ペンギンに気をつけろ！

「ペンギンに気をつけろ！」（1993年・イギリス）　監督・脚本：ニック・パーク　脚本：ボブ・ベイカー

　「ウォレスとグルミット」シリーズ2作目にして、クレイアニメ映画の最高傑作。
　この手の作品に興味が無い人も、観てゼッタイに損をしない見事なサスペンスコメディです。

　グルミットの誕生日に高額なプレゼントを用意したウォレス。そのため家計は火の車となり、仕方なく空き部屋を下宿人に貸すことに。部屋を借りようとやってきたのは一匹のペンギン。ところがこのペンギンは世間を賑わす“お尋ね者”の仮の姿だった…。

　導入部からしてB級サスペンス映画を模した演出になっているので、この作品の見方が一発で分かります。そして「演出はサスペンス風味だけど、所詮クレイアニメだからパロディなんでしょ？」と思わせるところが絶妙。つまり観客は勝手に完成度のハードルを下げるわけです。だからのちのち「粘土なのに、なんでそんなことが出来るの?!」と驚くと。
　何に驚くかというと、グルミットもペンギンも造型はこれ以上ないってくらいシンプルで、かつセリフが一言も無いにもかかわらず、芝居が抜群に面白いこと。特にペンギンのクールな悪党ぶりは、レクター博士並みの凄味が粘土からにじみ出ています（笑）。これはニック・パークが文字通り「（粘土に）芝居をつけている」わけですが、その描写力は生半可じゃありません。生身の役者が観ても芝居の参考になるんじゃないかと思うほどです。

　さらに感動するのはクライマックスの列車アクション。
　序盤で勝手に完成度のハードルを下げた我々は、その完成度の高さに驚かされます。僕はこれがクレイアニメであることを忘れて、本当にハラハラしながら観ていました。
　本作はアカデミー賞の短編アニメ賞を受賞していますが、その価値は十二分にあります。
　そして、昨今のデジタル技術とは無縁の、人の手によって作られた映画の温かみがすべてのカットから伝わって来て、映画の原点を観たような気持ちになりました。
　ついでに言っておくと、ウォレスの日本語吹き替えを萩本欽一さんがやっています。意外ですが“欽ちゃん臭”はかなり消えていて、なかなか良い吹き替えをしています。字幕で観るのはもったいないので、ぜひ日本語吹き替え版を楽しんでください。
　必見です。

ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ! [DVD]

• 出版社/メーカー: ソニー・クリエイティブプロダクツ
• メディア: DVD

コメント 8

こんばんは。
この作品、大好きです（＾＾）
１０年くらい前に初めて見たんですけど、一目で気に入って（＾＾）
このペンギンも、チーズホリデーも、羊のショーンの分も
DVD持ってますよ～。
by junko (2009-07-24 01:03) 

ユニオンジャックのjunkoさん、ようこそ。
10年前にこの作品に出逢えたjunkoさんは幸せ者ですね。
僕はまったく知らずに過ごして来て、とても残念に思いました。
これからは大丈夫ですけどw
nice！ありがとうございます。
by ken (2009-07-24 02:05) 

最初欽ちゃんの吹き替えは？でしたが、何回も観ているうちに慣れてしまいました。
このシリーズは、時間をかけて丁寧に製作された素晴しい作品達だと思います。
by u4 (2009-07-24 21:32) 

どうして欽ちゃんなんだろう、とは思いましたけどねw
オリジナルはまったく素晴らしいと思います。
nice！ありがとうございます。
by ken (2009-07-25 00:00) 

こんにちは。
ペンギンは怪しすぎました（笑）微妙に無表情なところも可笑しいです。
列車のシーンは面白かったですね～
あの発想にはびっくりしました。
あと、クレイアニメで天井にくっつくのってどうするのだろうと
ちょっと考えてしまいました(^^ゞ
by non_0101 (2009-07-29 12:48) 

天井のからくりは、セットを傾けたり逆さにしたりしてるんでしょう。
ペンギンはたったあれだけの造型であそこまで不気味な感じを出したことが
一番の驚きでした。本当に傑作です。
nice！ありがとうございます。
by ken (2009-07-30 11:44) 

この作品は、
ぜひ多くの人に観てもらいたいですよネ！

傑作だと思います☆
by u_yasu (2009-08-15 13:56) 

殿堂入りさせてもいいくらいですよ。
…どこの？w
nice！ありがとうございます。
by ken (2009-08-15 22:43)