転校生 -さよなら あなた- [2009年 レビュー]
「転校生 -さよなら あなた-」(2007年・日本) 監督:大林宣彦
僕は子どもの頃に2度「転校生」と呼ばれたことがある。
慣れ親しんだ土地を離れ、見ず知らずの環境に飛び込むという子供にとっての大事件。
それを2度経験している。
辛い思いもずいぶんしたけれど、いま思えば良かったと思う。
なにより早いうちに経験した「別れ」が、僕の感受性を高めてくれたと思うからだ。
そんな僕に、82年に公開された映画「転校生」は(転校生という設定の必然性をあまり感じなかったけれど)、激しく心を揺さぶられた1本だった。
最後に観てからもう何年も経っているが、邦画の青春映画でこれを超える作品は未だにないんじゃないかと思うほど、僕の中では強烈な印象を遺している。
セルフリメイクとなった本作も、タイトルから分かるように「別れ」が描かれているが、さてオリジナル版を観た人たちにこのストーリーはどう映っただろう。僕は単純に「大林さんも歳をとって残酷になったな」と思ってしまった。
オリジナル版で描かれた「別れ」は、中学生であるが故に抗えない別れだった。もしも一夫(尾美としのり)と一美(小林聡美)が自立した社会人だったら、それはきっと回避できた「別れ」だったろう。オリジナル版の評価が高い理由はここにあると思う。
「未成年であるが故の不自由」
この青春映画ならではの大テーマがあったからこそ、「転校生」は世代を超えて多くの人の共感を呼び、邦画史に名を残しているのだ(この先、ネタバレします)。
僕が本作の大林監督を「残酷だな」と思ったのは、子どもが最も理解し難く、受け止めにくい「死」という現実をいきなりぶつけて来たからだ。
これは監督のエゴである。もちろん映画だからそれでいい。しかし「転校生」という作品で訴えるべきメッセージは「人は死を乗り越えて生きる」ということではないと思う。監督がセルフリメイクを決めた理由は知らないが想像するに、自身の辿り着いた死生観を老婆心から若者に伝えたくなった、ということじゃないだろうか。
「他人の立場に立って物事を考えることの重要性」は本作でも伝わっているが、オリジナルが持っていた甘酸っぱいせつなさは消えてしまったように思う。残念だ。
リメイク版で一夫と一美を演じたのは、森田直幸と蓮佛美沙子。
2人とも感心するほど“入れ替わった後”を巧く演じている。特に蓮佛美沙子は小林聡美よりもより女の子らしいルックスを持ちながら、まったく違和感ない演技を見せた。オリジナル版という良いお手本はあったにせよ、その“なりきり方”は見事だったと思う。感心するのはそれをまた綺麗に撮る大林監督の巧さだ。蓮佛美沙子を観るためだけに、もう一度観てもいいかと思わせるパワーがある。
その前にもう一度観るべきはオリジナル版か。見比べることによって、リメイク版の良さも新たに見いだせるかも知れない。
なるほど。性の入れ替わりにより思春期ならではの性への戸惑いが表れているオリジナル版には、未成年ゆえの別れが見事にリンクしますね。そいうところもオリジナル版の世界はバランスよく完成されていたと思います。
現代の十代はそこまでの戸惑いがないのかもしれません...。それにしてもリメイク版は監督の趣味性が高い作品ですね。
そして蓮佛美沙子は素敵でした。
by satoco (2009-08-22 20:31)
今の10代にオリジナルのテーマが伝わるかと言う点は僕も一考しました。
結論は「限りなく難しい」です。
蓮佛美沙子はこのあとの「バッテリー」も観ていたのですが
さほど印象に残っていないのです。大林監督の腕前に改めて感心しました。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-08-23 00:12)
ボクが号泣した理由が、kenさんの記事で分かりました
2作品を、息子と見てみようと思います
ドンナ感想が聞けるのか・・・・
by 魚河岸おじさん (2009-08-23 15:44)
おお、どんな理由だったのでしょうか。気になりますw
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-08-23 20:19)
リメイク版知りませんでした!
見たいっ!!
そう思ってから実際に見るまで
どんだけ時間かかるかわかんないですけどね(笑)
ちなみに
私は転勤族の父親でしたから
小学校3回、中学校3回の転校経験者です。
転校は大嫌いでしたね~^^;
by ecco (2009-08-23 20:22)
6回も転校するなんて!
特に初恋の時期なんて、たまったもんじゃありませんよね~。
いつかぜひご覧になって観て下さい。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-08-23 20:24)