むから笑わせてくれよう。大事なファーストカットなのにどうしてもっとこだわらないのよ。僕はこのワンシーンを観ただけで、「ああ、この監督は良々の使い方を分かってないなあ」とガッカリしました。でもまあ、その瞬間にすべての期待を放り投げてしまったので、かなり気楽に観られましたけど。
　もうひとつ残念だったのは木村佳乃。彼女は恐ろしく不器用な、けれど絵を描くセンスだけは抜群という薄幸の女性を演じていて、物悲しい表情も不器用な仕草も実に巧いのですが、セリフ芝居だけがどうにもしっくりこない。というのもセリフ回しがどうにも知的なんですね。声だけ聴いているとまったく「不思議ちゃんキャラ」じゃないし、聡明なルックスが逆に足を引っ張っている気がしました。実はこの映画にブレイク直前の鳥居みゆきが出ていますが（これはこれで一見の価値アリ。笑えます）、彼女のほうがよほどこの役に相応しい。もちろん鳥居をキャスティングするプロデューサーはいないと思いますけど（笑）。

　でもそこそこ笑えますよ。作品として昇華出来てないだけです。
　大都会東京の片隅で生きるスローリーな人々の、あくせくしない姿勢にほのぼのさせられる人も多いでしょう。これは「不器用なら不器用なりの生き方がある」という、ゆる～いんだけどポジティブなメッセージが、じわ～っと染み込んでくる、のほほ～んとした映画です。
　今日はなんにもしたくないなあ、って思う雨の日曜日なんかに観るのがいいかも。
　蟹江敬三さんが白米の旨さをせつせつと歌う「コメ」は聴きごたえあり（笑）。

全然大丈夫 [DVD]

• 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
• メディア: DVD

コメント 3

私も「ピンポン」で荒川良々のファンになったので、この映画は劇場で見たのですが、正直映画としてはちょっと微妙。
特に前半は主演の3人荒川、木村、岡田の三人の日常がばらばらに描かれるので、まとまりがない感じがしました。
後半、三人の関係が深まってくるにしたがって面白くなってくるのですが、もうちょっと最初からそのあたりが描かれていた方が良かったかも。
まあ主演映画を作ってくれただけで嬉しいという気持ちもありますが。
by きさ (2009-07-10 22:54) 

米の歌・・・忘れてた。
蟹江うたっとった。
ありがとう。蟹江。
by **feeling** (2009-07-13 08:50) 

>きささん
　この映画、劇場で観る勇気はないですねえw

>**feeling**さん
　文脈からすると、オレにありがとうじゃない？
　nice！ありがとうございます。

by ken (2009-07-13 10:20)