つむじ風食堂の夜 [2009年 レビュー]
「つむじ風食堂の夜」(2009年・日本) 監督:篠原哲雄
東京国際映画祭2本目。「日本映画・ある視点」部門作品。
スケジュールの隙間を縫って映画を観るといっても、やっぱり興味のないものは観ないわけで、今回上映される全111本の中から観たい映画を選ぶ作業は、自分の趣向性も明らかになって面白い。
僕が本作を観ようと決めたのはタイトルと、TIFFの公式サイトで観た、この写真が決め手だった。
ここはきっと食堂なんだろう。
2人は背中あわせに座っているから親しくはないけれど、つい覗きたくなる何かがあって…。
「想像力」は恐ろしい。
観る前に勝手にハードルを上げておいて、映画がその期待を裏切ると勝手にガッカリする。
僕はこんな1枚の写真からもいろんなことを想像してしまうので、常に余計な情報をインプットしないように心がけている。けれど本作に限ってはタイトルがそれを許してくれなかった。タイトルの中には僕の好きなものが2つも入っていたからだ。
「風」と「食堂」
「風」は僕がこの世で一番好きなものかもしれない。肌にまとわりつく地球の息吹きを感じるとき、僕は生きていることを実感する。だから何度となく書いてきたけれど「風を感じる映画」が好きだ。
「食堂」は特に夜の食堂が好きだ。仕事を終えて集う人々は、一日の疲れをここで癒し、明日への活力を得て帰って行く。僕は子供のころ、主に肉体労働者が集まる食堂に出入りしていたことがあって、そこで愛すべき人たちのいろんな人生を見たことが、食堂という空間に愛着を持っている理由だと思う。
僕が子供のころに見た食堂の風景は、映画として見せられるほどキレイなもんじゃなかった。けれどこの映画の100倍のドラマがあった。そう思うと恐ろしいのは「想像力」だけじゃない。人それぞれの「経験値」も恐ろしい。平気で「その程度のこと、面白くもなんともない」と言わせるのだから。
原作は「ちょっといい話」の詰め合わせなんだろう。この映画を観たあとじゃ読む気にもなれないので、あくまで想像だけど。その原作がイマイチなのか、脚本がイマイチなのか知らないが、そもそもドラマとして面白くない。ここに出て来る登場人物たちの悩みは、「国民6人に1人は貧困層」なんてニュースが流れる時代にリアリティがなさ過ぎて、「オマエらアホか」と言いたくなる。
キャスティング。
写真の女優。宝塚の男役だった月船さららにどうしても入れ込めなかった。舞台芝居しか出来ない八嶋智人はまったく映画に向いてない。驚いたのは田中要次。雄弁な役をやらせるとびっくりするほどヘタだ。下條アトムもキャスティングとして本命じゃない感じがする。好感が持てたのは喫茶店のマスターを演じたスネオヘアーと、本が大好きな八百屋のお兄さんを演じた芹澤興人の2人。特に芹澤興人はかなりいい味を出していた。今後に期待したい。
短いエピソードを包む“包装紙”は良かったけれど、残念ながら中身が伴っていない。
僕の大好きな函館を舞台にしたんだから、もっと面白い映画にして欲しかった。
こんな「思いこみ」も怖いね(笑)。
kenさんの「風」と「食堂」への思い入れと文章,素晴らしいです.
今日は朝からちょっと気分が荒んでたんですが(笑),おかげさまで和らぎました.ありがとうございました.
by midori (2009-10-22 09:31)
まあ、やっぱり脚本が面白くないんじゃないでしょうかね。結局は。
函館いってみたい。
by snorita (2009-10-22 14:02)
>midoriさん
荒んだ気分を変える文章ですか。もったいないお言葉ですw
でも本当に好きなんですよね。風と食堂。
このタイトルで映画撮ってみようかなw
nice!ありがとうございます。
>snoritaさん
脚本ですよ、結局はね。
函館、僕も久し振りに行きたくなりました。
by ken (2009-10-24 01:14)
こんにちは。
kenさんのブログを読んでいたにもかかわらず、チャレンジしました。
そして爆睡しました(笑)
ちょっと現実離れした、この雰囲気はとても好きだったのです。
原作通り、ほんわかしていて…
でも、ここまで記憶をなくしたのは久々でした(^^ゞ
by non_0101 (2009-12-06 09:48)
雰囲気は悪く無かったですけどね。
大人のための童話みたいな感じもいいんだけど、
すべてがボール一個外れてて、全部ボールってカウントされた映画かなと。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-12-08 13:20)