SSブログ

君と歩こう [2009年 レビュー]

君と歩こう」(2009年・日本) 監督・脚本:石井裕也

 第22回東京国際映画祭が始まった。
 例年、なんとか参加しようと思いながら、結局1~2本観るのが限界だったので、今年は針の穴を通すようなスケジュールを縫って、一体何本観られるかに挑戦することにした。
 その1本目。
 「日本映画・ある視点」部門の本作は、完全にノリで駆け落ちした34歳の女英語教師と17歳の童貞高校生が、東京で必死に生きようとする物語。コメディである。

 「駆け落ち」というワードを使っている以上、それなりの恋愛シークエンスがあるものだと思っていた。しかし女教師と高校生の間に色恋沙汰の描写は一切ない。コメディと聞いた瞬間から、さすがに「あるスキャンダルの覚え書き」のような作品でないことは分かっていたけれど、「女教師×男子高校生=エロ」というにっかつロマンポルノ的な発想に全身を支配されている僕には、「もうちょっとなんかあっても良かったんじゃないのぉ?」という極めて個人的な不満はある。特に手塚理美と菊川怜を足して2で割ったような目黒真希が(高校生目線で見ると)意外にそそるから尚更だ。でもまあ、個人的ガッカリはいい。

 インディーズである。
 びっくりするほどお金がなかったと思われる。それがもろ照明に出ている。なるほど、お金がない映画を撮るときはデーシーンのみの映画にすればいいのだな。なんてことはさておき。
 しかし予算の無さはこのテーマには合っていた。貧乏たらしい映像が目に見えない形で作品の雰囲気作りに貢献していたし、なにより田舎から上京したときに僕自身が感じた「薄汚れていて輪郭のはっきりしない」東京の質感がとてもよく出ていたと思う。

 脚本はもう少し練っても良かった。
 そもそも、この設定で「別の展開」もあったと思う。早い話がいくらかの恋愛感情を交えた展開ということなのだけれど。
 笑いのポイントにリアリティが無いのも気になった。特に9歳の少年が、童貞高校生を憧れのプロ野球選手と勘違いする件は、若手お笑いのつまらないコントのようだった。童貞高校生の意外な背景や、親密になった相手の意外な側面が、糸がほつれるように明らかになっていく様などは上手く描けていただけに残念だ。唯一の救いはそれをけれんなく演じていた森岡龍の笑顔だろう。素人同然(のはず)でありながら、やらされている感がほとんど無かったのは評価していいと思う。目黒真希とのコンビネーションも良かった。

 実はロードムービーである。
 セックスのない駆け落ちをした2人は結局別々の道を行くことになるのだが、森岡龍の清々しい笑顔が「かわいい子には旅をさせよ」という言葉を思い出させた。この頃の少年に無駄な経験など何一つ無いのだ。
 この映画、中学高校の男子は見た方がいい。分かるヤツには分かるが馬鹿には一生分からないことがこの映画に隠れている。おい、おまえたち。家の中でヴァーチャルな冒険をしたところで何の身にもならないぞ。なんなら駆け落ちでもしろ。

original.jpg

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

オーシャンズつむじ風食堂の夜 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。