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ウルヴァリン:X-MEN ZERO [2009年 レビュー]

ウルヴァリン:X-MEN ZERO」(2009年・アメリカ) 監督:ギャヴィン・フッド

 僕はシリーズ3作目の「X-MEN ファイナルデシジョン」を観たとき、あまりのつまらなさに「X-MEN 4」とブライアン・シンガー監督の復帰を期待したレビューを書いた。
 そして本作。
 「ファイナルデシジョン」の公開中に発表されたスピンオフ企画ではあったが
、やはりここにブライアンの名前はなく、それどころか監督は南アフリカのスラムを描いた映画「ツォツィ」のギャヴィン・フッドだと聞いて驚いた。およそアメコミには縁のなさそうな人物を、なぜ20世紀フォックスは起用したのだろう。

 公式サイトによると「『人物の描き方に惚れこんだ』というヒュー・ジャックマンのラブコールにより異色の大抜擢が実現した」とあるが、こんなものはもちろん表向きの
理由でしかない。
 「X-MEN」シリーズは過去3作で約1,160億円も稼ぎ出した20世紀フォックスの「ドル箱」である。今回も売り上げ目標は果てしなく高いところに設定されているはずで、間違ってもコケることは許されないし、コケたら担当重役のクビは確実に飛ぶだろう。そんな作品の監督を決めるにあたり、オージー俳優の意見など聞いていられるワケがないのだ。
 じゃあ、なぜギャヴィン・フッドが選ばれたのか。
 想像するに20世紀フォックスが「ファイナルディシジョン」の出来の悪さを反省した結果だと思う。
 このシリーズをヒットさせた最大の功労者は、間違いなくブライアン・シンガーである。
 ユダヤ人でかつゲイであることを明かしている彼は、その特殊能力ゆえに社会から排除されようとしているミュータントの気持ちを誰よりも理解していた。なにより「X-MEN2」のオープニングで表記されたメッセージがそのすべてを物語っている。
 「いずれにせよ歴史的にも“平和共存”は人類が苦手としてきたことである」
 「スーパーマン リターンズ」を撮るため降板したブライアンに代わり、すったもんだの末に「ファイナルデシジョン」の監督を引き受けたのはブレッド・ラトナーだった。彼は「ラッシュアワー」シリーズの監督を務めているが、元はと言えばマイアミビーチ生まれでマライヤ・キャリーのPVを多く手がけたミュージック・ビデオディレクターである。そんな人物に「X-MEN」の本質を理解しろというのが無理な話なのだ。
 「X-MEN ZERO」はウルヴァリンの不幸な身の上を明かす物語である。そして20世紀フォックスは過去の失敗を教訓にして、何よりマイノリティの気持ちを理解出来る監督を探していたと思う。ただし同時にアクションの演出もこなす必要があって、人選にはかなりの時間を要したのだろう。実際、監督が発表されたのは、企画が公になってから約1年も経ってからだった。

 前フリが長くなった。
 如何なる理由であれ、ブライアン・シンガーが監督じゃないという時点で、この映画に対する僕の期待はゼロだった。それでも劇場へ行ったのにはもちろん理由がある。
 まず第一に、残念ながら僕はこのシリーズが好きだということ。僕は「ヒーロー」と呼ばれる以前に「ミュータント」と呼ばれてしまった彼らの境遇にいつの間にか同情し、感情移入し、そして愛着を持ってしまっていた。
 第二に、中でもウルヴァリンという男気溢れるキャラクターを素直にカッコイイと思ったから。当然ヒュー・ジャックマンという魅力的な俳優が演じたことも大きい。
 第三に、ウルヴァリンのいわゆる「BEGINS」をどう構築したのかは興味があった。僕はアメコミを読むほどのマニアじゃないのでそのいきさつを知らないし、第1作に繋ぐためにどう辻つまを合わせて来るのか、テクニカルな興味から観てみたかった。

 そして結果。
 久し振りにデジタル上映の大きなスクリーンでアクション映画を観たのだから、もっと騙されてもいいと思ったのだが、意外やその雰囲気には騙されなかった。つまり、大して面白いと思えなかったのだ。
 冷静に考えるにその理由は、ウルヴァリン以外のミュータントが魅力的じゃなかったことと、「X-MENに出て来る女の人って、いまいちキレイじゃないのはなんで?」と漏らした妻の言葉がすべてじゃないかと思う。つまりウルヴァリン以外のキャラクターがイマイチだったということだ。これはもう監督以前の問題。とても残念だ。
 アメリカ国内の興行収入も(過去2作が突破し、おそらく本作の目標金額だったろう)2億ドルに届かず終わったのも、本作が「X-MEN」らしさに欠けていたからだろう。続編の予定がすでにあるようだが、次回こそ「X-MEN」らしさを取り戻した作品にして欲しい。そのためにはブライアンの復帰が一番だと思うのだが。どうだろう。

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コメント 6

きさ

私も見ました。
hiroさんほどこのシリーズに思い入れはないのですが、わたしもイマイチという印象でした。
前日談なので、ちょっと話に制約が色々あったかな。
でも色々と工夫はしてますね。
ブライアン・シンガーがこのシリーズに復活する事はすぐにはなさそうな気がします。
by きさ (2009-09-15 22:25) 

ken

ウルヴァリンの記憶をなくす件が、無理やりな感じがしました。
そういえば、「X-メン」を観てから行けば良かったな。
by ken (2009-09-16 02:27) 

きさ

kenさんすみません、hiroって誰だ、
>ウルヴァリンの記憶をなくす件が、無理やり
同感です。クレジット後を見るとまあ続編はそれなりに面白そう、かな?
by きさ (2009-09-18 05:45) 

ken

僕は手から日本刀みたいなのが出て来るミュータントに
好感が持てなかったんですよねえ。
だから続編はあまり興味無いかもw
by ken (2009-09-18 12:26) 

ミホ

X-Menの1、2は好きなのですが、それ以外はほんとーに記憶に残らない作品で・・・ザンネンです。ブライアン・シンガー復活してほしいですね。
「女子が可愛くない」と言った奥様にnice !です(笑)。
by ミホ (2009-09-18 13:50) 

ken

ハル・ベリーみたいな人がもう少し出てくれるといいんですけどねw
ホント、ブライアンにラブコールです。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-09-18 19:35) 

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